M&Aキャピタルパートナーズの調査によると、IT企業経営者の過半数がエンジニア不足を実感している他、賃上げを行ってもサービスへの価格転嫁が進んでいないという。
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M&Aキャピタルパートナーズは2025年12月5日、従業員300人以下の中小SIer(システムインテグレーター)/システム開発会社の経営者110人を対象とした「IT業界における人材課題と将来の展望に関する実態調査」の結果を発表した。
同調査は2025年11月11日から11月13日にかけて、IDEATECHが提供するリサーチデータマーケティング「リサピー」の企画によるインターネット調査として実施された。
調査結果によると、IT企業経営者の半数以上がエンジニア不足を実感しているほか、採用難易度の上昇に伴い人件費が増加している。だが一方で、人件費増をサービス価格へ転嫁できている企業は半数未満にとどまるという。
従業員300人以下の企業経営者に対し、自社におけるIT人材の不足について尋ねたところ、「非常に感じている」(30.9%)、「やや感じている」(22.7%)を合わせて53.6%の経営者が人材不足の課題を実感していた。
過去1年間の採用活動において目標とする人材確保ができたかどうかの問いに対しては、「あまり確保できていない」「全く確保できていない」とする回答が40.9%に上った。
既存のIT人材のスキルに対する満足度についても、「非常に満足している」「やや満足している」と回答した経営者は44.6%にとどまり、半数以上の経営者が現有人材のスキルレベルに何らかの課題や不満を感じている現状が見て取れる。
人材確保に苦戦している企業に対し、採用における具体的な課題を聞いたところ、「応募者の技術スキルが不足している」が44.4%で最多となった。次いで「応募者数が少ない」(37.8%)、「応募者の経験不足」「採用市場の競争激化」(ともに31.1%)が挙げられた。多くの企業が応募者の質と量の両面で苦慮している様子がうかがえる。
こうした状況下で講じている対策としては、「給与・待遇の向上」が33.6%でトップとなり、次いで「リモートワークなど柔軟な働き方の導入」(24.5%)、「福利厚生の充実」(20.0%)が続いた。人材獲得競争が激化する中、賃上げや働きやすさの改善でITエンジニアを誘引しようとする動きが見られる。
過去1年間で会社の人件費が変化したかどうかを尋ねたところ、約3割(29.0%)の企業が「増加した」と回答した。一方で、60.9%の企業は「ほぼ変化していない」としており、賃上げに慎重な姿勢を崩さない企業も多い。
一方、人件費が増加したと回答した企業のうち、その増加分をサービスや製品価格に転嫁できていない(「あまりできていない」「全くできていない」)と回答した割合は53.1%に達した。IT人材獲得のためにコストが増大する一方で、それを収益構造に反映できていない厳しい経営実態が浮き彫りとなっている。
今後3年間で会社にとって大きな脅威・課題になるのは、「人材確保の困難さ」が35.5%で最も多く、「人件費の高騰」(32.7%)、「経済情勢の悪化」(30.9%)と続いた。
人材不足とコスト増に対する今後3年間の対策として、「新たなビジネスモデルの開発」(38.5%)を挙げる経営者が多かった一方、M&Aによる解決策を検討している割合は極めて低かった。「M&Aによる事業拡大(買い手として)」は4.4%にとどまり、「M&Aによる事業譲渡(売り手として)」は、0%となり、選択肢として全く挙がっていない実態も浮き彫りになった。
M&Aキャピタルパートナーズの山﨑 研氏(企業情報部 部長)は「経済産業省のDX(デジタルトランスフォーメーション)レポートで指摘された『2025年の崖』への対応などによりDX需要が加速する一方で、IT人材不足が深刻化している。単独での人材確保が困難な状況下では、M&Aによる人材確保や大手グループへの参画によるブランド力活用といった選択肢も有効だが、中小SIer経営者の間でM&Aが課題解決策として十分に浸透していない現状にある」と述べている。
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