Anthropicは、AIが労働市場と経済に長期にわたって及ぼす影響を理解することを目的とした取り組み「Anthropic Economic Index」を発表した。
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「Claude.ai」を提供するAnthropicは2025年2月10日(米国時間)、AI(人工知能)が労働市場と経済に長期にわたって及ぼす影響を理解することを目的とした取り組み「Anthropic Economic Index」を発表した。同社は以下のように説明している。
ユーザーのプライバシーを守りながらClaudeとの会話を分析できる自動分析ツール「Clio」(Claude insights and observations)を使って調査を実施した。Claudeとの約100万の会話データセット(具体的には、FreeとProプランのユーザーがClaude.aiと会話したデータ)にClioを使用し、職業タスクごとに会話を整理するために使用した。
調査では、約2万の仕事に関連するデータベース「O*NET」(米国労働省が提供する職業情報データベース)の分類に従って業務を選択した。Clioは各会話を、その会話におけるAIの役割を最もよく表すO*NETタスクと照合した。その後、O*NETのスキームに従って、タスクを最もよく表す職業にグループ化し、職業を教育/図書館、ビジネス/金融などのカテゴリーに分類した。
当社のデータセットでAIが圧倒的に多く採用されているタスクと職種は、「コンピュータと数学」のカテゴリーに属するものだった。その大部分はソフトウェアエンジニアリングの職務をカバーしている。Claudeに送られたクエリの37.2%がこのカテゴリーに属し、ソフトウェアの修正、コードのデバッグ、ネットワークのトラブルシューティングなどのタスクをカバーしている。
2番目に多いカテゴリーは「アート、デザイン、スポーツ、エンターテインメント、メディア」(10.3%)で、主にさまざまな種類の執筆や編集のためにClaudeを使用している人々を反映している。当然のことながら、「農業、漁業、林業」(0.1%)のような肉体労働の多い職種は最も少ない。
加えて、各職種が労働市場一般に占める割合も比較した。その比較を下図に示す。
当社の分析によると、関連するタスクのほとんどでAIが使用されている職種は非常に少ない。しかし、より緩やかなAIの利用は広く浸透しており、約36%の職種が少なくとも25%の業務でAIを利用していた。
当社の予想通り、このデータセットには仕事が完全に自動化されたという証拠はなかった。その代わり、AIはさまざまな仕事に拡散しており、一部の職種グループには他よりも強い影響を及ぼしていた。
O*NETデータベースは、リストアップされた各職業の米国での給与中央値を提供している。我々はこの情報を分析に加え、職業の給与中央値と、対応する業務におけるAIの使用レベルを比較できるようにした。
興味深いことに、低賃金の仕事も非常に高賃金の仕事も、AIの使用率は非常に低かった(これらは一般に、シャンプー職人や産科医など、手先の器用さを大きく必要とする仕事だ)。コンピュータプログラマーやコピーライターなど、中央値から高い給与レンジにある特定の職業が、今回のデータではAIのヘビーユーザーだった。
また、タスクがどのように実行されているのか、具体的には、どのタスクが「自動化」(ドキュメントの書式設定などのタスクをAIが直接実行)と「拡張」(タスクを実行するためAIとユーザーが共同で作業)に関与しているのかについて、より詳細に調べた。
全体的を見ると、タスクの57%が「拡張」、43%が「自動化」であり、「拡張」に若干の傾きが見られた。つまり、半数強のケースで、AIはタスクをこなす人間の代わりに使用されているのではなく、その代わりに、検証(例:ユーザー作業のダブルチェック)、学習(例:ユーザーの新しい知識/スキル習得の手助け)、タスクの反復(例:ユーザーのブレーンストーミングの手助け、反復的/生成的なタスクの実行)といったタスクに従事し、ユーザーと協働している。
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