開発ワークフローの速度向上をうたうDockerのマネージドサービス「Docker Build Cloud」登場「ビルドプロセスにかかる時間を数分から数秒に短縮」

Dockerは「Docker Build Cloud」の一般提供を開始した。DockerコンテナイメージのビルドをAmazon Web Servicesで実行することで開発ワークフローの速度向上が見込めるという。

» 2024年02月23日 08時00分 公開
[Beth PariseauTechTarget]

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 2024年1月中旬、Dockerは「Docker Build Cloud」の一般提供を開始した。Docker Build Cloudは、Amazon Web Services(AWS)上でDockerコンテナイメージのビルドを実行するサービスだ。

 Docker Buildは、「Docker Engine」製品と「Docker Desktop」製品の機能として、主に開発者のローカルワークステーションで既に広く使用されていた。テストを目的にアプリケーションコードなどのアーティファクトをコンテナにパッケージ化し、最終的には運用環境にリリースするためにDocker Buildが使われていた。

 2023年10月にリリースされたDocker Buildアップデートのプレビューでは、パブリッククラウドインフラへのバースト接続が可能になり、パフォーマンスの向上を目的とするチームレベルのリソースキャッシュが追加された。そして一般公開された最新版のDocker Buildが、商用顧客向けホステッドサービスであるDocker Build Cloudだ。既存のデリバリーワークフロー内でのビルドをオフロードするために、継続的インテグレーション(CI)パイプラインとも統合される。

 「ソフトウェアエンジニアは運用環境を厳密に模した環境でアプリケーションをテストしなければならないため、このアップデートはクラウドネイティブ開発の自然な副産物だ」と語るのは、Forrester Researchでアナリストとして働くデビン・ディッカーソン氏だ。

 「以前は運用環境を模した環境のシミュレーションをローカルマシンで行うことは比較的簡単だった。だが、今ははるかに複雑になっている。現在のアプリケーションの多くは、クラウドやサードパーティーから提供されるインフラやアプリケーションサービスを利用している。アプリケーションのビルドはクラウドでテストする方がよりシームレスだ」(ディッカーソン氏)

 Dockerによると、Docker Build Cloudによってビルドプロセスのパフォーマンスが大きく向上し、ビルドプロセスにかかる時間が数分から数秒に短縮された顧客もいるという。Docker Build Cloudは顧客が既に使用しているツールとも統合される。こうした特長はいずれも企業ユーザーにとって魅力がある。

 動画ホスティング企業JW Playerでエンジニアリング部門のマネジャーを務めるスチュワート・パウエル氏は「開発者の生産性を向上させるものなら何でも興味がある。エンジニアがコードをビルドして運用環境に迅速にリリースするワークフローのパフォーマンスを向上できるのならなおさらだ。開発対象とするハードウェアの種類をエンジニアが自由に選択できるテクノロジーにも興味がある」と述べている。

Docker Build Cloudの付加価値と検討事項

 企業のプラットフォームエンジニアリングチームの中には、より広範なCI/CD(継続的デリバリー)パイプラインツールを使用してパブリッククラウド環境に独自の共有ビルド環境を既に構築しているチームもある。パウエル氏は、こうした状況下でも、事前にパッケージ化され、開発者が既に使用しているツールに組み込めるマネージドサービスには潜在的な価値があると語る。

 「マネージドサービスを利用することで、開発チームが当て推量で取り組む作業がある程度取り除かれ、直接取り組めるようになるため、DevOpsチームやリリースエンジニアリングチームに負担をかけることがなくなる。『信頼できる唯一の情報源(SSOT:Single Source of Truth)』として価値もある。ビルドを探す場所、SBOM(ソフトウェア部品表)やイメージの脆弱(ぜいじゃく)性を確認する場所が分かっていれば、エンゲージメントや可視性が高まる。それを可用性、パフォーマンス、管理のオーバーヘッドを犠牲にすることなくできるのが理想だ」(パウエル氏)

 Docker Cloud Buildの初回リリース版について、企業ユーザーが検討すべき細かい点は幾つかある。

 サービスを利用できるのはAWSの米国東部リージョンのみだ。ただし、AWSのロードマップドキュメントによると、複数リージョンでのビルドのサポートが記載されている。

 Dockerの商用サブスクリプションを既に利用しているユーザーは、利用しているプラン(「Docker Personal」「Docker Pro」「Docker Team」「Docker Business」)に応じてDocker Build Cloudを利用できる時間(分数)が決まる。

 サブスクリプションを利用する場合、Docker Build Cloudプランを購入することも可能だ。同プランはユーザー1人当たり月額5ドルで、1シート当たり最低200分のビルド時間が割り当てられる。この時間を超過すると1分当たり0.05ドルが加算される。

クラウドに関するDockerのロードマップと戦略

 Docker Build CloudとDockerの新たなサービスである「Docker Scout」は、開発者のローカルワークステーションを飛び出し、ハイブリッドクラウドインフラに関心のあるソフトウェアエンジニアを引き付けるというDockerの計画の一端を担っている。Docker Scoutは、コンテナの脆弱性スキャンを目的として2023年10月に一般公開されている。

 この幅広い戦略は、2019年に同社が行ったコンテナオーケストレーションからの方針転換と、2021年に物議を醸したDocker Desktopの価格変更から始まっている。クラウドネイティブの開発ワークフロー用にコンテナビルドの自動化と開発者ツールを求める顧客は、商用製品とオープンソースの製品の中から選択できる。

 「開発者ツールに重点を置くというDockerの方針転換とその取り組みは、かなりの成功を収めている」と語るのは、IDCでアナリストとして働くケイティ・ノートン氏だ。Dockerが成長を続けるカギとなるのは、2023年10月にDocker BuildのアップデートとDocker Scoutと一緒にプレビューとして発表されたDockerのAI(人工知能)機能だとノートン氏は予測する。

 2023年5月にIDCが公開した「Generative AI Adoption and Attitudes Survey」(生成AIの導入と意識調査)では、開発者の満足度に最も貢献するものとして生成AIが1位となっている。ノートン氏によると、調査結果の上位には自動化、コラボレーション、統合セキュリティが含まれるという。

 「生成AIによって生産性が高まり、価値の高い開発作業に費やす時間が増えるため、開発者の満足度が高まることが示されている」(ノートン氏)

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