GovTech東京で、立ち上げ時期ならではの混沌(こんとん)を整備していく過程を楽しむ女性エンジニアとクリエイター。彼女たちは、行政と都民の未来をどのように変えていくのか――。
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2023年に東京都全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を効果的に進めるための組織としてGovTech東京が設立された。理事長は東京都副知事である宮坂学氏、CTO(最高技術責任者)にはヤフーやクックパッドなどを歴任してきた井原正博氏らが並ぶ。
GovTech東京とはどのような組織で、どのようなエンジニアが働くところなのか。GovTech東京設立早々にジョインした女性エンジニアとクリエイターに聞いた。
2019年に宮坂学氏が東京都副知事に就任すると、超アナログな都庁業務を次々とオンライン化していった。続いて都庁を越え、東京全体のDXを進めるための組織としてGovTech東京が2023年に設立され、宮坂氏が理事長に就く。
GovTech東京設立間もない段階からジョインしたのがテクノロジー本部 テクニカルグループ エキスパート(取材当時)の廣瀬幸帆氏と吉田真実氏だ。まずは2人の経歴から。
廣瀬氏は文系出身のエンジニア。学生時代からPCを使った仕事に興味を持ち、Web制作からキャリアをスタートした。社内向けのポータルサイトの構築や簡単なツール開発を手掛けるようになると本格的にシステム開発に携わりたい気持ちが高まりエンジニアへと転身。スマホアプリのバックエンド開発を中心になど、次第にスキルを広げていく。
前職ではエンジニアリングマネジャーとしてマネジメント業務も経験。個々のエンジニアの成長をサポートしながら、プロジェクト全体を俯瞰的に見る役割を経験した。その中で顧客である行政でのIT活用が進まない課題を目の当たりにし「なぜ行政ではDXが進まないのか」という疑問を抱き、謎を解明すべくGovTech東京の扉をたたいた。
「飽き性なところがあるので、知らないことが多い、予想外のことが起こる方が好き。今じゃないと、このカオス感は味わえないだろうと思って、設立間もないGovTech東京に飛び込みました」と廣瀬氏は笑う。新しい事業や未開拓な環境の方がしっくりくるらしく、環境が整ってくると新しいカオスな現場に目が向くという。そんな廣瀬氏にはGovTech東京のスタートアップ感はとても魅力的だったらしく「最もカオスな時期を経験できてよかった」と話す。
吉田氏もまた新しいもの好き。中学校の技術の時間にPCに触れて「これからはITだ」と直感し、商業高校を選び、プログラミングを学び始めた。次に工業系短大に進学してHTMLを学ぶと「これを極めよう」と決意し、デジハリ(デジタルハリウッド)でWebとCG(コンピュータグラフィックス)を学ぶ。
学生時代にテレビ局でバイトをし、卒業後はWeb制作の受託会社でデザイナーの仕事に就く。さらに、デザインの知識を深めるため京都に移り住み、週末は芸大(京都芸術大学)で学業、平日は制作会社でWebディレクターとして働いた。
結婚を機に東京に上京。以降は東京で職を転々とした後チームラボに入り、デザインやディレクションなど多種多様な仕事を5年ほど経験する。さらに10年ほど、店舗DXを支援するSTORES(旧Coiney)でスタートアップの初期メンバーとしてプロダクトマネジャーやデザインのマネジャーなどを通じて、自分が育てたサービスが成熟する過程を見届けてきた。
一方、帰省するたびに実家の父親の奮闘を聞くようになった。仕事を引退してから自治会の役員や民生委員などに携わるようになった父親から、全国に共通する地方の小さなコミュニティーの課題をいろいろと聞くようになった。吉田氏自身も、確定申告や実家の登記簿切り替えを自身で行うことで「なぜこんなに時間がかかるのか。なぜこんなに紙なのか」と行政のDX遅れを肌で感じ、自分の老後を案ずるようになっていた。
そんな矢先、かつての同僚がきっかけでGovTech東京を知り、「ここなら少しでも未来を変えられるかもしれない」と応募することにした。そして同じように行政に興味を持った2人が、2024年4月にGovTech東京で出会うこととなる。
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