ちょっと変ないい方かもしれないが、今日の若いネットベンチャーの起業家たちは、先達がかつて受けた恩恵の多くを、今同じように受けている。戦後日本の産業復興をけん引した彼らのおじいさん世代が、1960年代〜70年代に享受した最も重要な恩恵と同じものだ。
その時代の日本については、世界中の経済学者や歴史学者が広く研究している。戦後日本の経済発展が成功した最も重要な要素の一つに、「大きいけれど守られた国内市場」があるという点については、広く意見が一致しているところだ。
今から50年前、企業間提携と政府規制の相乗で、外資系企業は著名なところ以外、日本市場に参入できなかった。このおかげで、国内の製造業者は製品を洗練させ、強い安定した企業へと成長してから海外進出することができたのだ。当時の国内市場は比較的小さかったけれど、時期が来ればいつでも確実に世界の大企業と肩を並べられたし、実際それをゴールにするほどに競争力がある市場だった。
50年間で実にさまざまな変化があった。経済成長のスピードは遅くなり、企業の系列に一時ほどの影響力がなくなり、政府は日本市場を広く開放して、今や外資系企業の成功は珍しくない時代になった。
このように変化したにもかかわらず、今のネットベンチャーは半世紀前に巨大企業が受けた利益、つまり国際競争から守られた大きな国内市場の恩恵を、根本の部分で同じように受けているのだ。
現在日本市場に参入している外資系企業は、規制や法律の壁に直面することが少なくなった。いくつかの例外はあるが、随分前にこういったハードルはなくなり、実際に今日本で会社経営を行うことは、米国で行うより多くの点ではるかにシンプルになっている。
一方で、日本特有の言葉や文化的な特徴は、日本市場に競争の場を求める外資系企業にとって依然難題である。日本市場を熟知した、日本に熱心な欧米企業でさえも、日本でビジネスを成功させるまでにあまりに経費と時間がかかることから挫折してしまうことが多い。
そのため、欧米の起業家の多くは大きな日本市場をパスし、より小規模でシンプルな欧州やオーストラリアの市場を狙う。豊富なリソースを注げるほどの大きさに成長するまで、日本企業との競争は何年もの間先送りにする。
結果、日本の小さな創業者チームは守られた国内市場で、起業し製品を洗練させて完全なものを作り上げることができているのだ。その後も欧米の競争相手が必要とするよりもはるかに少ない投資で組織的に会社を成長させ、安定した収入基盤を築き、ついには安定した日本企業として満を持して積極的に海外展開できるのだ。
この方程式はもうおなじみのものだろう。規模はかなり小さいながらも、50年前に十分に機能していたのと同じ式だからだ。楽天やグリー、ユニクロといった著名な企業だけでなく、日本に安定基盤を築いて今まさに世界進出しようとしているCerego Japanなど比較的小さい会社も、成功するためにその戦法を取り入れている。
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