「AIが教えてくれたURL」が詐欺サイトにつながる――偽警察サイトでのディープフェイクや、生成AIを経由した悪質サイトへの誘導など、攻撃者は人が信頼するものを次々と攻撃の入り口に変えている。個人を狙うサイバー攻撃の最新動向と対策を解説する。
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トレンドマイクロは2026年8月20日、2026年上半期(1〜6月)における国内の脅威動向をまとめた「個人セキュリティ脅威動向レポート 2026 上半期」を公開した。同社の観測データと独自調査から、詐欺の誘導経路や手口が変化している実態が明らかになった。
特に目立つのが、これまで攻撃の入り口として使われてきたWeb広告や悪意あるWebサイトに加え、メールやSNS、さらには生成AIまでが誘導経路になっていることだ。
トレンドマイクロのサポートセンターに寄せられたテクニカルサポート詐欺の相談件数は、2026年上半期に5499件となり、前年同期比で約2.5倍に増加した。偽警察詐欺では、警察機関を装った偽サイトにWebブラウザで動作するビデオ通話機能を組み込み、ディープフェイク映像で捜査員との通話を演出する手口も確認されている。
さらに、利用者が「正しい情報を教えてくれる」と考えがちな生成AIが悪質サイトへの誘導につながる事例や、AIエージェントにWebページ上の不正な指示を読み込ませ、本来の設定とは異なる購買行動を取らせる攻撃も実証された。
今起きているのは、単に「詐欺の手口が巧妙になった」というだけではない。攻撃者は、人が信頼するものそのものを新たな攻撃経路として利用し始めている。個人を狙うサイバー攻撃の現在地と、取るべき対策を解説する。
PC画面に偽のセキュリティ警告を表示し、記載された電話番号に連絡させて金銭をだまし取ったり、遠隔操作ソフトを導入させたりする「テクニカルサポート詐欺」では、攻撃の入り口に変化が見られた。
従来は不正広告や悪意あるWebサイトから別のサイトに誘導する手法が中心だったが、2026年上半期には、メールを起点とする大規模な誘導キャンペーンが拡大した。
トレンドマイクロのサポートセンターに寄せられた相談件数は5499件で、前年同期の約2.5倍に達した。2026年上半期のうち、同社が観測した165日間では、偽警告サイトへ誘導するメールを約1338万通確認。1日平均では約8万1000通に上る。
宛先の約94%は、日本の国別コードトップレベルドメイン「.jp」のメールアドレスだった。配信時間帯は日本時間の9〜21時に集中しており、国内の利用者を意識した大規模なキャンペーンだったことがうかがえる。
メールから誘導される偽警告サイトは3万3000件以上確認され、その約9割は構築から1日程度で廃棄される使い捨て型だった。攻撃基盤には正規のパブリッククラウドが提供する静的Webホスティング機能も悪用されており、正規サービスやドメインに対する信頼を利用してセキュリティフィルターによる検知を回避しようとしていた。
一方、使い捨ての偽サイトとは対照的に、攻撃者が用意した連絡先には集約傾向が見られた。
同社が4721件の偽警告サイトを分析したところ、Webサイトに記載されていた電話番号は11個に集約されていた。1つの電話番号が数千件の使い捨てサイトで使い回されるケースもあり、Webサイト自体は短期間で廃棄しながら、電話番号など一部のインフラを共通利用する攻撃者の姿が浮かび上がる。
このような電話番号の集約は、攻撃基盤の追跡や遮断に利用できる可能性がある。
誘導メールの内容にも変化があった。2026年4月中旬からは大手EC(電子商取引)サイトや国税庁からの通知を装うメール、5月以降には「人事評価の通知」といった組織内の連絡を装うメールも確認されている。後者は特に、業務で利用する端末からアクセスしてしまう可能性がある。個人を狙った詐欺であっても、企業の業務環境が入り口になる点には注意が必要だ。
SNS型投資詐欺では、攻撃者側の分業化も進んでいる。
トレンドマイクロの調査では、攻撃は「誘導」「信頼構築」「架空取引」「金銭要求」という4段階で進み、特に信頼構築には2〜3週間をかけるケースが確認された。
詐欺グループはコミュニケーションアプリ「LINE」のアカウントを使い分け、それぞれ異なる役割を担っていた。
つまり、1人の詐欺師が全てを演じるのではなく、複数の役割を分担しながら、時間をかけて対象者を信用させる。
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