円安時代に必須の防衛策、「AWS Cost Explorer」で行うコスト分析入門AWSチートシート

「Amazon Web Services」(AWS)活用における便利な小技を簡潔に紹介する連載「AWSチートシート」。今回は「AWS Cost Explorer」によるAWSコスト分析のポイントを紹介する。

» 2024年05月30日 05時00分 公開
[沼崎伸洋株式会社システムシェアード]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

 皆さん、AWSのコストについては最近どう対応していますか?

 2024年4月下旬には、1米ドル160円の水準まで円安が進み、その後は戻しました。それでも、執筆時点(2024年5月)では数年前と比較して円安であることに変わりありません。米ドルで利用料が計算されるAWSにおいて、コスト削減の手を考えるためのコストの管理と分析は、重要さを増していると思います。

 そこで今回は、AWSのコストを分析できるサービスである「AWS Cost Explorer」(以下、Cost Explorer)について、基本から多角的な分析を行う方法までをご紹介したいと思います。

※Cost Explorerの利用料金に関しては、公式の情報をご参照ください。

Cost Explorerの概要

 Cost Explorerは、大別して下記の4つの機能を持っています。

  1. いろいろなAWSリソースのコストを可視化できる
  2. さまざまな条件でフィルターをかけて、多角的に詳細な分析ができる
  3. 現在のコスト分析だけでなく、将来のコスト予測を見ることができる
  4. 分析した結果をレポートとして保存できる

 ここからは、上記機能が具体的にどういったものか、マネージメントコンソールの画面をお見せしながら詳しく説明したいと思います。

AWSのリソースコストを可視化

 まずは一番基本的な機能である、コストをグラフで見られる機能について見ていきましょう。

 Cost Explorerを選択すると、下のような画面が現れると思います。

 上図の赤枠で囲まれているエリアの説明は以下の通りです。

1. コストと使用量のグラフ

 積算、個別のコストと使用量を、グラフで視覚的に分かりやすく表示しています。棒グラフ、折れ線グラフなどのグラフ形式が選べます。また、トータル金額や平均額などが、グラフの上に表示されます。

2.レポートパラメーター

 コストをさまざまな角度から分析するための、フィルター条件をまとめたエリアです。主要なフィルター条件については、後で説明します。

3.コストと使用量の内訳

 グラフの基になっている金額の数値情報が表示されているエリアです。CSV形式でのダウンロードも可能です。

フィルターをかけて多角的に分析

 上の説明で簡単に触れたフィルター条件について、これから説明していきます。まずは下の画面をご覧ください。

 大別して4つのフィルター条件があります。

1.時刻

 時間的な粒度と対象となる期間を決める条件です。下記の通り、日付範囲を選び、毎時、日、月の粒度を条件として設定できます。1つ注意したいのは、粒度を毎時に設定した場合、日付の範囲が最大14日間になるということです。

 さまざまな時間的粒度で見ることで、月ごとに差があるか、1年を通して安定しているか、などの傾向分析が簡単に行えます。

2.グループ化

 どの単位でコストをグループ化するかの条件設定です。デフォルトではAWSのサービスでグループ化を行っているため、グラフはAWSサービスごとに表示されます。

 グループ化に利用できる条件としては、抜粋ですが下記のようなものがあります。

 例えば、「アカウント内のリージョン単位でどれだけ料金がかかっているか知りたい」という場合は、グループ化の条件に「リージョン」を選択します。すると、下記のように、リージョンごとにかかっている料金の内訳が、分かりやすくグラフ化されます。

3.フィルター

 ここでは、さまざまなフィルター条件を設定できます。たくさんあるので一部のみをご紹介しますが、下記のような条件があります。

  • サービス:AWSのサービスをフィルター条件に選択できる
  • リージョン:AWSリージョンをフィルター条件に選択できる
  • 料金タイプ:使用料金(「Usage」、税金(「Tax」)をフィルター条件に選択できる
  • タグ:リソースに設定されているタグをフィルター条件に選択できる

