IDCは今後5年間の技術動向に関する包括的な見通しをまとめた「FutureScape 2026」を発表した。エージェンティックAI(自律的にタスクを実行するAI)が戦略転換点として浮上し、2030年までに45%の組織がAIエージェントを大規模運用すると予測している。
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調査会社IDCは2025年10月23日(米国時間)、今後5年間の技術動向に関する包括的な見通しをまとめた「IDC FutureScape 2026」を発表した。FutureScape 2026は、35を超えるテーマ別の予測レポート群で構成されている。
IDCは、世界中でエージェンティックAI(人工知能)が、個別のパイロットプロジェクト(試験運用)での導入から、企業全体のオーケストレーション(連携動作)に進化すると予測。あらゆる分野での意思決定、業務運営、競争力を変革させ、世界経済に影響を与えると分析している。調査では、2030年までに組織の45%がAIエージェントを大規模にオーケストレーションさせ、ビジネス機能全体にエージェンティックAIを組み込むと予測している。
IDCのメレディス・ウォーレン氏(チーフリサーチ&データオフィサー)は「今日、組織は経済的、地政学的不確実性に対処している。そうした中、エージェンティックAIが戦略的転換点として浮上している。単にイノベーションを加速するだけではなく、仕事の進め方、人々の貢献方法、そして今後数年間の業界の成長方法を再構築している」と指摘する。
IDCは、組織がAI変革を進めるために、以下の5つに取り組むことが重要だと分析している。
さらにIDCは、AIを巡って2030年までに生じることを次のように予測している。
2026年までに、G2000(世界の売上高上位2000社)の全職務の40%がAIエージェントとの協働を伴うようになり、従来の初級、中間、上級といった職位が再定義される。
2027年までに、高品質でAI対応のデータを優先しない企業は、生成AIやエージェンティックAIソリューションの規模拡大に苦労し、15%の生産性低下を招く。
2030年までに、G1000(世界の売上高上位1000社)の最大20%が、AIエージェントの不適切な管理と統制に起因する大規模な混乱により、訴訟、多額の罰金、CIO(最高情報責任者)の解任に直面する。
2028年までに、地政学的不確実性により、デジタル主権(データやシステムを自国内で管理・統制する権利)の要件を持つ組織の60%が、リスク低減と自律性向上のため、機密性の高い処理タスクを新しいクラウド環境に移行させる。
2028年までに、AIエージェントが手動の反復作業をデジタル労働力へ急速に置き換えるため、純粋なユーザー単位課金(シートベースの価格設定)は時代遅れになる。これにより、テクノロジーベンダーの70%が、価値提案を新しい課金モデルに再構築することを余儀なくされる。
2026年までに、G2000のCEO(最高経営責任者)の70%が、AIのROIの焦点を「成長」に置く。経営幹部層は、人員数を増やすことなく収益向上やビジネスモデルの再構築を推進する。
これらの予測が示すように、エージェンティックAIは単なるツール導入とは次元の異なる課題を突き付けているといえる。特にガバナンス面のリスクは、IT部門だけではなく組織全体の課題でもある。経営層とIT部門が一体となり、議論を始めるべき状況にあるといえるだろう。
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