AIが企業に浸透する中、エンタープライズアプリケーションによる価値創造への期待が高まっている。だが、エンタープライズアプリケーション戦略による具体的なビジネス価値の創造に苦労している企業は少なくない。本稿では、企業が改善すべき4つのポイントを紹介する。
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今日の企業にとって、エンタープライズアプリケーションは不可欠だ。業務効率を向上させ、より賢明なビジネス判断を可能にし、技術的負債の削減に貢献している。しかし、いまだに多くの企業が、エンタープライズアプリケーション戦略による具体的なビジネス価値の創造に苦労している。
Gartnerによると、新しいエンタープライズアプリケーションプロジェクトのビジネスケース(投資対効果検討書)が承認される割合は、53%にとどまっている。これは、より明確な成果や投資対効果が求められるようになっていることを反映している。
AIが企業全体に浸透する中、エンタープライズアプリケーションによる価値創造への期待はますます高まっている。かつては主にバックオフィスツールと見なされていたものが、AIの活用により、プロセスの自動化、実行可能なインサイトの生成、より迅速かつ柔軟な意思決定を実現するインテリジェントシステムへと変貌していることが背景にある。
だが、アプリケーションの急速な進化に伴い、アプリケーションをいかに効果的に導入するかが極めて重要になる。結局のところ、エンタープライズアプリケーション戦略の成否は、技術そのものではなく、その実行の質に左右されるからだ。
エンタープライズアプリケーション戦略の最も一般的な落とし穴を理解し、その回避方法を学ぶことで、ITリーダーは成功の可能性を大きく高められる。
エンタープライズアプリケーションの導入は、変革を推進する明確なリーダーシップの欠如から失敗することが多い。変革に対する強いビジョンと、その旗振り役となるリーダーが存在しなければ、混乱が生じやすい。
というのも、エンドユーザーや主要なステークホルダーは、新しいアプリケーションの導入に抵抗するかもしれないからだ。導入メリットが明確でない場合や、導入によって業務が混乱すると思われる場合はなおさらだ。こうした状況でリーダーシップが弱いと、疑心暗鬼や不信感が広がり、チームは主要なマイルストーンやスケジュール、予算について足並みをそろえるのが難しくなる。
最初から、チェンジマネジメントに投資することが重要だ。ステークホルダーエンゲージメントの専任担当者を置き、新しいアプリケーションの導入による変革の範囲と影響を周知し、変革の目的について共通認識を形成する必要がある。
さらに、正式なチェンジレディネス(変革に対応する準備)評価を実施すれば、主要な成果物を検証し、提案された戦略が目的に適合しているかどうかを評価し、ステークホルダー間における抵抗や混乱の兆候を捉える機会になる。
ただし、強いリーダーシップには信頼の構築が不可欠であり、それは継続的なコミュニケーションと率直なフィードバックの繰り返しによって実現される。戦略を地に足の着いたものにし、支持を得るために、ステークホルダーから広く意見を求めることが重要だ。
不十分なコミュニケーションは、エンタープライズアプリケーション戦略が失速する最も一般的な原因の一つだ。ステークホルダー(外部パートナーを含む)は、優先事項、成果、成功を、エンタープライズアプリケーションチームとは異なる形で解釈する。明確で一貫したコミュニケーションが欠けると、こうした認識のずれがすぐに行き違いや混乱、意思決定の遅延につながる。
アプリケーション導入に関与する必要があるステークホルダーは誰か、こうしたステークホルダーは何を優先するか、成功をどのように定義するかを把握する必要がある。さらに、明確なガバナンスモデルを確立し、プロジェクト全体を通じて、ステークホルダーが認識を合わせ、意見を出し合い、最新情報を共有できる構造化された場を設けることも不可欠だ。
同様に重要なのが、主要なメッセージやマイルストーン、スケジュールについて伝え方を工夫したコミュニケーション計画だ。広範な情報発信と双方向のセッションを組み合わせることで、信頼の構築、懸念事項の顕在化、導入前の合意形成を促進できる。
多くの企業は、エンタープライズアプリケーション戦略を成功させるために必要なリソースを過小評価する。これは予算不足や広範なビジネス目標との不整合、変革の専任担当者の不在といった問題につながることがある。
ベンダーの選定や管理に不備があると、火に油を注ぐことになる。ベンダーやシステムインテグレーターは、エンタープライズアプリケーションの導入において重要な役割を担うが、要件が明確でなく、企業がユーザーの期待を適切に管理しないと、納品の不備やリソース配分の不足、メンテナンスコストの高騰を招きがちだ。
リーダーはこれらの課題を克服するために、計画プロセスの早い段階から部門横断チームを巻き込み、変革の支援に動員できる社内リソースを把握する必要がある。当初から関与する従業員は、責任意識を持ち、積極的に貢献する可能性が高い。
また、ベンダー管理はアプリケーション導入プロセスの一部として扱わなければならない。ERPのような基幹システムでは、特にそうだ。企業がビジネス要件と技術要件(セキュリティやコンプライアンスを含む)を明確に定義することで、ベンダーは自社ソリューションが企業の戦略にどう適合するかを理解しやすくなる。これは、明確な成功指標を設定するということでもある。また、何をもって失敗と見なすかを定義することにもなる。
アプリケーション戦略をいかに綿密に策定しても、予期せぬ状況が発生し、変革に影響を与えることはほぼ確実だ。
例えば、ベンダーのクラウドファーストモデルへの移行、規制や政策の不確実性、セキュリティ侵害によるダウンタイムなどにより、入念に設計された取り組みがあっさり頓挫することもある。
多くの企業はこうした混乱を予測せず、問題が起きて初めてその影響を認識する。起こり得る失敗のシナリオに基づいて結果を検討するプレモーテム(事前検証)を実施するのが賢明だ。これにより、潜在的な課題を特定し、緩和策を策定し、プロジェクト全体を通じてリスクをモニタリングできる。
計画を持つことは重要だが、状況に柔軟に対処していくことも同様に重要だ。レジリエントな(回復力の高い)エンタープライズアプリケーション戦略とは、変化に対応できるだけでなく、適応できる戦略だ。
出典:The roadblocks to success in enterprise application strategies(Gartner)
※この記事は、2025年11月に執筆されたものです。
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