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それは本物の失敗じゃないプログラマ社長のコラム「エンジニア、起業のススメ」(11)(2/2 ページ)

「失敗から多くのことを学びました」「私が成功したのは、失敗のおかげです」いやいや、失敗はそんな甘美なものではない。本物の失敗とはね……。

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 翌日私は会議室に呼び出され、親友と2人の上級管理者から解雇を通告された。

 今すぐオフィスから去るようにと命じた彼らの説明によれば、「君が上げた業績には非常に感心した。だが、皆が君とは一緒に働きたくないと言っている」。実際のところ、開発者の多くは私と楽しく仕事をしていた。しかし私は、上層部の多くから反感を買っていたのだ。

 販売開始を祝う前に解雇され、私はすっかり打ちのめされてしまった。2年かけて最高に誇れる製品を作ってきたつもりだったのに、それをはぎ取られてしまい、困惑と激しい怒りを覚えた。

 一番つらかったのは、「親友は正しかった」と最終的に私が悟ったことだ。

 実績がどうであれ、私は企業文化に合わせようとしなかった。そして企業は、個人の要望に応えるために何かを変えたりはしない。発売翌日に私をクビにすることで、組織の調和を守ることと、素晴らしいソフトウェアを構築することの両方を会社は実現させた。彼らは望むものを全て手に入れた。

 そのソフトウェアは、拡張し続け利益を上げている。しかし、私の名前がそのソフトウェアに付け加えられることは決してない。

 ここから何かを学んだとすれば、「自分が設定したゴールと優先事項が、他のメンバーと本当の意味で協調したものかどうかをよく確かめる必要がある」ということだ。皆がプロジェクトの成功を第一に望んでいるとは限らない。誰かはあなたが思っているよりも、仲間意識や社会の安定の方を優先させているのかもしれない。

困難な事態を収拾する

 典型的な失敗例として、プライベートな経験を紹介した。これらの失敗は、私にとって唯一でもないし最悪のものでもないし、こういうことを経験してきたことについて、称賛されたいとか同情されたいとかいう気持ちもない。これらは単に、起こった出来事というだけだ。称賛を受けるべきは、何とかして逆境を乗り越えようとする人であり、同情の気持ちは、私よりもはるかに苦しみ、かつ同情されたい人のために取っておくべきだ。

 アントレプレナーになるということは、多くの人々がバカバカしいと思うことを喜んでやることだ。長きにわたって成功し、健全さを維持するためには、ときにはハッピーエンドで終われないこともある。できることは、困難な事態の収拾を図り、先へ進むことだけだ。たとえ、たった一人ででも。

 失敗には良い点もある。本当の失敗を乗り越えられたら、最後には必ず何らかの形で成功できる、ということだ。成功は、現在身を置くプロジェクトや会社、または立場でだけ得られるとは限らない。大切なのは、「何としても万事うまくやってのける」という一見不合理のように思えるような信念を持ち続けることだ。

 もしそれができれば、物事はきっとうまく行く。自分が思ったようにことが運ばないのが常だけれども、必ず何とかなる。

筆者プロフィール

Tim Romero(ティム・ロメロ)

Tim Romero(ティム・ロメロ)

プログラマーでありながら、もはやプログラミングをする立場ではなくなってしまったプログラマー社長。米国ワシントンDC出身、1990年代初めに来日。20年間に日本で4社を立ち上げ、サンフランシスコを拠点とする数社の新興企業にも関わってきた。現在はPaaSベンダーであるEngine Yardの社長として、日本の革新的なベンチャー多数の成功をサポートしている。

個人ブログ"Starting Things Up in Japan"


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