誰も知らなかった、これからも知られることがない、Windows Updateの「幻のオプション」とはその知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(179)

ある調査のため、2020年10月に公開されたWindows 10 バージョン20H2のインストールメディアを使用して、仮想マシン環境に新規インストールしました。その際、目的の調査とは関係なく目にした「Windows Updateの新しいオプション」についてお話ししましょう。恐らく、現行バージョンではもう誰も目にすることはない、幻のオプションの話です。

» 2021年02月17日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

「Windowsにまつわる都市伝説」のインデックス

Windowsにまつわる都市伝説

幻のオプション(?)「更新プログラムをできるだけ早くインストールする」

 先日、とある調査のために、2020年10月に公開された「Windows 10 バージョン20H2(October 2020 Update)」のインストールメディア(ISOイメージ)を使用して、仮想マシン環境にWindows 10を新規インストールする機会がありました。

 2020年10月版のインストールメディア(OSビルド19042.508)は「アップグレード時に証明書が失われる」という重大な問題があり、修正を含む新しいインストールメディアが2020年11月以降にリリースされています(現在、2020年10月版は提供されていません)。調査の目的はこの問題ではありませんが、手っ取り早く新規インストール環境を作るため、ダウンロード済みだった問題のあるインストールメディアをたまたま使用したのです。

 新規インストールが完了し、初回のWindows Updateを実行して更新しようとしたところ、これまで見たことがない(あるいは見逃していた)、オプションを「設定」アプリの「Windows Update」に発見しました。それは、「更新プログラムをできるだけ早くインストールする」というオプションです(画面1)。「更新を7日間一時停止」がグレー表示で利用できない状態になっていることも、通常の「Windows Update」画面とは異なります。

画面1 画面1 「設定」の「Windows Update」画面を開くと、「更新プログラムをできるだけ早くインストールする」という見慣れないオプションを発見

 「更新プログラムをできるだけ早くインストールする」をクリックすると、「このセクションを優先する」というダイアログボックスが表示され、さらに「OK」をクリックすると、更新プログラムの確認とダウンロード、そしてインストールが始まります(画面2)。

画面2 画面2 「このセクションを優先する」ダイアログボックスで「OK」をクリックすると、更新プログラムの確認、ダウンロード、そしてインストールが始まる

 「このセクションを優先する」ダイアログボックスでは“ダウンロードが完了すると、デバイスが再起動されます”と説明されていますが、インストール中へと進み、1つ以上の更新プログラムのステータスが「再起動の保留中」になると、Windows Updateのアイコンに赤色のマークが付き、リマインダーとして「まもなく再起動する時間です」の通知が表示されます。そのまま放置しておくと、15分後にスケジュールされた時間に再起動が始まります(画面3)。

画面3 画面3 1つ以上の更新プログラムのステータスが「再起動の保留中」になると、リマインダーとしてこの通知メッセージが表示され、15分後、自動的に再起動が始まる

 通常、「更新プログラムのチェック」ボタンをクリックして更新を開始した場合、1つ以上の更新プログラムのステータスが「再起動の保留中」になるとタスクバー上のWindows Updateのアイコンに黄色のマークが付き、「設定」アプリの「Windows Update」には「今すぐ再起動する」ボタンが表示されます。

 このまま放置しておくと、恐らくアクティブ時間とは関係なく15分後に自動的に再起動が行われます。そして、再起動完了後に「設定」アプリの「Windows Update」を開くと、「更新プログラムをできるだけ早くインストールする」は非表示になり、「更新を7日間一時停止」も利用可能な状態になりました。

 「更新プログラムをできるだけ早くインストールする」オプションは、一般公開時のビルドのままで、まだ一度も更新されていない場合、できるだけ早く最新状態にできるように、アクティブ時間外になるのを待たずに15分後に自動的に再起動するためのオプションのようです。2020年11月以降の更新されたインストールメディア(2020年11月版はOSビルド19042.631)では、新規インストール直後に「設定」アプリの「Windows Update」にこのオプションはなく、いつもの見慣れた画面でした(画面4)。

画面4 画面4 2020年11月以降の更新されたインストールメディアで新規インストールした場合、「更新プログラムをできるだけ早くインストールする」オプションは表示されない

 Windows 10になって、インストールメディアを使用した新規インストールの機会はほとんどなくなったと思います。Windows 10はいったん導入すると「機能更新プログラム」によってインプレースアップグレードで更新されていきます。そのような環境では、Windows 10 バージョン20H2になっても「更新プログラムをできるだけ早くインストールする」オプションを目にすることはないでしょう。Windows 10のインストールメディアは、既知の問題の有無に関係なく、度々更新されたものが提供されるため、「更新プログラムをできるだけ早くインストールする」オプションを目にする機会はもっと少ないでしょう。

 筆者は、このオプションをWindows 10 バージョン20H2で今回初めて目にしたため、バージョン20H2で追加されたものだと思っていますが、もしかすると以前から存在していたオプションなのかもしれません。

ここでクイズ、前出の画面1には何かおかしいところがあります!

 ここで画面1をもう一度見てください。何か違和感を持ちませんか。筆者は、「更新を7日間一時停止」の下にある“最新の更新プログラムを取得して一時停止します”という表現が何を意味しているのか全く分かりませんでした。

 そこで、英語版のWindows 10環境を用意して(既に2020年10月版のISOイメージは入手不能なので、日本語版に言語パックをインストールして表示言語を切り替えたもの)、オリジナルの英語表現がどうなっているのかを確認しました。

 オリジナルの英語は「Get latest updates to pause again」になっているので、“最新の更新プログラムを取得すると、再び一時停止が利用可能になります”のような表現が適切と思います(画面5)。

画面5 画面5 “最新の更新プログラムを取得して一時停止します”は意味不明

 「このセッションを優先する」ダイアログボックスのタイトルと表現にも違和感はないでしょうか。原文に合わせて訳してみました。

日本語

このセッションを優先する

できるだけ早く最新情報を手に入れるには、このオプションを選択してください。

原文(英語)

Expedite this session

Select this option to get up to date as soon as possible.

筆者訳

この(更新)セッションをさらに速め、早く完了させる

できるだけ速やかに最新状態にするには、このオプションを選択してください。


筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。