進化するRubyのビジネス活用最前線 業務特化型SaaSから国民的フィットネスサービスまでRuby biz Grand prix 2025、大賞は「STORES」と「chocoZAP(チョコザップ)」(2/3 ページ)

» 2025年11月17日 05時00分 公開
[鈴木麻紀@IT]

特別賞

 特別賞には、オプティムの「OPTiM Biz」、スマートバンクの「ワンバンク」(旧名称 B/43)、フーディソンの「魚ポチ」の3サービスが選出された。

 特別賞は、Rubyを活用したビジネスの中でも特に革新性が認められたサービスに贈られた。

「OPTiM Biz」 MDM市場の成長と発展をけん引

OPTiM Biz

 「OPTiM Biz」は、企業や学校などで利用されるスマートフォン、タブレット、PCなどの端末を一元管理するMDM(Mobile Device Management)サービスである。端末の紛失、盗難対策やセキュリティポリシーの徹底、アプリの遠隔配信など、多岐にわたる機能を提供し、法人の端末運用を安全かつ効率的にサポートしている。MDM市場において長年にわたり高いシェアを維持している実績を持つサービスである。

 OPTiM Bizでは、端末の設定やポリシーの管理といったコア機能のバックエンドサービスとしてRubyが使用されている。特に、Rubyのメタプログラミング機能を活用したDSL(Domain Specific Language)で設定ファイルを記述しており、これにより迅速な機能開発と設定項目の追加が容易になっている。また、RubyKaigiへの支援など、コミュニティー活動にも積極的に参加している。

 オプティムの伊藤赳人氏は、インフラに近いサービスだからこそ、コミュニティーへの貢献も視野に入れ、Rubyの発展に寄与したいと語った。受賞は大変光栄であり、「この賞を糧として、より一層Rubyの発展に貢献していきたい」と謝辞を述べた。

「ワンバンク」 家族のお金管理問題を、Rubyを使って解決

ワンバンク

 スマートバンクが提供する「ワンバンク」は、「全ての人のお金の不安をなくす」というミッションを掲げるスタートアップ企業である。若年層や金融リテラシーが高くない層も含め、お金の管理を簡単にするVisaプリペイドカードと家計簿アプリを提供している。特に、ペアカードやマイカード、ジュニアカードといった多様なカードを提供することで、利用者に最適な形で支出を可視化し、計画的な支出管理をサポートする。

 同社は、創業当初からサービスの基幹システム全体にRuby on Railsを採用しており、コードベースの約9割がRubyで書かれている。Rubyの持つ開発効率の高さやエコシステムの成熟を重視し、高速な開発スピードを維持している。また、RubyKaigi、「Kaigi on Rails」「RubyWorld Conference」といった国内外のRubyカンファレンスに積極的に登壇、協賛し、コミュニティー活動に深く関与している。

 スマートバンクの三谷昌平氏は、この受賞を機に、「ユーザーにとって、本当にお金の管理が楽になるようなサービスを提供し、その中でRubyを活用してコミュニティーにも貢献し、さらに開発を進めていきたい」と意欲を表明した。

「魚ポチ」 飲食業の苦労を軽減し、消費者のおいしいにつなげる

魚ポチ

 フーディソンが提供する「魚ポチ」は、飲食事業者向けの生鮮、加工水産物のB2B(Business to Business) ECサービスである。全国の漁港や市場から、50業者以上、8000点以上の水産品を飲食店へ提供し、最短で翌日配送を実現している。流通経路の複雑さやフードロスといった水産業界の課題に対し、ITと物流技術を組み合わせることで、新鮮な食材を飲食店に安定供給し、生産者の収益向上にも貢献している。年間取扱高は約55億円に達している。

 魚ポチの受発注システムや在庫管理システムはRuby on Railsで開発されている。また、漁場や加工場など現場における生産工程や、特殊な計測、制御機器(PLCなど)との連携においてもRubyが活用されており、システムの迅速な改修を支えている。

 フーディソンの渡邊大輔氏は、食文化を支える縁の下の力持ちとして「これからもRubyコミュニティとの交流にも貢献したい」と述べ、今後もサービス開発を進めることで、Rubyの持つ可能性をさらに追求していきたいと語った。

AIxRuby賞

 「AIxRuby賞」は、Rubyを用いて作成されたシステムがAI(人工知能)と連携し、その独創性やコンセプトの先進性を追求している事例を表彰したものであり、AI分野におけるRubyの可能性を提示する意味合いを持つ賞である。

 AIxRuby賞には、IVRyの「アイブリー」と、ネクスウェイの「トッツゴー」の2サービスが選出された。

「アイブリー」 AI×Rubyで多くの企業の生産性向上

アイブリー

 「アイブリー」は、電話応対を自動化する対話型AI SaaS(Software as a Service)である。日本の労働人口減少や働き方の変化といった社会課題に対し、電話業務の効率化を通じて貢献することを目指している。全国47都道府県、97業種、6000社以上の導入実績があり、累計電話対応数は6000万件を超える。AIを活用して受電データを解析し、業務効率化を実現することで、日本全体のアナログな慣習をテクノロジーで変えることを目指している。

 アイブリーのサービス開発にはRuby on Railsが採用されており、特にコールセンターに関わるコアな機能の9割近くがRubyで開発されている。アイブリーにとってRubyはサービスの中核を成す「最も重要な技術の一つ」であり、Rubyコミュニティとの連携を重視し、RubyKaigiのスポンサー活動なども行っている。

 IVRyの赤松祐希氏は、AIxRuby賞という形での受賞は非常に光栄であるとし、「われわれのビジネス自体が、『Work is Fun:働くことは楽しい』というメッセージを体現していると思っている」と語った。テクノロジーが人の仕事を奪うのではなく、人がより創造的な活動に集中できるようにすることを目標に、Rubyを活用していく決意を述べた。

「トッツゴー」 AIの活用で、Rubyの開発効率と表現力を引き出す技術的挑戦

トッツゴー

 「トッツゴー」は、クラウド型の一元管理、文書保管サービスである。紙やFAX、PDFといった非デジタル形式で存在する文書の情報を、AI OCR(光学式文字読み取り装置)によってデータ化し、明細単位での自動突合、その確認、支払い申請、電子保管までをワンストップで提供する。アナログとデジタルが混在する企業間取引において、コンプライアンス順守の完全なチェックを可能にし、煩雑な作業負荷を大幅に軽減する。これまでに300件ほどの現場ヒアリングを行っており、徹底的に現場に寄り添うサービス設計が強みである。

 トッツゴーを提供するネクスウェイは、2010年の開発体制内製化以来、Rubyを主要開発言語として採用しており、現在8つのプロダクト全てにRubyを活用している。同社にとってRubyはサービスの開発に欠かせない言語であると位置付けられている。

 ネクスウェイの山下智紀氏は、Ruby Biz Grand prixのファイナリストに残れたこと、そしてAIxRuby賞を受賞できたことに感謝を述べ、「今後もRubyと共に、コミュニティーに貢献できる、やりがいのあるプロダクトを生み出していきたい」と語った。

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