2026年までに80%以上の企業が生成AIのAPI/アプリを導入する Gartnerが予測「生成AI対応アプリ、基盤モデル、AI TriSMが大きな影響を与える」

Gartnerは、2026年までに企業の約80%が生成AIのAPIや生成AI対応のアプリケーションを導入するという予測を発表した。あわせて今後10年間で組織に影響を与える生成AIハイプサイクルも公開した。

» 2023年10月30日 08時00分 公開
[@IT]

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 Gartnerは2023年10月11日(米国時間)、2026年までに企業の約80%が生成AIのAPIや生成AI対応のアプリケーションを導入するという予測を発表した。2023年現在、生成AIのAPIや生成AI対応アプリケーションを導入している企業は5%未満にとどまるが、今後3年間でその割合は大きく伸長することが想定される。

 Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントであるアルン・チャンドラセカラン氏は次のように語る。「生成AIは企業幹部の最優先事項となっており、基盤モデルだけでなく、さまざまな新しいツールに多大なイノベーションを巻き起こしている。ヘルスケア、ライフサイエンス、法律、金融サービス、公共部門など、多くの業界で生成AIの需要が高まっている」

 2023年のGartnerによる生成AIのハイプサイクルでは、多くのエンタープライズアプリケーションに組み込まれる主要技術が特定された。具体的には、10年以内に組織に大きな影響を与えると予測される3つのイノベーションとして、生成AI対応アプリケーション、基盤モデル、AI TRiSM(AIの信頼、リスク、セキュリティ管理)が挙げられる。

生成AIのハイプサイクル(提供:Gartner)

 ハイプサイクルでは時間軸の左端「黎明期(Innovation Trigger)から流行期(Peak of Inflated Expectations)に向かおうとする流れに生成AI対応アプリケーション(Generative AI-enabled Applications)が位置している。流行期に入って間もないところにAI TRiSM、流行期のピークの位置に基盤モデル(Foundation Models)がある。丸の色は「安定期(Plateau of Productivity)」に到達するまでの予測期間を指しており、白の生成AI対応アプリケーションが2年以内、水色のAI TRiSMが2〜5年、黒の基盤モデルが5〜10年と予測されている。

生成AI対応アプリケーション

 生成AI対応アプリケーションは生成AIを活用して、ユーザーエクスペリエンス(UX)を向上させたり、タスクの効率化を実現したりしながら業務の達成を加速し、支援するものだ。アプリケーションの生成AI活用が進むことで、従業員の幅広いスキルセットに影響を与えると予測される。

 チャンドラセカラン氏は次のように述べている。「今日のアプリケーションにおける生成AIの最も一般的な使用法は『text-to-X』、すなわちテキストを他の形式に変換したり、特定のタスクを実行したりすることにある。これは、自然言語プロンプトを使用することにより、かつては専門的なスキルを必要としたタスクへのアクセスを民主化する。しかし、これらのアプリケーションには、不正確な情報や無関係な情報を生成するなどの課題が残っており、普及が制限される可能性がある」

基盤モデル

 チャンドラセカラン氏は「基盤モデルは、事前トレーニングの規模が膨大で、幅広いユースケースに適用できる特徴を持っており、AIにとって重要な前進となっている。基盤モデルは、従業員の生産性を向上させ、顧客エクスペリエンスを自動化および強化し、コスト効率の高い新しい製品やサービスの作成を可能にすることで、企業内のデジタル変革を推進する」と述べる。

 基盤モデルは、ハイプサイクルの「流行期」のピークにある。Gartnerは2027年までに自然言語処理(NLP)のユースケースの60%が基盤モデルで支えられるようになると予測している。これは、2021年の5%未満から大幅に増加している。

 「テクノロジーリーダーは、パフォーマンスリーダーボードの精度が高いモデル、つまり優れたエコシステムサポートがあり、セキュリティとプライバシーに関する適切なエンタープライズガードレールを備えたモデルから始める必要がある」とチャンドラセカラン氏は指摘する。

AI TRiSM(AIトラスト、リスク、セキュリティ管理)

 AI TRiSMは、AIモデルのガバナンス、信頼性、公平性、信頼性、堅牢性、有効性、データ保護を保証する。AI TRiSMには、モデルの解釈可能性と説明可能性、データとコンテンツの異常検知、AIデータ保護、モデル運用、敵対的攻撃への耐性とこれらに関するソリューションと技術が含まれている。

 チャンドラセカラン氏は次のように述べる。「AIのリスクを一貫して管理していない組織は、プロジェクトの失敗や侵害など、不利な結果を経験する可能性が飛躍的に高まる。不正確だったり、非倫理的だったり、あるいは意図しないAIの結果として引き起こされたプロセスエラーや悪意のあるアクターからの干渉は、セキュリティの失敗、財務的、風評的損失や責任、社会的損害をもたらす可能性がある」

 GartnerはAI TRiSMについて、責任あるAIを実現するための重要なフレームワークであり、2〜5年以内に主流になると予想している。2026年までに、AIの透明性、信頼性、安全性を運用化する組織は、そのAIモデルが採用、ビジネス目標、ユーザー受容性の面で50%の改善を達成することになる可能性が高いという。

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