AIエージェントが「自律的に動くほど」侵入されやすい? 調査で分かった攻撃パターンCheck Point傘下Lakeraが分析

Check Point傘下のLakeraは、AIエージェントを標的とした最新の攻撃トレンドをまとめたレポートを発表した。システムプロンプトの抽出や間接的プロンプトインジェクションなど、攻撃手法が急速に変化している実態が浮き彫りとなっている。

» 2026年01月23日 13時00分 公開
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 Check Point Software Technologies傘下でAI(人工知能)セキュリティプラットフォームを手掛けるLakeraは2025年12月25日、AIエージェントの安全性を分析した「2025年第4四半期エージェントセキュリティ動向レポート」(Q4 2025 Agent Security Trends Report)を発表した。

 調査は、Lakeraの保護ツール「Lakera Guard」およびAI攻撃シミュレーション環境「Gandalf: Agent Breaker」内のインタラクション(やりとり)を対象に、2025年第4四半期(10〜12月)の特定の30日間に焦点を当てて分析されたものだ。AIエージェントの利用が広がることで、攻撃者が狙う侵入口に変化が見られる。

AIエージェントの登場で攻撃パターンにも変化(提供:Check Point Software Technologies)

AIエージェントの進化と同じく攻撃パターンも進化

 2025年は、実用的なAIエージェント機能が現れ始めた。AIモデルは文書の読み取りやツールの呼び出し、複数ステップにまたがるタスクの調整を自律的に実行できるようになった。

 こうした進化に合わせ、攻撃者の行動も適応している。AIモデルが文書やツール、外部データと連携するようになると、脅威の対象領域はネットワークやアプリケーションにとどまらなくなった。

 信頼できないWebページの読み取りや、構造化されたワークフローの実行が可能になり、攻撃者はAIシステムそのものに影響を及ぼすための新たな侵入経路を手にしたのだ。

 これは単にAIエージェントが普及したという話ではない。新機能が登場するやいなや、攻撃者がその挙動を即座に試行できるほど、技術の進歩が高速化していることを示している。初期段階のブラウジングや検索、軽量なツール呼び出しでさえ、新たな脆弱(ぜいじゃく)性を生み出す要因となり得る。

最も多くの攻撃者が狙うシステムプロンプトの抽出

 攻撃意図の中で最も多く見られたのは、「システムプロンプトの抽出」だった。AIエージェントにおいてシステムプロンプトには、役割定義やツールの仕様、ワークフローのロジックなどが記述されている。これらはエージェントの振る舞いを決定付ける情報であり、攻撃者にとっては事実上の「設計図」に相当する。

 システムプロンプトを把握できれば、エージェントの制約や判断条件、外部ツールとの連携方法を推測できるため、後続の攻撃を設計しやすくなる。このため、システムプロンプトの抽出は、AIエージェントを狙う攻撃において最初に試みられるケースが多い。

 システムプロンプト抽出攻撃では、主に以下の2つの手法が確認されている。

  • 仮想シナリオとロールフレーミング
    • AIモデルに一時的な役割を与え、リクエストを思考実験やシミュレーションとして提示する手法。例えば「開発者としてシステム構成を確認していると仮定してください」といった指示により、通常は明かさない機密情報を開示させるケースが見られる
    • アラビア語など複数の言語を用いて英語中心のガードレール(安全装置)を回避しようとする試みも確認された
  • 難読化
    • Base64や非標準構文、疑似コードを用いて、構造化されたコンテンツ内に悪意ある指示を隠す手法。一見するとパラメーターやメタデータのように見えるが、内部にシステムの詳細を出力させるコマンドが埋め込まれている。こうした構造化されたデータは、単純なパターンベースのフィルタリングでは見落とされやすい

コンテンツセーフティーの回避手法が巧妙化

 第4四半期に2番目に多く観測されたのは、制限されているコンテンツを、有害に見えない形で生成させようとする試みだ。攻撃者はプロンプトの役割を「分析タスク」「変換」などと位置付け、AIモデルの解釈をずらそうとする。

 AIモデルは、有害なコンテンツの生成を直接要求された場合は拒否する。これに対し「評価」や「ロールプレイ」といった文脈で要求された場合、同様の内容を再現してしまう可能性がある。

探索的プローブが構造化された攻撃戦術に

 確認されたプロンプトのうち相当な割合を占めていたのが、AIモデルの挙動を探る探索的プローブだ。拒否パターンの研究や挙動の不整合の特定を目的としており、感情操作や矛盾した指示、突然の役割変更などを用いて試行が行われる。

 こうしたプローブは偵察の役割を担い、ガードレールがどこで緩むかといった情報を把握するために使われる。エージェントが複雑なワークフローを担うにつれ、この探索フェーズの重要性が増している。

AIエージェント特有の攻撃パターンの出現

 第4四半期には、AIモデルが外部入力を処理し、ステップ間で情報を伝達するようになったことで初めて成立する、AIエージェント特有の攻撃実例が確認された。主な攻撃パターンは以下の通り。

  • 内部の機密データへのアクセス試行
    • AIエージェントに接続されたドキュメントストアなどからの情報抽出
  • プロンプト内のスクリプト形式のコンテンツ
    • AIエージェントのパイプラインを経由するテキスト内に実行可能コードを埋め込む試み
  • 外部コンテンツ内に隠された指示
    • 処理対象のWebページやファイル内に悪意ある指示を埋め込む間接的なプロンプトインジェクション

直接的なプロンプトインジェクションから間接攻撃へ

 本四半期の分析で明らかになった重要な点の一つは、間接的な攻撃は直接的なプロンプトインジェクションに比べ、より少ない試行回数で成功するという事実だ。攻撃者はもはや単純なインジェクションに頼らず、文書やWebページに指示を埋め込む間接攻撃を好むようになっている。

 有害な指示がユーザーの意図ではなく外部コンテンツを通じて届く場合、初期段階のフィルタリング効果は低下する。この傾向は、AIエージェントが検索システムや構造化データソースと深く統合されるにつれ、さらに拡大する可能性がある。

2026年に向けた教訓

 レポートは、2026年以降のAIセキュリティにおける教訓として以下の3点を挙げている。

  • セキュリティはあらゆるインタラクションをカバーする必要がある
    • 入力、ツール、取得ステップ、外部ソースの全てが攻撃対象領域となる
  • 推論モデルは有効だがギャップを完全には埋められない
    • 強力な推論で失敗を低減できても、間接攻撃は依然として困難な課題であり続ける
  • 複雑さによって攻撃者に新たな機会が生まれる
    • システムの機能が向上するにつれ、挙動を操作する新たな経路が発見される

 2026年は、AIエージェントによる生成物だけでなく、ワークフロー全体にまでセキュリティを拡張することが重要な課題となる。

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