AIエージェントへの関心が高まる中、エンタープライズアプリケーションのリーダーの間では「RPAやBPAは廃れていくのかどうか」という疑問が浮上している。AIエージェントはもてはやされてはいるが、多くの組織は既存ソリューションを置き換える段階には至っていない。本稿では、その要因とAIエージェントの進化する役割について紹介する。
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AIエージェントへの関心が急速に高まる中、エンタープライズアプリケーションのリーダーの間では、重要な疑問が浮上している。「『RPA』(Robotic Process Automation)や『BPA』(Business Process Automation)は、廃れていくのかどうか」という疑問だ。
だが、現実には、AIエージェントはもてはやされているものの、これらの確立された技術を置き換える段階には至っていない。従量制料金でコストがかさむ他、予測不能な結果から規制順守上の懸念まで、より高いリスクプロファイルを伴うからだ。
AIエージェントへの関心が高まっているが、ほとんどの組織は既存のRPAやBPAソリューションを置き換えていない。現在のAIエージェントは、確立された自動化ワークフローを代替するのではなく、強化するツールとしての活用が模索されている。この慎重なアプローチの背景には、幾つかの重要な要因がある。
AIエージェントは多くの場合、従量課金モデルを採用しており、大量の、あるいは反復的なタスクに適用すると、コストがすぐに跳ね上がることがある。
これに対し、RPAやBPAのプラットフォームは通常、より予測可能で費用対効果の高い、ユーザー数やプロセスに基づく料金体系となっている。
毎日数千件のトランザクションを処理する組織にとっては、従来の自動化の方が断然低コストだ。高頻度のプロセス実行では、AIエージェントのコストはRPA botの30倍に上る可能性もある。
大規模言語モデル(LLM)ベースのAIエージェントは、エンタープライズ環境に新たなリスクをもたらすことがある。その中には、意図しないデータ共有、最適ではない「推論」や意思決定、不正確な情報を含むハルシネーション(AIが事実と異なる内容やコンテキストと無関係な内容の出力を、もっともらしく生成する問題)、バイアス(偏見)、地域の規制に違反するアクションなどが含まれる。
新興技術であるAIエージェントは、この技術に精通しておらず、セキュリティ、データアクセス、プライバシー、規制順守に向けた適切なガバナンスとガードレールを確立していない組織にとって、重大なリスクを伴う。
現行世代のAIエージェントは、速度、信頼性、一貫性が不可欠である複雑なエンタープライズ環境では、課題を抱えている。例えば、AIエージェントをBPAの代わりに使用すると、意思決定結果の一貫性に問題が生じることがある。
説明可能で規定的な結果をもたらすロジックテーブルや意思決定ツリーとは異なり、AIエージェントは現状ではメモリが限られており、公開されているトレーニングデータに依存していることから、同じ質問に対して異なる回答を返す場合がある。これでは企業のニーズに合わない。
多くの企業は数年にわたって、RPAやBPAプラットフォームを用いた信頼性の高い自動化ワークフローの構築に多額の投資をしてきた。これらのシステムが既に大きな価値を実証しているため、ITリーダーは当然のことながら、現段階では漸進的な改善しかもたらさない可能性がある新興技術によって既存の業務運営を混乱させることをためらう。
AIエージェント技術が成熟するにつれて、現在の制約(コスト、リスク、技術的限界)は解消されていくと予想される。時間の経過とともに、AIエージェントは費用対効果と信頼性が向上し、従来のRPAやBPAでは対応が難しかった、例外や計画外のシナリオを処理する能力も強化されるだろう。その結果、AIエージェントが対応できるユースケースの範囲は、今日のRPAやBPA技術よりも広がることになる。
現時点では、組織は既存のAIエージェント技術の限界と、将来のAIエージェントの進化の可能性を踏まえ、短期的な観点から、RPAやBPA技術とAIエージェントを組み合わせた運用に注力すべきだ。その一方で、従来の自動化が十分な効果を発揮しない高価値で低頻度のユースケースに重点を置いて、AIエージェントの能力を探求していく必要がある。
出典:AI Agents to Complement, Not Replace Traditional Automation Technologies(Gartner)
※この記事は、2025年11月に執筆されたものです。
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