企業はなぜサイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)に取り組むべきか、成功させるにはどうすればいいかGartner Insights Pickup(284)

企業はしばしば、「SREとは何か」「SREで何をするのか」といった疑問を抱く。本稿では、SREに関する過去2年間の調査から分析結果をまとめたレポートの概要を紹介する。

» 2022年12月09日 05時00分 公開
[Daniel Betts, Gartner]

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 多くの企業がサイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)の導入を検討しているが、その前提条件や意味を理解するのに苦労する場合が多い。

 企業はしばしば、こんな疑問を抱く。「SREとは何か」「SREで何をするのか」「SREに必要なスキルは何か」「SREはどのように始めるのか」「SREの価値を引き出し、進化させるにはどうすればよいのか」――。

 Gartnerは過去2年間に、2000件を超える問い合わせの対応の中で、顧客とSREについて議論してきた。そして顧客の差し迫ったニーズに対応するために、分析結果をまとめた一連のレポートを作成してきた。以下にその概要を紹介する。

サイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)とは?

  • 速度ニーズと安定性、リスクとのバランスを取り、DevOpsを大規模にサポートするモダンな運用アプローチ
  • サービスレベルの目標を設定してサービス管理のガバナンスを実現し、顧客体験と顧客維持率を向上させることに重点を置いた、エンジニアリングの一連の原則とプラクティス(実践)
  • 最も重要なのは、SREは既存の運用チームの業務に新しいブランドを冠しただけのものではない。協調的なエンジニアリングの考え方に加え、知識の学習、向上、共有を続ける能力を実証することを要求する

SREのプラクティスを開始し、進化させるステップ

 企業はイノベーションの推進を迫られている他、顧客がどこにいてもリーチできるように、デジタルチャネルに大きく依存しなければならなくなっている。市場の需要や顧客のニーズに対応するため、複雑なアーキテクチャの採用が進んでおり、クラウドネイティブアプリケーションやSaaS、PaaS、サードパーティーサービスや依存関係が組み合わされるようになってきている。

 だが、従来の運用モデルは、デジタルビジネストランスフォーメーションのペースがますます速くなる状況に対応できるように設計されていない。また、多くのI&O(インフラとオペレーション)チームは、先進的な技術やソフトウェア製品の新しい提供方法を扱うために必要なスキルの不足に悩まされている。そのため、I&Oチームはビジネスや信頼性の目標を達成することや、顧客の期待に応えられていない。さらに、こうしたスキルギャップは、目標の調整や効果的なコラボレーションに取り組むI&Oチーム、アプリケーション開発チーム、プロダクトオーナーの間で無用な摩擦を引き起こす。

(出所:Gartner)

SREエンジニアの仕事

 SREエンジニアは、新しいソフトウェア機能の開発とデプロイ(展開)をより迅速かつ容易にするために、システムの信頼性とレジリエンス(回復性)を高めることに責任を持つ。特に、手作業を減らし、運用インシデントを防止するための自動化の実現に力を注ぐ。

 Gartnerは、SREエンジニアの代表的な役割の概要を示す職務記述書のサンプルを提供している。このサンプルは、自社の特定のニーズや要件に合わせてカスタマイズできるように設計されている。さまざまな業種や地域の企業が公開している職務記述書の分析に基づいている。データは、求人情報の分析により、労働市場に関する洞察を提供するGartnerのツール「TalentNeuron」から入手したものだ。

(出所:Gartner)

SREの原則の適用による、大規模で複雑な分散型ITシステムの信頼性向上

 今日の企業は、社内外のサービスやプラットフォームのプロバイダーのサプライチェーンを形成する、大規模で複雑な分散型ソフトウェア製品に依存している。だが、これらのプロバイダーはそれぞれ独立独歩で、目標もビジネスモデルも異なるため、企業が信頼性や回復性などのリスクを軽減し、封じ込めるのは難しい。

 インフラの信頼性の確保は、単に高可用性システムを構築したり、適切なシステムパフォーマンスを確保したりすることではない。冗長性の確保にとどまらない、関連する全ての社内外の環境で、エンジニアリングプラクティスや技術プラットフォーム、組織的プラクティスを整合させることが必要だ。

 企業が信頼性を高め、リスクを軽減・抑制し、顧客への約束を守るには、ソフトウェア開発や調達、展開プロセスにおいて、エンドツーエンドの透明性を実装する必要がある。サプライチェーンの考え方は、視野をソフトウェアの開発工程から社内外のサプライヤーのネットワークへと広げる。そして、SREの視点を実践に生かし、さらに改善を進められる。

  • 信頼性の高いIT製品を構築するためのサプライチェーンの考え方(マインドセット)を取り入れる
  • コンポーネントと依存関係のマップを作成・維持し、IT製品のサプライチェーンをエンドツーエンドで可視化する
  • サプライヤーと連携を取り、相互作用を最適化するとともに信頼性を高める

出典:How to Succeed with Site Reliability Engineering(SRE)(Gartner Blog Network)

※「Gartner Blog Network」は、Gartnerのアナリストが自身のアイデアを試し、リサーチを前進させるための場として機能しています。Gartnerのアナリストが同サイトに投稿するコンテンツは、Gartnerの標準的な編集レビューを受けていません。 ブログポストにおける全てのコメントや意見は投稿者自身のものであり、Gartnerおよびその経営陣の考え方を代弁するものではありません。

筆者 Daniel Betts

Senior Director, Analyst


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