IBMと全米小売業協会の調査によると、消費者の45%が購買決定のサポートにAIを活用しているという。一方、IBMは多くの企業が「エージェント主導型コマース」への移行に対応できていないと指摘している。
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IBMの調査機関であるIBM Institute for Business Value(IBV)は2026年1月7日(米国時間)、全米小売業協会(NRF)と共同で実施したグローバル調査「Own the agentic commerce experience」の結果を発表した。
調査は2025年第3四半期(7〜9月)に世界23カ国の消費者1万8000人と、小売や消費財、Eコマース(電子商取引)企業の経営幹部200人を対象に実施された。
生成AIは、消費者が「購入」ボタンをクリックする以前のプロセスを根本から変えつつある。高度なパーソナライズ提案やAIによる推奨を通じて、ブランドや小売業者の主戦場は、実店舗への訪問やアプリを開く前の段階へと移行している。
調査によると、購買プロセスの途中でAIの助けを借りる消費者は45%に上る。72%の消費者は実店舗で買い物し、依然として商品を直接見て触れることを望んでいるものの、事前にAIを使って情報を収集し、目的意識を持って来店する傾向が強まっている。
具体的なAIの利用用途を調べたところ、以下の結果となった。
NRFのAI・テクノロジーポリシー担当シニアディレクターであるキャロライン・レッパート氏は「AIが消費者の発見や比較、選択をガイドする役割を強めている」と分析。「この潮流に対応できる小売業者が、長期的な顧客ロイヤリティーを獲得できる」と指摘している。
AIを活用した発見へのシフトは、ブランドや小売業者に消費者との接点の見直しを迫っている。
靴・アクセサリー販売のALDO GroupでCIO(最高情報責任者)を務めるマチュー・ウール氏は、AIによってショッピングが検索から「信頼できる対話」へと変化していると述べる。消費者は、自分の好みを理解し、中立的で自分に最適なアドバイスをくれる人間のようなアシスタントを頼りに、購入の意思決定を行っているという。
消費者が求める買い物体験を尋ねたところ、35%が「視覚的に魅力的な、待ち時間のない店舗」を挙げた。AI搭載ソリューションへの期待も高く、以下のニーズが明らかになった。
消費者の期待が変化する中、多くの小売業のオペレーションモデルがそのスピードに追い付けていないという課題もある。モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)のインサイト(AI・オムニチャネル) 担当責任者であるスタニスラス・ヴィニョン氏は、「適切なデータがなければAIは機能しない」と強調し、ソリューションのテストと、それがどこで価値を生み出すか検証が重要だと指摘している。
AIが消費行動の在り方を一変させる中、IBMはブランドや小売業者が市場で優位に立つための技術戦略として以下の5項目を挙げている。
消費者がAIを使用してリサーチや比較、価値の検討を行う場所を特定する。これらの瞬間が、実際の購入へとシームレスにつながるように体験を設計する必要がある。
お得な情報の検索やレビューの解析、パーソナルショッピングのサポートを、消費者が意思決定をする初期段階に配置する。エージェントの実装を「カスタマーサポートの工数削減」(コストカット)の目的だけでなく、消費者の意思決定を支援する場所でエージェントを活用すべきだ。
ブランド企業の経営幹部の54%が、チャネルやシステム間でのデータ連携に依然として課題があると報告している。製品情報やポリシーに関する「正しいデータ」をシステム間で一致させ、エンドツーエンドでのテストを徹底することが不可欠となる。
AIを活用して利便性を高め、摩擦を排除する。ブランドならではの創造性やオーセンティックな表現を維持し、独自性を際立たせることが重要である。
経営幹部の51%が「AIの専門知識が限られていること」を課題に挙げている。内部能力を強化し、AIを責任を持って効果的に拡張するための戦略的なパートナーシップを構築する必要がある。
「AIの影響を理解し、消費者の意思決定を形作ることができるかどうかが、今後の小売業界における競争優位性の焦点となる」と、IBMは述べている。
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