では、Connection Coordinator APIはどのように使われるのか。
例えばAWSからGoogle Cloudに接続する場合、ユーザーはAWSの管理コンソールで接続先としてGoogle Cloudを選択する。続いて双方の接続リージョンや帯域を指定し、Direct Connect Gatewayなどを設定する。AWSから発行されたActivation KeyをGoogle Cloud側に入力すれば、接続設定を進められる。
ユーザーの操作はシンプルだが、裏側ではクラウド間でさまざまなリクエストや設定情報のやり取りが行われる。
Connection Coordinator APIを介して、ASN、MTU、VLANなどのパラメーターを提示し、接続条件を調整する。帯域についても、必要なチャネル数などの条件を基に接続可否が決まる。
レイヤー2レベルの通信保護にはMACsecを設定する。クラウド側で鍵の生成や交換、ネットワーク機器への設定を行うため、利用者が手動で鍵を管理・定期更新する負担を減らせる。
なお、帯域については、リアルタイムに物理回線の容量を交渉するのではない。クラウド間で、このAPIを利用した接続サービスに提供できる総キャパシティについてあらかじめ合意しておき、その範囲内で個々の接続に利用可能な帯域を決める仕組みだ。
接続先で必要な帯域を確保できない場合は、管理コンソールで利用可能な選択肢として提示されない、あるいは接続先からエラーが返されるといった仕様になっている。
では、Connection Coordinator APIはなぜAI時代に必要になるのか。関係者の説明を整理すると、主に次のような理由がある。
主要クラウドやGPUaaS、データセンター事業者は、それぞれ異なるAIリソースやサービスを提供している。LLM、GPUなどのアクセラレーター、データベースなどを、それぞれ得意な事業者から調達し、組み合わせて利用するマルチクラウド構成が考えられる。
LLMの事前学習・ファインチューニング用データ、RAG(検索拡張生成)で利用するナレッジベース、リアルタイム推論に必要なデータなどをクラウド間で転送・同期する場合、インターネット経由では帯域や遅延、セキュリティの面で課題が生じる可能性がある。大容量データを扱うAIワークロードでは、広帯域なプライベート接続が重要になる。
従来のように回線の調達や接続設定に数週間を要すると、AIプロジェクトの開発スピードに追い付けない可能性がある。API経由で、例えば学習時には大きな帯域を確保し、処理が終われば縮小するといった、AIワークロードに応じた柔軟なインフラ運用も考えられる。
Connection Coordinator APIは、こうしたクラウド間接続の構築・変更プロセスをAPIによって簡素化し、固定的なネットワークインフラをより動的に利用できるようにするものだ。AIによってインフラの利用形態が変化する中で、ネットワークもまた「事前に構築して固定的に使うもの」から、「必要なときにAPIで構成するもの」へと変わろうとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.