AIエージェントはセキュリティ運用の未来をどうけん引するかGartner Insights Pickup(433)

AIベースのソリューションをあらゆる脅威の検知、調査、対応に役立てようとしている企業は少なくない。人員不足が叫ばれる昨今、AI SOCエージェントが重要な役割を果たそうとしている。本稿では、AI SOCエージェントを適切に導入するためのポイントを紹介する。

» 2026年02月06日 05時00分 公開
[Craig Lawson, Gartner]

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 企業は「脅威の検知、調査、対応を、より少ない人員で拡大しなければならない」というプレッシャーの高まりに直面している。こうした中、AIベースのソリューションをこの難題の解決に役立てようとしている企業が多い。

 同時に、脅威がますます複雑化する中、セキュリティオペレーションセンター(SOC)には、人間が対応できる限界を超えて進化し、補完することが求められている。

 そこで、AI SOCエージェントが重要な役割を果たし始めている。これらのエージェントにより、企業は脅威管理ライフサイクル全体を管理できるからだ。

 だが、「完全な自律性を備え、ボタンを押すだけで使える」ソリューションといったうたい文句で宣伝され、もてはやされているものの、AI SOCエージェントの市場は、まだ初期段階にある。既に、巨額のベンチャーキャピタル資金を調達したスタートアップ(新興企業)が多数参入。それぞれ異なるアプローチと設計原理を採用しているため、実際の価値と過剰な宣伝を見分けることがこれまで以上に難しくなっている。

 Gartnerは2028年までに、大規模SOCの70%が運用を強化するためにAIエージェントを試験導入するものの、体系的な評価なしに測定可能な改善を達成するのは15%にすぎないと予測している。

 AIエージェントがセキュリティ運用を変革し、ワークロードを軽減する可能性は確かにあるが、それが現実のものとなるには厳密なアプローチで取り組み、成果重視の評価をすることが不可欠だ。

 AI SOCエージェントの真価を引き出すには、宣伝文句をうのみにしてはならない。急速に進化するこの分野では、これらのエージェントのパフォーマンス、既存システムへの統合機能、測定可能な成果の達成方法を慎重に評価した上で、戦略的決定を下す必要がある。

 AI SOCエージェントを適切に導入すれば、人間による監視を維持しながら、SOCの稼働の自律性を高め、企業のレジリエンス(回復力)向上につなげられる。

セキュリティ運用の変革

 現在、セキュリティチームは手いっぱいの状態だ。アナリストはアラートの処理に追われ、絶え間なく発生する脅威に対応しきれていない。こうした状況から、AIはもはや単なるツールではなく、チームの不可欠な要素となっている。

 AI SOCエージェントは、サイバーセキュリティにおける新たな自動化の波を象徴している。既存の自動化ツールを補完し、単なる検知やトリアージだけでなく、自ら行動し、進化する脅威から学習し、変化する環境に適応し、人間のアナリストと連携する。

 AI SOCエージェントは自然言語クエリを解釈し、リアルタイムの脅威インテリジェンスでアラートにコンテキスト(文脈)を付加し、調査中に次のステップを推奨する。これらにより、企業がセキュリティ運用を機械的な速度と規模で管理できるように支援する。

 多忙なセキュリティチームは、既にこうしたAI SOCエージェントの恩恵を受けている。大量のタスクの自動化によって手作業の負担が減り、アナリストは複雑な調査と戦略的優先事項に集中できる。さらに、これらのエージェントはプロセス全体で一貫性を高め、人間のスキル不足を補う。エージェントが蓄積した自社の知見に基づいて、経験の浅いチームメンバーもより複雑なタスクをこなせるようになっている。

 だが、このように急速に導入が進んでいるものの、「AI SOCエージェントは、セキュリティ運用に関する人間の専門知識・ノウハウを完全に代替する」というのは幻想だ。今行われていることは、人間とAIエージェントのコラボレーションだ。AIエージェントは自律的な代替手段としてではなく、強力なファシリテーター(伴走者)として存在感を増している。セキュリティ運用の未来は、AIによる強化と、熟練した専門家の判断を、企業がいかに融合させるかによって形作られる。

慎重なアプローチ

 AI SOCエージェントについては、厳格に評価すべきだ。現在の初期段階の市場では、ベンダーはしばしば過剰な約束をするからだ。AIエージェント以外の技術をAIエージェントであるかのように売り込む「AIエージェントウォッシング」も見受けられる。実際の条件でパフォーマンスをテストし、ベンダーの主張を検証することが重要だ。自社の環境で概念実証をすれば、有効性と効果について結論が得られる。

 完全な自律性も、現時点では非現実的だ。AIエージェントはセキュリティ運用を強化できるが、人間のセキュリティアナリストに取って代わることはできない。タスクによっては、AIによる強化の恩恵を大きく受けるだろう。だが、複雑な意思決定には人間の監視が依然として不可欠だ。Gartnerは、2027年までにSOCの45%が、AI脅威検知技術を自社で開発するか、購入するかの決定を再検討し、アナリストの能力向上に重点を置くと予測している。

 隠れたコストも課題となり得る。料金モデルが従量制であるか、あるいはユーザー側がAIを用意する必要があるかもしれない。運用需要の増加時に、特定の機能の使用に上限や制限が課される可能性もある。

 さらに、既存ツールとの相互運用性が低い場合や、ワークフローの効率が悪い場合は、セキュリティ運用に新たなサイロが発生する恐れがある。ベンダーが特定の製品セットのみをサポートしているのであれば、コストが高くつく全体的な再設計が必要になることもある。

導入の始め方

 AI SOCエージェントの導入前に、まずスコープとガバナンスを定義する。エージェントがより多くの運用タスクを担っても、監視を維持できるように、自律性に委ねる境界、エスカレーションワークフロー、監査証跡要件を確立しておく。

 全ての投資は、平均対応時間(MTTR:Mean Time To Respond)および平均封じ込め時間(MTTC:Mean Time To Contain)の改善、誤検知の削減、アナリストの作業負荷の軽減など、測定可能な成果に結び付ける必要がある。ベンダーと契約する前に、自社と同様の環境で、ベンダーの製品やサービスが運用を改善した実績を示すようベンダーに求めるとよい。

 また、急速に進化するAI SOCエージェント市場では、ベンダーの存続可能性が極めて重要だ。ロードマップと財務の安定性について透明な情報提供をしており、自社に似た企業での成功実績を持つベンダーを優先すべきだ。ベンダー選定は、広範なリスク管理戦略の一環として位置付ける必要がある。

 最優先事項はシームレスな統合だ。AI SOCエージェントは、既存のセキュリティスタックとシームレスに連携しなければならない。無用な複雑さを招いたり、スタッフの大規模な再教育を伴ってはならない。

 意思決定を下す前に代替案を検討することも必要になる。現行プロバイダーによる自動化の強化が、当面のニーズを満たす可能性もある。運用AI機能を大きな混乱なく提供する、マネージドサービスも選択肢になる。リソースが許せば、カスタムツールのプロトタイピングが有効かもしれない。

 ガバナンス、測定可能な成果、統合に焦点を当てることで、大げさな宣伝に惑わされることなく、AI SOCエージェント投資から真の価値を引き出すとともに、セキュリティ運用全体にわたってレジリエンスを確保できる。

出典:How AI agents are driving the future of security operations(Gartner)

※この記事は、2025年12月に執筆されたものです。

筆者 Craig Lawson

VP Analyst


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