SCゼウスは、大阪市内で日本第1号となるデータセンター「Zeus OSA1」を建設する。100MWの電力供給を確保し、最新の液冷方式の採用により1ラック当たり最大130kWの電力密度に対応する。
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データセンター事業者のSCゼウス・データセンター(以下、SCゼウス)は2025年12月3日、同社のデータセンターとしては日本国内初となる「Zeus OSA1」の建設に大阪市内で着手したことを発表した。プロジェクトは2フェーズに分かれており、最終的に電力容量が70MW(メガワット)の大規模クラスになる。関西電力から100MWの電力供給を確保している。
サーバラック1台当たりの電力容量を最大130kW(キロワット)とするなど、AI(人工知能)のワークロードが集中することを前提にした設計になるという。
SCゼウスは、CEO(最高経営責任者)のジョー・グーイ氏、COO(最高執行責任者)のAC・リー氏が、プライベートエクイティー大手SCキャピタルパートナーズと共同で2021年に創業したデータセンター企業だ。シンガポールを本拠としている。
Zeus OSA1は、大阪中心部のインターネットエクスチェンジ(IX)やデータセンター群に近接する立地で開発される。敷地面積は約4000坪(1万3957平方メートル)の準工業地域に建設される。西日本におけるAIやクラウドの需要に応じるデータセンターとなる見込みだ。
AIワークロード(AI関連のタスク)が集中することを見据えて、Zeus OSA1は液体冷却(液冷)方式に対応した冷却アーキテクチャを採用する。CPU(中央演算処理装置)やGPU(グラフィックス処理装置)に冷却液を直接循環させる「ダイレクト・ツー・チップ」(Direct-to-Chip)方式を取り入れた設計で、1ラック当たり最大130kWの電力密度に対応できるという。
データセンターの電力利用効率を示すPUE(Power Usage Effectiveness)は、一般的には1.3未満であれば高効率とする見方がある中で、1.19の高効率設計になるという。施設構成はモジュール型とし、運用開始後も需要に応じて柔軟に増設やスケールアップが行える点も特徴としている。
同プロジェクトでは、Mechanical(機械)、Electrical(電気)、Plumbing(配管)といったインフラ設備の施工(MEP)に、プレファブリケーション(プレハブ工法)を採用する。工場などであらかじめユニット化した部材を現場で組み立てる施工方式により、日本市場で課題となっているMEP分野の専門人材不足の緩和と、工期短縮、品質の安定化を同時に図るとしている。
グーイCEOは、空冷から液冷への移行や、従来は1ラック当たり8.5kW程度が一般的だったサーバラックの電力が100kW超へと高密度化している潮流を挙げ、「低PUEだけでなく、最新技術に対応できるデータセンター設計が重要だ。Zeus OSA1は、ダイレクト・ツー・チップ方式を含む、幅広い要件に応えられる柔軟性を備えている」とコメントしている。
SCゼウスは、データセンター専門メディア「Data Centre Magazine」により、「世界の注目データセンタースタートアップTOP10」の一社に選出された実績を持つ。今後は、国内外のクラウド事業者やAIプラットフォーム事業者との連携を強化し、日本におけるデジタルインフラの整備と高度化に継続して取り組む。
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