AIの導入についてCIOが知っておくべき5つのことGartner Insights Pickup(318)

ビジネスリーダーはAIに大きな期待を寄せている。AIをどう活用し、ビジネス価値やリスク、人材、投資の優先課題にどう取り組むかを検討しなくてはならない。本稿では、ビジネスリーダーとしてAI導入を成功させるために、全てのCIOが押さえておくべき5つのポイントを紹介する。

» 2023年09月15日 05時00分 公開
[John S Hillery, Gartner]

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 「2023 Gartner CIO and Technology Executive Survey」(2023 Gartner CIO〈最高情報責任者〉/テクノロジーエグゼクティブサーベイ)では、CIOの3人に1人が「自社はChatGPTが登場する前から、AI(人工知能)技術を既に導入していた」と答え、15%が「今後1年以内にAIを導入するだろう」との見通しを示した。だが、最適な導入方法を判断するには、AIをどう活用し、ビジネス価値やリスク、人材、投資の優先課題に取り組むかを検討する必要がある。

 ビジネスリーダーはAIに大きな期待を寄せており、CIOはこうした期待を満たし、管理する必要がある。そのためには、AIに関する技術用語に加え、AIが自社のビジネスにもたらすリスクと機会も把握しておかなければならない。

 以下では、ビジネスリーダーとしてAI導入を成功させるために、全てのCIOが押さえておかなければならない、AIに関する5つのポイントを紹介する。

1.ChatGPTが登場する前は、AIの導入は大抵の場合、全社的にではなく、ビジネス部門レベルでの効率改善に重点を置いて行われていた

 ほとんどの企業は通常、特定のビジネス部門や分野にAIを導入する。導入のユースケースは、スマートプロセスの自動化やスマートロボティックシステム、規模に応じた自動化、パーソナライズ、従業員の生産性向上、AIによる意思決定の精度向上などだ。

2.AIの最適なユースケースを実現するには、適切、論理的、高品質で、十分な量の信頼できるデータにアクセスする必要がある

 多くの場合、CIOはAIがビジネスに付加価値をもたらすと期待するが、何が実現できるのかを明確にする必要がある。AIのビジネス価値の大部分は、特定の文脈で特定の問題を解決するソリューションから生み出される。大規模なソリューションからより大きな価値を得るには、ビジネスプロセスを大幅に変更し、AIチームとソフトウェアエンジニアリングチームで新しい仕事のやり方を取り入れる必要があるかもしれない。AIを既存システムに統合するのは難しいからだ。

 以下のユースケースは実現可能性が高く、ビジネス価値を高める可能性も高いため、これらへの投資は正当化しやすいだろう。

  • 価格の最適化
  • リードスコアリング(見込み客の購買意欲の評価)
  • 需要の創出

 以下は、実現可能性の高いAIのユースケース例だが、得られるビジネス価値は中程度になりそうだ。このため、これらへの投資は機を見て行われるだろう。

  • クロスセルとアップセル
  • テリトリー編成
  • 営業コンテンツのパーソナライズ
  • ナレッジマネジメント
  • アカウントインテリジェンス

3.生成AIの利用拡大に伴い、企業は、著作権のあるコンテンツや保護されたコンテンツ、機密情報のセキュリティ侵害を巡る法的問題に向き合わざるを得ない

 生成AIは、さまざまなビジネス能力を拡張し、加速させるが、CIOは、AIに関する政府の新たな規制やフレームワークを念頭に置く必要がある。AIの利用拡大は、倫理や責任に関する問題の引き金となるだけになおさらだ。AIや生成AIに関連するリスクには、以下のようなものがある。

AIのリスク

  • 規制

 AIは法的リスクをもたらす。企業のAI利用には著作権のある、または保護されたコンテンツ、情報、データを巡る訴訟を起こされる可能性が付きまとうからだ。

  • 評判

 AIはバイアスを増幅し、“ブラックボックス”になってしまうことがある。ブラックボックスは、入力や操作がユーザーから見えないAIシステムを指す。

  • コンピテンシー

 AIは、ユニークな一連のスキルを必要とするが、それらは既存の人材のスキルアップを通じて、あるいは学術界や新興企業から意図的に確保する必要がある。

  • 誤った出力

 生成AI、特にChatGPTは、不安定になる場合や推論に誤りがある場合、また文脈全体を理解しない場合があり、説明や追跡の可能性が限られていてバイアスがある。

  • セキュリティ

 サービスプロバイダーの従業員やハッカーといった、社外のユーザーへの応答を生成するために、自社の機密データや知的財産が使用される場合がある。

  • 法的

 生成AIは、知的財産やプライバシー問題に関連する法的リスクを伴う場合がある。その中には著作権侵害や企業秘密の不正流用、データプライバシー、モデルのバイアス、モデルのセキュリティなどが含まれる。

4.AIを構築する必要はない。AIは入手可能で、既存のアプリケーションに組み込んで使用できる

 AIを入手する方法は、自社開発以外にもたくさんある。例えば、AIを購入して既に使用中のエンタープライズアプリケーションに統合したり、AIを搭載したパッケージアプリケーションを購入したり、AIアドオン(チャットbot、仮想アシスタントなど)を入手したりすることもできる。

 CIOは「AI人材は、リソースを確保する上での大きな問題にはなっていない」との見解を示している。内部採用と外部採用を組み合わせて、AI導入を成功させるために必要な人材を確保している。

5.責任あるAIの考え方を採用し、実践の進め方を計画するには、ステークホルダーと関わり、現在の取り組みを理解し、AIが企業価値にとってどんな意味を持つかを定義する必要がある

 AIは急速に成長しており、新たなトレンドや技術が続々と登場している。CIOは、今後に備えていかなければならない。そのためには、以下のステップを踏む必要がある。

  • 簡潔なAI戦略文書を作成する。この文書では、自社のビジョンと実現できる可能性がある効果をまとめるとともに、リスクを監査、軽減する仕組みを説明し、KPIを策定し、価値創造のためのベストプラクティスを示す
  • AIプロジェクトのスポンサーを特定し、KPIが正確に測定され、広く周知されるようにする
  • データリテラシープログラムに投資し、データドリブンな文化を作る
  • 責任あるAIのプラクティス(実践方法)を、後から付け足すのではなく、AI戦略の基盤に据える

出典:Five things of what CIOs need to know about deploying AI(Gartner)

筆者 John S Hillery

Managing Vice President


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