AgentforceのエージェントはApexコードを書かなくても構築できます。作り方を知るためには、自分で手を動かしてみるのが一番です。今回はシンプルなエージェントの実装方法をステップ・バイ・ステップで紹介します。
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*本連載はNTTテクノクロスのブログ「Salesforce MVP 鈴木貞弘の『Agentforce 匠指南』シリーズ」を再編集して掲載するものです。
本連載の第2回では、Agentforceの内部構造であるアーキテクチャを解剖しました。理論的な理解が深まったところで、今回は皆さんと一緒に「手を動かすステップ」へと進んでいきます。
コミュニティーでよく聞かれるのは、「仕組みは分かったけれど、結局どうやって作ればいいの?」という声です。私はこれまで多くの企業でSalesforceの導入を手がけ、数々の「Trailblazer」(Salesforceを使い革新に挑戦する人々)と交流してきました。その経験から、成功と失敗を分けるのは知識だけでなく、「正しい手順で実際に作ってみる」という実践だと考えています。
今回は、皆さん自身がAgentforceの「匠」になるための第一歩として、最も一般的なユースケースである「顧客サポートエージェント」を例に、具体的な実装ステップを解説します。Apexコードを一切使わず、Salesforceの標準機能だけでエージェントを構築する方法に焦点を当てます。
最新のAgentforce 3では、2025年8月にリリースされた「Agentforce Command Center」がフル活用可能になり、実行トレースの可視化と50%のレイテンシー低減が実現されたことで、テストやデバッグが格段に容易になっています。これらの最新機能を活用しながら、実践的な実装方法を学びましょう。
いきなり作業を始める前に、実装プロセス全体を俯瞰(ふかん)しましょう。Agentforceの構築は、以下のシンプルなステップで進めることができます。
環境設定 Agentforceを有効化し、必要な権限を付与する
トピックの定義 エージェントに実行させたいタスクを定義する
アクションの作成 トピックにひも付くアクションをフローで作成する
テストとデバッグ 構築したエージェントが意図通りに動くかどうかテストする
ここでは、お客さまから問い合わせがあった際に、状況を確認して回答するシンプルなAgentforceエージェントを構築します。このエージェントは、Salesforceのフロー(「Flow」)機能と連携し、Apexコードなしで動作します。Flowとは、Salesforce上で業務プロセスを自動化するためのツールで、条件分岐やデータ取得、通知などの処理を組み立てることができます。
シナリオ:顧客が「ケースの状況を教えてください」と発話すると、Agentforceがケース番号を尋ね、フローを起動してケースのステータスを返答する。
まず、Agentforceの有効化と権限セットの割り当てを行います。
Agentforceの有効化 「設定」から「Agentforce」を検索し、「エージェントを有効化」にチェックを入れます。
権限セットの割り当て 関連するユーザーに「Agentforceユーザー」権限セットを割り当てます。
「ケース状況の確認」という意図をエージェントが理解できるように、トピックを定義します。
トピックの作成「Agentforce」設定画面から「トピック」タブを開き、新しいトピックを作成します。
Apexコードの代わりに、Salesforceのノーコードツールであるフローを使ってアクションを定義します。
フローの作成 「設定」から「フロー」を検索し、新しい「画面フロー」を作成します。
要素の追加 入力画面に、ユーザーにケース番号を入力させるための「テキスト入力」コンポーネントを配置し、入力値を変数に格納します。
レコードの取得 入力されたケース番号に一致する「ケース」レコードを取得します。
出力画面 取得したケースの「状況」(Status)を表示します。
Agentforce連携アクションの作成 作成したフローをAgentforceと連携させます。
Agentforceのテストコンソールで、実際に発話例を入力してみます。「ケースの状況を教えて」と入力し、フローが起動してケース番号を尋ね、最終的に状況を正しく返答するかどうかを確認します。Agentforce 3のCommand Centerを活用すれば、実行ログをリアルタイムで監視でき、もしエラーが発生しても、どのステップで問題が起きたかを素早く特定できます。
私の経験とコミュニティーでの交流から得られた、実装でつまずかないための5つのポイントを共有します。
トピックの重複を避ける 似たような意図を持つトピックが複数あると、エージェントが混乱します。トピックを設計する際は、その役割を明確に定義し、重複がないように心がけましょう。
フローはシンプルに 1つのフローに複雑なロジックを詰め込みすぎないことが重要です。機能を細かく分割し、再利用性を高めましょう。
発話の例を充実させる できるだけ多くの発話例を追加することで、エージェントの理解度が向上します。ユーザーが使いそうな言葉を想像して、多様なバリエーションを登録しましょう。
まずはスモールスタート 最初から大規模なエージェントを構築するのではなく、小さなタスク(例:今回のケース状況確認)から始めて、成功体験を積み重ねることが大切です。
テストを習慣化する 機能を追加するたびに、必ずテストを行いましょう。特に、Command Centerを活用したデバッグは、問題の早期発見に非常に有効です。
今回は、Apexコードを使わずに標準機能だけでAgentforceエージェントを構築する方法を解説しました。これで皆さんも、ノーコードでAgentforceの世界に飛び込めるはずです。
次回、第4回は本稼働後に直面する可能性のあるパフォーマンスやデバッグの課題について、具体的な解決策を私の経験を交えて解説します。どうぞお楽しみに!
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