IDCによると、世界のDX支出は2026年までの5年間に年平均16.3%のペースで増加し、同年に3.4兆ドルに達する見通しだ。
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IDCは2022年10月26日(米国時間)、世界のデジタルトランスフォーメーション(DX)支出が、2026年までの5年間に年平均16.3%のペースで増加し、同年に3.4兆ドルに達するとの見通しを示した。
「グローバルサプライチェーンの制約、インフレの高騰、政治の不確実性、差し迫った景気後退といった強い逆風にもかかわらず、DX投資は堅調に推移すると予想される」と、IDCのデータ&アナリティクスグループのシニアリサーチマネジャーを務めるクレイグ・シンプソン氏は説明する。
「DX技術への投資は、自動化、強力なインテリジェンス、業務の透明性、顧客体験の直接的なサポートといったメリットをもたらす。これらは全て、企業が先行き不透明な現在の環境を乗り切り、回復の機会を最大限に活用するために、重点を置く取り組みを支援する」(シンプソン氏)
2026年までの5年間に最も多額の投資が行われると予想されるDXのユースケースは、製造、開発、設計などの大規模業務をカバーする、広範な領域での「革新、拡張、運営」だ。この領域に当てはまる主要なビジネス機能には、サプライチェーン管理、エンジニアリング、設計と研究、業務運営、工場の操業などがある。
2026年までの5年間のDX投資全体の20%以上が、「革新、拡張、運用」に振り向けられる見通しだ。投資額が次に多いユースケースは「バックオフィスサポートとインフラ」で、DX投資に占める割合は15%以上、これに続く「顧客体験」が8%以上と予想されている。
IDCが特定した300以上のDXユースケースの中で、投資額が最も急速に増加するのは「デジタルツイン」と「RPA(Robotic Process Automation)ベースの保険金請求処理」で、5年間の予想年平均増加率は、それぞれ35.2%と31.0%だ。
また、2026年までの5年間における世界のDX支出の30%近くは、加工組み立て製造業およびプロセス製造業によるものとなる見通しだ。この業種の主要なDXユースケースには「ロボット製造」「自律操業」「自己修復型資産保守および拡張保守」などがある。
DX支出が次に多い業種は専門サービスと小売りで、これらの業種の主要なDXユースケースとしては「バックオフィスサポートとインフラ」が挙げられる。
DX支出の今後5年間の予想年平均増加率が最も高い業種は、証券、投資サービス(20.6%)で、銀行(19.4%)、ヘルスケア(19.3%)がこれに続いている。
地域別に見ると、2026年までの5年間のDX支出が最も多いと予想されるのは米国だ。米国のDX支出は世界全体の35%近くを占め、2025年には1兆ドルの大台を超える見通しだ。2番目に多い西欧は世界全体の4分の1近くを占めると予想される。5年間の予想年平均増加率では、中国が18.6%で最も高く、中南米が18.2%でこれに続く。
「アジア太平洋地域(日本と中国を除く)の消費者と企業は、コネクテッド技術の利用が増えており、デジタル製品やサービスの消費が多い傾向がある」と、IDCのアジア太平洋IT支出チームのアソシエートリサーチマネジャー、マリオ・アレン・クレメント氏は指摘する。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行とその後の復興の中で、企業はデジタルエンゲージメント、製品、サービスの取り組みを加速させており、これらは、主にデジタル技術の迅速な展開によって進化してきた。ますます多くの企業がレジリエンスとイノベーションの源泉として、デジタル化に乗り出しており、これはこの地域全体で見られる動きだ。新しい製品やソリューションが広く提供されるようになっている」と、クレメント氏は説明する。
「今後5年間のアジア太平洋地域(日本と中国を除く)のDX支出は、2桁成長となる見通しだ。製造業におけるIoTとロボティクスのユースケースが、大きな可能性を持っている。顧客体験、エンゲージメント、パーソナライズされた顧客対応が、DXの安定的な発展の主要なけん引役になるだろう」(クレメント氏)
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