「バイブコーディング」という言葉が生まれてから1年。さらに大きく変化しつつあるAI開発スタイルに、あらためて名前が与えられた。それはどんな考え方で、どんな開発なのか。なぜ今、その言葉が必要とされているのか。
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2025年に急速な広がりを見せ、AIに「こんな感じで」というノリ(vibe)でプロンプト(指示文)を投げるだけで、誰もが動くものを作れるという感覚を社会に浸透させたのが、「バイブコーディング(Vibe Coding)」である。この言葉は、多くの人にプログラミングの在り方が大きく変わりつつあることを強く意識させた。
しかし2026年に入り、その流れは終わるどころか、さらに“先”へと進みつつある。プロフェッショナルなAI活用開発の在り方として、「エージェンティックエンジニアリング」という概念が急速に言語化され始めているのだ。しかも、その呼び名を提示したのは、ちょうど1年前に“バイブコーディング”という言葉を生み出したアンドレイ・カルパシー(Andrej Karpathy)氏自身である。
エージェンティックエンジニアリング(Agentic Engineering)とは、AIにコード生成を任せきるのではなく、人間が設計や評価といった上位工程を担い、その下で複数のAIエージェントを統制する開発スタイルである。
この考え方に呼応するように整理を行った一人が、Google Cloud AIのディレクターであるアディ・オスマニ(Addy Osmani)氏だ。同氏は、バイブコーディングの手軽さを評価しつつも、それだけでは保守性や品質を担保できないと指摘し、設計・レビュー・反復といった“プロの工程”をAI時代に再構成する必要性を説いている。
――ここからは『Deep Insider Brief』恒例の“ひと言コメント”として、今回の動きが示す技術の“今”をもう少し掘り下げていく。オスマニ氏の整理を軸に、エージェンティックエンジニアリングの全体像と、その開発の進め方を見ていこう。
Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。
最先端でClaude CodeなどのAIコーディングを追いかけている方なら、Claude Opus 4.6で導入された「エージェントチーム」などを通じて、複数のAIエージェントを統制する開発スタイルを、既に試し始めているかもしれません。ただ、これまでこうしたやり方には、はっきりとした名前がありませんでした。
そこに対して、カルパシー氏があらためて言葉を与えた、というのが私の受け止め方です。“バイブコーディング”ほど派手に広まっているわけではありませんが、AIエージェントを組み合わせて開発を進めるこのスタイルは、今後「エージェンティックエンジニアリング」(あるいは「エージェント型エンジニアリング」)という呼び名で定着していく可能性は高いと感じています。
実際、GLM-5という新しい言語モデルでは、「バイブコーディングからエージェンティックエンジニアリングへ」という開発スタイルの転換が明確に意識されています。こうした動きを見ていると、この言葉を耳にする機会は、今後じわじわと増えていきそうです。
著名な開発者であるサイモン・ウィリソン(Simon Willison)氏もブログでこの考え方に触れています。同氏は恐らくベンチマーク(性能評価)目的で「ペリカンが自転車に乗っているSVG画像を生成する」というプロンプトでバイブコーディングを行ったものの、ペリカンはまずまずだが自転車のフレームは残念な画像になったと述べています。AIは「それっぽいもの」を作るのは得意ですが、物理的な整合性や構造の妥当性まで含めて成立させるには、やはり人間の「設計の目」が欠かせません。
「AI時代にソフトウェアエンジニア(開発者)は不要になる」という極端な見方もありますが、現実にはその逆で、設計や品質に対する高い審美眼を持つエンジニアの価値は、むしろ高まりつつあるのかもしれません。エージェンティックエンジニアリングは、2026年以降の現場において、そうした役割を担うための重要な考え方/開発スタイルになっていくのではないでしょうか。ぜひ皆さんも、この記事をきっかけにこの言葉を覚えていってください。
以下では、Addy Osmani氏がブログ記事「Agentic Engineering」で述べている内容を基に、エージェンティックエンジニアリングの考え方を整理する。
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