 なお、フィルター条件は、選んだものを「含める(includes)」か「除外する(excludes)」かを、それぞれ下の画面の通り選べます。

4.詳細オプション

 詳細オプションでは、料金に計上する方式を決められます。計上の方式として下記があります。計上する方式を正しく選択できないと、誤った推測をしてしまうため、それぞれどういったものかについて説明します。

  • ブレンドコスト:一括請求 (コンソリデーティッドビリング) 全体の平均使用コストが表示される
  • 非ブレンドコスト:使用コストが表示される。請求タイプ別にグループ化された場合、[非ブレンドコスト] は割引をそれぞれの明細項目に分ける。受け取った各割引の金額を確認できる
  • 非ブレンド純コスト:割引後のコストが表示される
  • 償却コスト:リザーブドインスタンス(RI)、「Savings Plans」など、前払いをする購入オプションを選んでいる場合、毎月に案分して償却する形で計上し、コストを表示する
  • 償却純コスト:リザーブドインスタンスのボリューム割引などの割引を含みながら、前払いおよび毎月の予約料金を償却

 「ブレンド、非ブレンドどちらを使えばいいの?」という疑問が浮かんだ方もいらっしゃるかと思いますが、基本的に非ブレントコストでアカウントの正味の使用コストを見れば大丈夫です。

 組織で一括請求をしていて、ボリュームディスカウントされる料金がある場合を加味したい場合、ブレンドコストを利用すればよいです。

 償却コストについては、リザーブドインスタンス(RI)などの前払い購入オプションを活用している場合、償却コスト以外では購入月の金額が跳ね上がるので、月に案分して償却した場合のコストを確認する際に利用します。そうすることで、「RIを買ったことによって本当に削減ができているかどうか」の分析を、購入前と後で行いやすくなります。

 償却コストの注意点としては、税金だけは購入月に含まれるので、純粋に前払い金のみを見たい場合は税金をフィルターで除きましょう。

 その他、下の設定が利用できます。

将来のコスト予測も見られる

 Cost Explorerでは、現在のコスト分析だけでなく、将来のコスト予測も行うことができます。やり方はとても簡単で、日付の範囲で未来日を選択するだけです。

 既にデータのある部分は色付きで表示されて、予測、80%予測間隔を示してくれます。

 予測コストを表示する場合、選べるグラフは棒グラフ、折れ線グラフのみという点と、グループ化の条件は利用できないという点にはご注意ください。

分析した結果をレポートとして保存

 Cost Explorerでは、上記のような機能でさまざまな分析を行った結果を、レポートとして保存できます。

 保存の方法は、「レポートライブラリに保存」をするだけです。保存されたレポートはダッシュボード左の保存済みレポートから一覧が見られます。

 一覧画面は、下のような感じです。

 鍵マーク付きのものはデフォルトで作成されているサンプルであるため、削除できません。メンバー間で分析結果を共有したい時に、このレポート機能を利用してみてはいかがでしょうか。

まとめ

 AWS Cost Explorerで行うコスト分析、いかがでしたでしょうか?

 冒頭でも触れた通り、円安の時代に少しでもコストを削減することは、システム安定性の維持と同様、重要なオペレーションだと思います。そのためには効率的で正確な分析は不可欠です。

 Cost Explorerは、最初に表示されるグラフだけでも傾向は把握できますが、今回紹介した各種条件などを組み合わせることで、より効率的で正確な料金傾向が分析できるツールです。ぜひ、コスト削減に役立ててみて下さい。

筆者紹介

沼崎 伸洋(ぬまざき のぶひろ)

株式会社システムシェアード 開発事業部所属。

ここ数年はAWSを利用したシステムの設計、開発、構築を行っています。

仕事以外では、AWSの資格をあと2つでコンプリートできるので制覇に向けて頑張っています!


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。