Microsoft、量子コンピューティングに向け「Azure Quantum」のパブリックプレビューを開始パブリッククラウドのエコシステム

Microsoftは、「Azure Quantum」のパブリックプレビューを開始した。量子コンピューティングを試したり、最適化問題を解決したりするために利用できるAzureサービスだ。

» 2021年02月03日 16時00分 公開
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 Microsoftは2021年2月1日(米国時間)、「量子ソリューションの世界初のフルスタックパブリッククラウドエコシステム」をうたう「Azure Quantum」のパブリックプレビュー開始を発表した。

 Azure QuantumはMicrosoftのAzureサービスの一つであり、クラウドで量子コンピューティングプログラムを実行したり、最適化問題を解決したりする際に役に立つ。Azure QuantumツールやSDKを使うことで、さまざま量子シミュレーターやマシンをターゲットとした量子プログラムを作成、実行できる。

 Microsoftは「Azure Quantumにより、開発者や研究者、システムインテグレーター、顧客は、信頼できるパブリッククラウドで使い慣れたツールを利用して、最新のイノベーションに基づくソリューションを学習し、構築できる」と述べている。

 さらに、「Azure Quantumエコシステムは、多様な量子ソフトウェアやハードウェアソリューション、先進的な量子研究者と開発者のネットワーク、充実したリソースライブラリ、柔軟なセルフサービス、カスタマイズされた開発プログラムへのアクセスを提供し、ユーザーの研究開発を加速する」と説明している。

コミュニティーとのコラボレーションや学習に役立つ

 Azure Quantumでは、ユーザーが活発な量子イノベーターコミュニティーに参加する優れた専門家とコラボレーションできることがメリットの一つだという。

 「Microsoftが提供するオープンソースの『Quantum Development Kit』(QDK)と量子プログラミング言語『Q#』は、量子システムの進化をプロアクティブに予測し、統合することで、ユーザーの開発投資を保護する。さらにMicrosoftの新しい『Quantum Intermediate Representation』(QIR)は、プログラミング言語とターゲット量子計算プラットフォームの間の汎用(はんよう)オープンソースインタフェースだ」(Microsoft)

 Microsoftによると、学習教材とサンプルの充実したリソースライブラリを利用して、量子コンピューティングと最適化のスキルを伸ばすことも可能だという。「Microsoft Learn」では基礎的な量子の概念を、「Quantum Katas」では自分のペースで進められるチュートリアルを通じて、量子プログラミングを学べる。サンプルは、さまざまな量子コンピューティングタスクに対してどのように量子アルゴリズムを適用できるのかを示している。

クラウドで量子コンピューティングと最適化ソリューションにアクセスできる

 Azure Quantumでは単一の開発インタフェースを用いて、量子コンピューティングと最適化ソリューションの業界リーダーが提供するユニークな機能を利用できるという。

Azure Quantumのソリューションパートナー(出典:Microsoft

 Microsoftは次のように説明している。「ハードウェアパートナーのHoneywell Quantum SolutionsとIonQが提供するイオントラップ型量子システムを通じてクラウドで量子コンピューティング機能にアクセスできる。Honeywellのシステムは、中間計算測定と量子ビットの再利用が特徴であり、開発者はユニークでインパクトの強い方法で量子アルゴリズムを作成できる。IonQのシステムは、最大11個の全結合された量子ビットに向けて動的に再構成可能なシステムを提供し、任意のペア間で2量子ビットゲートを実行できる」

 また、Azure Quantumでは、Microsoftと1QBitのソルバーを基に最適化ソリューションを開発して、即効性のある成果を追求することもできるという。これらの新世代のアルゴリズムは、速度と精度を向上させる量子の原理を応用したもので、CPUやGPU、FPGAなど、従来の幅広いコンピューティング半導体ソリューションで大規模に実行できる。クラウドでこれらのアルゴリズムにアクセスすることで、化学や医学、金融、物流といった分野の問題解決の研究を加速できる。

スケーラブルな開発が可能、開発サービスの利用もできる

 信頼できるパブリッククラウドでデータが保護されているという安心感を持って、探索できることもAzure Quantumの特徴だという。

 料金は従量課金制であり、ユーザーは取り組みを準備状況に合わせてスケールアップさせていくことが可能だ。セルフサービス開発を行うか、Microsoftの「Enterprise Acceleration Program」により、カスタマイズされた開発サービスを利用するかどうかを柔軟に選べる。

 Azure Quantumの料金はMicrosoftと個々のパートナーが決める。発表時点では料金案内ページには、Microsoft QIO(Quantum-Inspired Optimization:量子着想最適化)ソルバーの料金情報のみが掲載されており、料金の詳細を知るには、営業担当者に問い合わせる必要がある。

 Azure Quantumサービスは、Azureポータルで「Quantumワークスペースリソース」(「Quantumワークスペース」と省略されることもある)をAzureサブスクリプションに追加することで利用できる。

 Quantumワークスペースリソースは、量子アプリケーションや最適化アプリケーションの実行に関連付けられた資産の集合体を指す。

 Quantumワークスペースで構成されるプロパティの一つとして、「Azureストレージアカウントリソース」がある。Azure Quantumは、Azureストレージアカウントにユーザーの量子プログラムや最適化問題を保存し、アクセスできるようにする。

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