富士通は、数学関数演算の高速化技術に関する発明で、全国発明表彰の「内閣総理大臣賞」を受賞した。スーパーコンピュータ「富岳」や世界中のArmプロセッサ搭載サーバも支える、その技術の中身とは。
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富士通は2026年5月26日、科学技術計算向けの演算処理技術に関する発明が、「令和8年度全国発明表彰」(公益社団法人発明協会が主催)で「内閣総理大臣賞」を受賞したと発表した。受賞対象の発明は、主にスーパーコンピュータ向けの数学関数演算を高速かつ高精度に処理する技術だ。富士通は2009年に同技術を開発し、2013年に特許を取得した。
理化学研究所が富士通と共同開発したスーパーコンピュータ「富岳」や、その前身となる「京」が、今回の技術を搭載している。Armアーキテクチャ向けの拡張仕様にも採用されており、ハイパースケーラーを含む世界中の企業におけるArmプロセッサ搭載サーバで利用されているという。こうした活用を通じて、産業の発展に寄与している点が評価につながったと富士通は説明する。
今回の技術は、三角関数や指数関数、対数関数など、科学技術計算で多用される数学関数の処理を高速化する。その仕組みを整理しよう。
スーパーコンピュータでは、気象予測や地震・津波シミュレーション、自動車・航空機の流体解析、構造解析などで大量の数学関数演算が発生する。従来は既存命令を組み合わせたソフトウェア処理が中心で、演算時間が長くなることが課題だった。
数学関数演算を高速化するために、「CORDIC」(Coordinate Rotation Digital Computer)など、ハードウェアを活用した演算技術も検討されてきた。ただし既存技術は、反復処理によって速度が低下したり、科学技術計算に必要な演算精度を満たしにくかったりすることが課題だったと富士通は説明する。
富士通は、数学関数の演算手法である「テイラー展開」の前処理(数学関数を計算しやすい形に変換する事前処理)のうち、高速化しやすい部分をプロセッサ向けの専用命令としてハードウェアに実装した(図1)。これが今回の技術の中核となる仕組みであり、前処理に必要な命令数を約3分の1に削減したという(図2)。
今回の技術は、回路規模の増加を最小限に抑えながら、演算処理の高速化と演算精度の維持を両立させたと富士通は説明する。同技術はArmアーキテクチャ「Armv8」向けのベクトル演算拡張仕様「SVE」(Scalable Vector Extension)に採用され、その後は「Armv9」のSVEおよび「SVE2」(Scalable Vector Extension 2)にも標準採用されている。
富士通は2027年の提供開始を目指して開発中の、データセンター向け汎用(はんよう)プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」にも今回の技術を採用する。富岳の後継として、理化学研究所と共同開発を進める「富岳NEXT」(開発コードネーム)向けCPU「FUJITSU-MONAKA-X」(仮称)にも採用する計画だ。
科学技術の発展を目的とする全国発明表彰において、内閣総理大臣賞は最高位の「恩賜発明賞」に次ぐ賞に位置付けられる。今回は富士通の本藤幹雄氏が内閣総理大臣賞を受賞。同社代表取締役社長の時田隆仁氏(「隆」は、正しくは「生」の上に「一」が入る)が、発明の実用化を支援した企業代表者に贈られる「発明実施功績賞」を受賞した。
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