AIは、オブザーバビリティ市場でも注目を集めている。だが、米国シカゴを拠点とするSaaS企業のReveal Dataは、AI機能を持たないオブザーバビリティ製品を導入した。その理由とは?
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AI(人工知能)は、可観測性(オブザーバビリティ)市場でも注目を集めている。だが、米国シカゴを拠点とする電子情報開示SaaS企業のReveal Dataは、AI機能を搭載しないオブザーバビリティ製品を導入したという。
Reveal Dataが、AIの価値を全く知らないというわけではない。Reveal Dataのソフトウェアには複数の機械学習モデルが組み込まれており、自社の顧客向けにAIモデルライブラリも提供している。だが、2021年に同社に入社し、同社のSRE(Site Reliability Engineering)プラクティスの構築を任されたスティーブン・モントーヤ氏は、別の道を選択した。
「『AIで予測分析をする』というと聞こえは良いが、それを進めるには膨大なコンピューティング能力と大量のデータが必要になる。もっとシンプルなのは、統計分析をするソリューションだ。必ずしもAIが必要なわけではない。アプリケーションデータが増大し、オブザーバビリティのデータ管理コストも増大するにつれて、シンプルさが重要になる」(モントーヤ氏)
モントーヤ氏は、Conversant Solutionsなどの前職で、独自のオブザーバビリティツールをゼロから作成し、2014年から2019年まではSREのマネジャーを務めた経験がある。Reveal Dataには社内に同等のスキルがなかったため、独自にツールを構築するのを諦め、ベンダーが提供する製品の導入を検討した。
モントーヤ氏によると、Datadog、Splunk、AppDynamics(現在はCisco Systemsの『Cisco Full Stack Observability』の一部)といったAIOps機能を持つオブザーバビリティ製品を検討したが、いずれも導入に踏み切れる価格ではなかったという。
「AIOps機能を持つオブザーバビリティ製品を提供する企業は、ログを分析してさまざまな予測分析ができるようにログを保管する仕組みを採用している。仕組み自体は完全に理にかなっているが、ログストレージの料金を請求するのであれば、その仕組みの意味はなくなる」(モントーヤ氏)
そこで同社はObserveに注目した。2017年に設立されたObserveは、2020年に完全な機能を備える同社初の製品をリリースし、2024年1月時点では1日当たり最大1PB(ぺタバイト)のデータ取り込みをサポートしているという。
Observeは、AWS(Amazon Web Services)の「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)を使用してSnowflakeのデータレイクバックエンドにログデータを格納する。その過程で、独自のナレッジグラフを構築してログデータの構造化を実現している。Observeのユーザーは同社の「Observe Processing and Analysis Language」(OPAL)という言語を使用してデータを直接クエリすることもできる。
Observeの場合、オブザーバビリティに関する個別の機能に対してではなく、データアクセスの頻度やクエリの速度に応じて課金される。モントーヤ氏は、自社が負担するコストを競合他社の10分の1と見積もっている。
「精巧な分析やインタフェースを提供する競合他社に比べて、Observeのユーザーには高いスキルが求められる可能性がある」と語るのは、Gartnerのアナリストであるグレッグ・ジークフリート氏だ。
「Dynatraceが、同社のデータレイクハウスである『Grail』の構築に当たって必要だった多くのことを、ObserveはSnowflakeを活用することで何もせずに手に入れることができた。Observeを使うには競合他社と比べて長い学習時間が必要だ。だが、時間をかけてObserveの機能を理解すれば、非常に効果が高いものだと分かる」(ジークフリート氏)
モントーヤ氏は、Observe導入の効果と、ベンダーへの期待を次のように述べている。
「何かが間違っていることを特定できるだけでなく、どこに問題があるかを実際に理解しようとするときにも非常に役立つ。クエリにフィルターを追加するだけで、顧客向けに情報を抽出し、分析を開始できる。情報源となったログを知る必要もない。Reveal Dataのソフトウェアエンジニアリングチーム全員が、運用環境だけでなく、開発環境でもObserveを使用できる。これは、先を見越して問題を防ぐことにも役立っている。将来的にはダッシュボードにさらに磨きをかけてほしい」
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