ABI Researchは2024年、期待されてはいるが実現困難なテクノロジーについての予測を発表した。エンタープライズ5G、折りたたみ式端末の主流化などを挙げた。
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ABI Researchは2024年1月9日(米国時間)、第4回年次トレンドレポートを発表した。このレポートでは、2024年に実現が確実視されている45の主要テクノロジートレンドと、実現困難な37の主要なテクノロジートレンドが特定されている。
中でも、エンタープライズ5G、折りたたみ式端末の主流化、ネットワークAPI、ロボタクシーなど、大いに期待されている幾つかのテクノロジーは、2024年中に実現しないだろうとABI Researchは述べている。
ABI Researchの最高調査責任者(Chief Research Officer)であるスチュアート・カーロー氏は次のように語る。「2023年の高インフレ、コスト圧力、需要の減少などの背景事情は2024年も続いており、米国、ドイツ、中国などの主要市場は長期にわたる製造業不況に直面している。世界の政治状況は、前進軌道上にあるとは言い難い。それでも2024年は、世界全体が転換する節目の年となる可能性がある。スムーズではないし、直線的でもないだろうが、2024年にはテクノロジーが過去数年間の低迷から抜け出すための加速エンジンを提供してくれるだろう」
BI Researchが予測する、2024年にはトレンド入りしそうもないテクノロジーの中から、次の5つを紹介する。
2023年に既に予兆が見られたように、5Gが再び企業の関心を集めることはできないだろう。接続テクノロジーに投資する際、ネットワーク技術者や通信技術の専門家でない限り、ほとんどの企業は接続テクノロジーの名前よりもユースケースとその結果にはるかに関心を持っているからだ。
過去数年間、多くの企業が、薄くて軽量なデザイン、改良されたヒンジ、折り目のないディスプレイ、折りたたみやフリップの形状、大きなカバースクリーンなど、折りたたみ端末のUX(ユーザー体験)を向上させるために努力してきたが、これらの改善がユーザーを完全に納得させ、彼らの想像力を引きつけるには至っていない。
モバイル業界団体GSMA(GSM Association)の「GSMA Open Gateway」およびオープンソースプロジェクト「CAMARA」によって推進されるネットワークAPIは、大きなビジネスチャンスを生み出す可能性は低く、開始直後に放棄された2012年のGSMAの「OneAPI」プロジェクトと同じ運命をたどるとABI Researchは予測している。通信事業者が2024年のエンタープライズ収益とユースケースを切実に必要としているのは事実だが、10年前の課題がまだ解決していない。アプリ開発者は既にアグリゲーターまたはハイパースケーラーを通じてニーズに対応している。新しいネットワークAPI イニシアチブをリリースしても、自動的に開発者の注目を集めるわけではない。
ほとんどの企業は、クラウドを介しての生成AI導入を検討しているが、エンタープライズエッジレベルで生成AIを導入する能力とリソースを備えている企業はほんの一握りである。企業のエンタープライズエッジで生成AIを実行する場合の課題は、適切なユースケースの選択、正しい生成AIフレームワークやモデルの導入、投資収益率(ROI)の期待値のバランスの点にある。エンタープライズ生成AIの可能性は非常に大きなものだが、2024年段階ではエッジでの生成AIの広範な導入はないだろう。
ロボタクシーの運行は、2024年には普及しないだろう。現実世界における監視なし自動運転車が、歩行者や自転車に対して適切に行動するためには、複雑なインタラクションが求められる。最近クルーズが起こした事故の原因と、事故後の同社の行動は、現在調査と対処が進行中だが、2024年のロボタクシーの導入とサービス拡大にはさらなる精査が必要とされる可能性が高く、2024年の監視なし自動運転にとっては大きな逆風となっている。
「2024年はテクノロジーにとって、引き続き困難な年になるだろうが、大きな可能性とチャンスを秘めた年にもなるだろう」とカーロー氏は結論付けている。
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