ランサムウェア被害は過去最多 警察庁が明かした2026年上半期の異変最も狙われる初期侵入経路も判明

警察庁は「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」を公表した。最近のサイバー脅威状況をまとめたこの調査によると、国内のランサムウェア被害は過去最多となった。判明した攻撃手法の最新動向とは。

» 2026年09月17日 13時00分 公開
[@IT]

 警察庁は2026年9月10日、昨今の脅威情報をまとめた「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」を公表した。

 政府機関や大手製造業者では情報窃取を目的としたサイバー攻撃が発生し、研究機関などでも不正アクセスが相次いだ。警察庁が検知した脆弱(ぜいじゃく)性探索などの不審アクセスは、1日・1IPアドレス当たり1万3687件に達し、前年同期比50.7%増となった。

 また、国内におけるランサムウェアの被害報告は123件で、統計を開始した2020年下半期以降、半期では過去最多となった。「どのような業界が」「どの侵入経路」から狙われているのだろうか。

国内ランサムウェア被害は半期最多 最も狙われた初期侵入経路は?

 今回の情勢で注目したいのは、単純な攻撃件数の増加だけではない。攻撃側が利用するインフラを短期間で切り替えている実態も明らかになった。

 サイバー特別捜査部が約36万件のフィッシングメールを分析したところ、送信元サーバの所在国は中国が45%で最多となり、日本、ブラジルが続いた。

 多くの送信元IPアドレスでは、1〜3日の限られた期間に1〜3通のフィッシングメールしか確認されなかった。警察庁は、攻撃側がメール送信用インフラを短期間で切り替える傾向を確認している。

 攻撃者が同じ送信元を長期間使い続けるとは限らない以上、個々のIPアドレスやドメインを遮断するだけでは追い切れないケースも考えられる。攻撃インフラそのものが使い捨てられる状況は、フィッシング対策を考える上でも無視できない。

 国内でのランサムウェア被害報告は123件となった。データを暗号化して復号の対価を求める従来型の手口だけでなく、データを窃取した上で公開を予告し、金銭や暗号資産を要求する被害も確認された。企業活動が長期間阻害され、国民生活に影響した事例も発生している。

 123件の内訳としては企業規模で見ると、中小企業が79件、大企業が31件、団体などが13件だった。また、業種別で見ると、製造業が37件、卸売・小売業が15件、情報通信業が9件、不動産業・物品賃貸業が9件、医療・福祉が9件、建設業が8件、その他が36件だった。

ランサムウェア被害企業・団体等の規模別・業種別件数(出典:警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」)

 ランサムウェア被害企業に聞いたところ、被害に関する調査費用、復旧費用が高額化しており、復旧に総額1000万円以上を要した組織の割合は全体の6割を占めている。復旧に要した期間については、1カ月未満で復旧した組織の割合は全体の5割弱にとどまるなど、被害が長期化する傾向にある。

ランサムウェア被害からの復旧期間や費用(出典:警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」)

 侵入経路についてランサムウェア被害組織に聞いたところ、VPN機器が約5割を占めた。直近ではランサムウェア被害かどうかは判明していないものの、デジタル庁の不正アクセス事案では、VPN機器の脆弱性を突かれて侵入されたことが報告されている。同機器の脆弱性については以前から攻撃のきっかけとして度々指摘されているが、企業側での対策はなかなか進んでいない。

対処すべきはランサムウェアだけではない 盗んだ金を洗浄する業者も

 この他、同発表では、SNSやメールを悪用したフィッシング詐欺・ニセ社長詐欺、インターネットバンキング不正送金などインターネット利用犯罪の認知件数は3万838件で、前年同期比30%増となったことも触れられている。

 また、サイバー犯罪の検挙件数7607件のうち、暗号資産を利用したマネーローンダリング関連の犯罪は1945件で37%増となり、全体の約25.5%を占めた。

 こうした活動を抑止する取り組みとして、警察庁は2026年6月、ユーロポール(欧州刑事警察機構)を中心とした国際共同捜査で、暗号資産のミキシングサービス「AudiA6」の管理者とみられるロシア国籍とウクライナ国籍の2人の逮捕に協力した。各国当局はAudiA6のWebサイトをテイクダウンし、資産凍結も実施した。関東管区警察局サイバー特別捜査部は、関係国から提供されたサーバデータを復元するなどして、犯行実態の解明に貢献した。

 AudiA6は、犯罪グループが暗号資産の資金移動を追跡されにくくするために利用していたミキシングサービスとされる。ランサムウェアなどで得られた犯罪収益を洗浄するための「犯罪インフラ」の一つだった。

 この他、サイバー特別捜査部に来た暗号資産追跡依頼は1307件で、前年同期比25%増となった。攻撃者が得た資金を追跡し、犯罪インフラを断つことも、サイバー犯罪への対処では重要な要素になっている。

サイバーセキュリティ向けの予算は増額傾向 激化する脅威に対処

 警察側の体制も変更予定だ。警察庁は2026年5月29日に警察法施行令を改正し、都道府県警察でサイバー警察事務を一元的に所掌する組織の設置に向けた準備を進めている。

 2026年度当初予算では、サイバー空間の脅威への対処に66億7900万円を計上した。前年度の56億9200万円から増額となっており、サイバー対処能力の強化やアクセス・無害化措置の実施環境の整備などを進めるという。

 さらに、2026年10月1日にはアクセス・無害化措置の施行が予定されている。警察庁はAIを活用したセキュリティツールを含む準備も進めているという。

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