2025年の大学入学共通テストから「情報I」が追加されます。大学入試センターはこれに先駆け試作問題を公開しているのですが、問題の内容を見て「うぇっ」と思いました。受験する子どもたちのことが、ちょっと心配になったのです。
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入学試験の季節です。受験生をお持ちのご家庭では、緊張の日々をお過ごしかと思います。
1月14、15日には大学入学共通テストも実施されました。2025年の共通テストからは新たに、プログラミングや情報リテラシーを含む科目「情報I」が加わることになっています。
情報Iで出題される問題について、大学入試センターは試作問題を公開していますが、筆者はこれを見て「うぇっ」と思いました。受験する子どもたちのことが、ちょっと心配になったのです。
掲載されている問題が悪いわけではありません。ネットリテラシーから論理的思考、プログラミングの基礎までを幅広く問う“良問”です。ただ気になったのは、ITの基礎知識が試験科目になったせいで、IT嫌いがむしろ、増えるのではないかということです。
高校生のお子さんを持つ@IT編集部員に聞くと、定期試験にむけて「TCP/IPとは」などを暗記しているそうです。筆者が高校のころ、歴史の年号などを無理やり暗記したあげく、科目ごと嫌いになってしまったのとダブり、「ITもあれになってしまうのか」と想像してちょっとしょんぼりしました。
ITの基礎的な知識には、片仮名や英語など、ぱっと見て意味を取りづらいワードが多く含まれます。興味、素養もない状態で「試験科目」として与えられると、つまらない暗記科目になってしまうリスクがありそうです。
ところで読者のみなさんは、どのような経緯でITに興味を持ち、プログラミングを始められましたか? 筆者の場合はゲームが入り口でした。
1978年生まれの筆者ですが、ずっと欲しかったファミコン(ファミリーコンピュータ)は小学校5年まで買ってもらえず、代わりに家にはNECの「PC-9801UV」がありました。当時のPC用ゲーム……「サラダの国のトマト姫」や「ドロール」「三国志」などをフロッピーディスクで遊んだのが、PCとの最初の思い出です。
マウスでデジタル絵も描きました。「ラップスキャン」ご存じでしょうか? 料理用のラップに絵を描き、ディスプレイに貼り付け、その線をマウスでなぞるという、デジタル絵の伝統技法です。ラップスキャンで「ふしぎの海のナディア」など、好きなアニメの絵などを描いていました。PCの次に実家に導入されたワープロ「書院」の外字機能で、ドット絵も描きました。
90年代終盤にインターネットと出会い、掲示板やWebサイトを作っているうちにWebへの興味が強くなり、新卒でWeb記者として就職し、20年近く同じ職業を続けています。
現代っ子はどうでしょうか。筆者の小1の息子は、Scratchなどを使ったプログラミングが大好きですが、入り口はYouTubeでした。5歳からYouTubeで「Minecraft」(マイクラ)の動画を見て、AmazonのFireタブレット版のマイクラで、家具や建造物を作っていました。
気づいたらコマンドまで覚えていました。ある時、ループコマンドを使って羊が無限に出現するプログラムを書いてしまい、Fireタブレットの画面が羊でいっぱいになって固まり、再起動もままならなくなって「無限ループコマンドは二度と使わない」と父親と約束したのもいい思い出です。
そんな経験から筆者は、「楽しい」がITの入り口になってほしいな、と思います。お勉強や暗記ではなく、面白い経験からITに興味を持てれば理想的です。
ただ、Webで公開されている「情報I」の教科書を見てみたところ、筆者の心配は杞憂(きゆう)かもしれない、とも思いました。暗記科目っぽく構成された教科書もある半面、身近な話題からITやプログラミングに興味を持てるように工夫された教科書も多かったためです。
今の子どもたちにとって、われわれ世代以上に身近なITや情報。楽しく付き合いながら能力を高めていってもらえればすてきだなあと思います。
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