SD-WANの次は、次世代LAN? キャンパスNaaSが告げる「ネットワークは所有しない」時代NaaSで変わる企業ネットワーク(1)

企業ネットワークの在り方は、クラウドやAIといった技術の利用とともに大きく変わりつつあります。特に企業ネットワークの分野において注目動向の一つになるのが、NaaS市場の発展です。NaaSの基本概念から成長トレンド、そして成長が著しい「キャンパスNaaS」の現状までを探ります。

» 2026年04月21日 05時00分 公開

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

 クラウドの普及とAI(人工知能)の劇的な進化に伴い、企業のネットワーク管理や運用の方法は大きく変化しています。特に、ネットワークインフラをサービスとして提供する「NaaS」(Network as a Service)の概念が登場してきたことにより、今後さらにその変化は顕著になっていくと予想されます。企業のITシステムを支えるネットワークインフラは、長年にわたりハードウェア中心の資産集約型モデルで運用されてきました。NaaSの台頭は、従来型のネットワークアーキテクチャを再定義していく可能性を秘めており、次世代のネットワーク基盤として注目を集めています。

 本稿では、NaaSの概念を深掘りし、WAN(Wide Area Network)とLAN(Local Area Network)領域におけるNaaSの違いを理解するとともに、グローバル市場における成長性と今後の発展可能性についても論じていきます。

NaaSとは何か――ネットワークを“サービス”として再定義する

 NaaSとは、Network as a Service(サービスとしてのネットワーク)の文字通り、ネットワークインフラとその機能(サービス)をサブスクリプション型のクラウドベースで提供する新しいアプローチです。従来、企業は自社でルーター、スイッチ、ファイアウォールといった物理的なネットワーク機器を購入し、IT部門に専門人材を配置して自社で運用管理を行ってきました。NaaSはこのパラダイムを根本から転換し、ネットワーク機能を必要に応じて利用可能なサービスとして提供します。

 NaaSの代表的なサービス形態としては、主にWANの領域で先行して発展し、「WAN as a Service」として知られています。いわゆる「SD-WAN」(Software-Defined WAN)や「SASE」(Secure Access Service Edge)といった技術やアーキテクチャにより、企業の拠点間接続やインターネット接続に関わる機能(接続性・帯域幅・QoS<Quality of Service>・セキュリティなど)をサービスとして提供するモデルで、既に多くの日本企業でも導入が進んでいます。

 こうしたNaaSの特徴として、以下の7つの要素が挙げられます。

1.オンデマンドでのプロビジョニング(使用可能な状態に配備すること)により、必要に応じてネットワークリソースを即時に利用可能にする

2.ネットワークのパフォーマンスやトラフィックの可観測性を提供し、問題を早期に検知、解決に導く

3.自動化により、手動での設定作業などを極力削減して、導入や運用業務を容易にする

4.利用期間に応じてサービス料金を支払うサブスクリプション型、利用量に応じて料金が発生する従量課金モデルなどでサービス提供される

5.マルチクラウド対応により、複数のクラウドやオンプレミス環境と連携または統一的に管理を可能とする

6.統合されたセキュリティ機能により、ゼロトラストアクセスや脅威検知などを包括的に提供する

7.サービスレベル保証(SLA)により、稼働率やレイテンシといった品質基準を設け、安定稼働を保証する

 つまりNaaSとは、「ネットワーク機器を資産として購入または保有することはせず、ネットワーク全体をソフトウェア定義されたサービスとして抽象化し、ビジネスニーズに応じて柔軟に利用できるネットワークインフラ」だと表現できます。

 クラウドというプラットフォームが「所有から利用へ」と言われるビジネスモデルを作り出したように、NaaSもまた固定化したネットワークインフラへの投資ではなく、利用に応じたネットワークリソースに対価を支払う「消費ベース」のビジネスモデルへシフトしています。

NaaSの成長トレンド

 NaaSは、グローバル市場において急成長を続けており、複数の市場調査レポートからその成長率をうかがい知ることができます。市場調査会社Future Market Insightsのデータでは、2025年時点の213億ドルから、2035年までには2693億ドル(約42兆円)に成長すると予測されており、年平均成長率(CAGR)は28.9%に達すると見込まれています。複数の調査会社のデータには多少の差異はありますが、いずれも成長率は25〜30%以上の極めて高い水準を示しています。

 NaaSのサービス分野別で見ると、SD-WANやSASEなどを含むWAN領域の「WAN as a Service」が大きなシェアを占めています。アプリケーションのSaaS(Software as a Service)化や、オンプレミスデータセンターのクラウド移行が進む中、「ローカルブレークアウト」や「リモートアクセス」などのニーズが拡大。それに伴って、SD-WANやSASEがNaaSとして提供されることが市場をけん引し、コロナ禍のテレワークの普及がそれをさらに加速させました。

 大企業から採用が始まったNaaSは、今後中小企業へ拡大していくものと見込まれています。IT人材が十分に確保することが困難な状況下で、進化するテクノロジーへの追随と安定した品質のネットワークへのアクセスを可能にするNaaSは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させたい企業にとっての有効な選択肢であることは間違いありません。

WANから「キャンパスNaaS」へ

 NaaSの中でも今後注目すべきは、LANの領域をNaaSとして利用する「LAN as a Service」、いわゆる「キャンパスNaaS」だと言われています。

 SD-WANやSASEが一定の認知を得たことで、日本市場においてもNaaSが知られるようになりましたが、一方で「キャンパスNaaS」については、まだ認知度が極めて低いのが現状です。企業内のオフィスや工場、大学のキャンパスなどの物理的な場所とそこに配置されたネットワーク機器で構成されるLAN環境をサービスとして抽象化すること自体が、WANに比べてイメージしづらいことが要因だと考えられます。

 しかしながら、キャンパスNaaSは今後のLAN市場をけん引する存在です。キャンパスNaaSについて多くのレポートを出しているDell'Oro Groupは、キャンパスNaaSの売上高は2028年までの5年間で急速に成長すると予測しています。

 近年、企業のLAN環境では無線化が進んでいますが、無数に点在する無線アクセスポイントの管理をクラウド型コントローラーで集中管理する形態が主流になってきています。これは、無線LAN導入後の設定変更や運用業務を全てリモートから実現可能な環境が整ってきたことを意味し、NaaSとしてのサービス利用型モデルへの進展の道筋を切り開いたことを示しています。

 従来のLAN環境は、物理的な制約に加え、各組織の複雑な要求に応じたセグメント設計などに縛られるため、サービス利用へ転換するという発想は乏しく、ユーザーの利用体験を満足させるために専任の運用要員を配置するなど、レガシーな運用手法から逸脱できない状況が続いていました。しかし、キャンパスNaaSによって、自動化された電波調整やバージョンアップ、監視、トラブル解決、資産管理に至るまで、運用管理業務全般をサービス利用という形に置き換えることが可能となりました。

 これは単なる技術トレンドではなく、ネットワークインフラの在り方を根本的に変えるパラダイムシフトが起こっていると言えるのではないでしょうか。

 次回は、キャンパスNaaSの本質的な価値について解説していきます。

著者紹介

吉田 繁晴(よしだ しげはる)

ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス開発本部 プロダクトマネジメント

エンタープライズ分野におけるセールスマネジメントを長年勤めた後、セキュリティサービス開発、米国にて新規商材の発掘・先端技術の動向調査に従事。現在は新規商材の日本市場向け事業創出を推進。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

その「AIコーディング」は本当に必要か?
Microsoft & Windows最前線2026
4AI by @IT - AIを作り、動かし、守り、生かす
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。