IBMから分社したキンドリルの日本法人であるキンドリルジャパンは、2023年1月に開催した説明会で、すでに発表済みの統合プラットフォームの「Kyndryl Bridge」に加え、「Kyndryl Vital」「Kyndryl Consult」の全体像や、支援内容を紹介した。
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キンドリルは、2021年にIBMのインフラストラクチャ・サービス部門からスピンオフした企業だ。2023年1月に開催された事業戦略記者説明会で、IT運用高度化の実現に向けて、どのようなソリューションを提供しているのか説明した。
説明会の冒頭、キンドリルジャパン 専務執行役員 チーフ・ストラテジー・オフィサー ストラテジック・サービス本部長である工藤 晶氏が、キンドリルが提供するKyndryl Bridge、Kyndryl Vital、Kyndryl Consultの全体像を語った。
Kyndryl Bridgeは、キンドリルが各種マネージドサービスを提供する根幹となるプラットフォームだ。「クラウド」「アプリケーション・データ・AI(人工知能)」「セキュリティとレジリエンス」「ネットワークとエッジ」「メインフレーム」「デジタルワークプレースサービス」と、キンドリルが考える6つの重点領域において、新たなテクノロジーや情報を顧客に提供し、IT運用高度化を支援するものだ。
多岐にわたるITリソースの稼働状況や課金状況を可視化するダッシュボードを提供しており、世界中の数千の顧客の利用状況を集約したデータから、顧客に最適なアクションを推奨するAIも利用できる。キンドリルだけでなく、パートナー企業とも連携しながらさまざまなサービスを提供しながら、次々と生まれるテクノロジーを運用しやすい形で利用できる環境を目指している。
工藤氏は「30年以上、お客さまに安心、安全を提供してきたマネージドサービスをデジタル化したものがKyndryl Bridge。そして、実験・共創の環境としてKyndryl Vital。設計から改善支援まで地に足のついたアドバイザリーサービスを提供するのがKyndryl Consult。Bridge、Vital、Consultの3つがスパイラルのように回ることで、顧客のデジタルビジネスを加速化し、より高い価値を提供していきたい」と述べた。
続いて、キンドリルジャパン ストラテジック・サービス本部 キンドリルバイタル事業部長の河野正治氏がKyndryl Vitalについて説明した。
Kyndryl Vitalは、複雑なビジネスの課題を解消するため、人間中心のデザイン思考によって現場の課題を明確化し、ITインフラの最適化を目指すアプローチを導入している。望む未来を想像し、そこから今やるべきアクションを定義し、現状と未来を見据えたIT戦略策定を支援する。
新しいテクノロジーに対し「どのようなベンダーを選べばよいか分からない」「活用することで課題を解決できるか分からない」「検証に時間がかかり過ぎる」といった悩みを解消すべく、実験の場を用意して体験することで、ソリューション選定で高い効果が得られるよう支援する。
河野氏は「キンドリルはIBMから分社しているため、幅広いアライアンスを組めるようになった。顧客にとってオープンかつ最適なソリューションを選定できるのは大きな武器」とコメントした。
Kyndryl Vitalは日本が先行しており、すでに2021年から活動が展開されている。「未来共創」「ソリューションデモ/PoC」「Agile Experience Workshop」「Automation/SRE」といった領域のプログラムを提供している。顧客の課題をヒアリングした上で、ニーズが高いものからプログラムにした。現在は14のプログラムが展開されている。ユーザー企業は、関心のあるプログラムを選んで相談できる。
河野氏は「ドローンなどの先進技術領域や、お客さまだけでは解決方法が分からない課題について、ともに知恵を出し合って解決策を導くための検証や、パートナーと組んだ支援はこれまでにはなかったアプローチです」と強調し、プログラムを幾つか紹介した。
「Future Vision Workshop」は、数年後の未来のビジョンを描き、具現化するワークショップ。河野氏は「Web3やメタバースといった最新技術が当たり前になった世界で、自分たちはどのような社会成長に貢献できるかといったテーマで開催し、目指すべき方向がクリアになったという評価をいただいた」と事例を話した。
「Agile Experience Workshop」は、アプリ開発やソフトウェア開発で利用されているアジャイルの手法をITインフラ現場に取り入れたプログラム。
「Automation Academia 自動化・SRE」は、運用効率化のための自動化を実現する人材育成のプログラムだ。運用現場の課題をベースに、自動化のプレイブックで継続的な改善を進めていく取り組みを独自に実践できる人材を育成する。河野氏は「多数の大規模運用で培ってきた技術力と実績があることこそできる弊社の強みの一つ」とアピールした。
キンドリル自身、メタバースやデジタルツイン、ドローンなどの先端技術に触れて失敗体験も含めたナレッジを蓄積している。河野氏は「本当に必要になったタイミングで、スピード感と安心感を持って変革を支援できるように進化し続けている。新領域に関しても今後の発表を楽しみにしてほしい」と結んだ。
Kyndryl Consultの説明は、キンドリルジャパン ストラテジック・サービス本部 コンサルティング&ソリューションデザイン事業部長の志賀 徹氏が行った。志賀氏はまず、ITサービス導入のパターンがこれまでの老朽化対応の更新や、単なるクラウドへのリフトシフトから、ビジネス成果に基づいた形へ変化していると指摘した。ITインフラについて、構想から設計、実装、発展、そして新しい発見に至る改善サイクルまで、継続的なモダン化を支援するパートナーが求められていることから、Kyndryl Consultの提供に至ったという。
Kyndryl Consultは、コンサルティング主導で継続的にテクノロジーサービスを提供していくサービス。30年以上にわたり、世界中でシステム運用を手掛けてきたキンドリルの技術力やノウハウを生かし、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するものだ。IT環境の構想を策定し、設計、実装を経て運用で終了というわけでなく、より良い改善のための継続的なチェックや改善活動で、継続的な発展をしていくことがコンセプトとなっている。
志賀氏は「必ずビジネスの成果につながるサービスを実現することが、Kyndryl Consultの大きな強み」と語り、具体的な取り組みを幾つか説明した。
「クラウドCoE活動支援」では、クラウド戦略・アーキテクチャ、ガイドラインの策定に加え、新技術の検証や、可視化ツール導入、スキル研修などを支援する。
「SRE運用モデルコンサルティング」では、新しい運用の考え方、手法を根付かせるために、Site Reliability Engineering(SRE)の研修、アセスメント、実装計画策定、実装を支援する。
「ゼロトラストアーキテクチャの実装支援」では、サイバーセキュリティ対策の新たなアーキテクチャの導入に当たり、必要となるセキュリティ対策を検討し、ロードマップを策定して支援する。
志賀氏は「6つの重点領域それぞれに対し、構想、実行計画、管理、統制といったコンサルティングのテーマがあり、それ合わせたサービスを提供していく」と説明した。
「Kyndryl VitalやKyndryl Consultは、新しいものではなく長年のやってきたものを再度体系化したものだ。体制も拡充しているので、さらに進化を続けて大きな価値を提供していきたい」(工藤氏)
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