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オラクルと富士通、クラウドで提携──富士通の国内DCからOracle Cloudを提供日本企業を積極支援、HCM導入促進の狙いも

オラクルと富士通がクラウドサービスで戦略的提携を行う。富士通の国内データセンター+K5でOracle Cloudを提供し、K5でもOracle Databaseを使えるようにする。

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 「これまでは製品の協業、今回は“サービス”の協業。クラウド時代のビジネスを加速させるための、本当の意味でのパートナーシップである」──。

 米オラクル及び日本オラクルと富士通は2016年7月6日、クラウドサービスで戦略的提携を行うことで合意したと発表した。2016年度第4四半期(2017年1月〜3月)早期の連携サービス開始を目指す。

photo 米オラクル 会長兼CTO(最高技術責任者)のラリー・エリソン氏も衛星中継で参加
photo 握手を交わす富士通 代表取締役会長の山本正已氏(写真=左)、日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏(写真=右)
photo 提携の狙いと目的

 提携内容は以下の3つ。まずは日本企業、及び海外拠点を持つ日本企業に向けてサービスを提供する。

今回の提携内容

  • (1)富士通の国内データセンターより、「Oracle Cloud」を提供する
  • (2)「Oracle Database Cloud Service」を、「FUJITSU Cloud Service K5」のオプションとして提供する
  • (3)「Oracle HCM Cloud」を富士通グループで採用/外販する


 (1)は、オラクルのクラウドサービス「Oracle Cloud」の環境を富士通の国内データセンターに設置し、Oracle PaaS(Platform as a Service)として展開するOracle Database Cloud Serviceを始めとするOracle Cloudのサービスを「海外にデータを出さず」に使えるようにするもの。富士通のクラウド基盤であるK5とのデータセンター内接続も実現し、物理的な通信遅延の課題を解消する効果も期待される。

 (2)は、K5へOracle Database Cloud Serviceをプロビジョニングできるよう、オプションメニューに加えた施策となる。K5のポータルから直接クラウド版のOracle Databaseを利用でき、かつ、ミッションクリティカル領域の顧客に必要とされる最上位エディション「Enterprise Edition Extreme Performance」も提供する。

 また、K5/Oracle Cloudいずれを使う場合においても「ワンストップ」のサポートが受けられる。窓口を統一したサポートデスクを設け、通常ならばK5/Oracle Cloudそれぞれに存在する管理ツール(ポータル)を1つにまとめた統合ポータルも用意するという。

photo 富士通の国内データセンターでOracle Cloudを提供し、かつ、K5でOracle Databaseを使えるようにする

 (3)は、Oracle HCM Cloudを富士通グループが全社的に採用し、かつ自社で培ったノウハウを含めて外販する、主力の販売パートナーになることを示す。HCM(Human Capital Management)とは、「事実に基づく意思決定」「社員のコンディションへの配慮」「隠れた優秀な人材の発掘や維持」といった人材管理と人事戦略を、データで得られ、裏付けされた知見を持って行うためのもので、オラクルはSaaS(Software as a Service)として提供している。例えば、「Aさんはこの力が優れているので、この部署が適している」「この部署のリソースが不足しているのが明らかだ」「プロジェクトマネジャーが何らかの不満によって移籍しそうだ。もし移籍したら損失はいくらなので、この施策でつなぎ止めよ」といったビジネスに必要な人材管理の分析などを行える。

 提携の背景には、日本企業の「クラウド化の慎重さ」「独自のシステムやSI(システムインテグレーター)を通じて開発したこと、海外にデータを出せない機密情報があることなどによる、クラウドへ移行しにくい事情」とともに、「グローバルと比べたクラウド化移行速度の鈍さ」などが挙げられる。日本企業向けのクラウドビジネスを早期に加速させたい両社の思惑が一致した。

photo K5でOracle Cloudが使えることによる顧客メリット

 富士通は、K5を包括するデジタルビジネスプラットフォーム「MetaArc(メタアーク)」で、従来のSoR(System of Record)領域に求められる高い信頼性と、今後必要とされるSoE(System of Engagement)領域のシステムに求められるスピードや柔軟性を両立するとうたっており、「日本企業の事情に合わせながら、ビジネスプロセスの革新や新ビジネスを創造する、デジタル革新をもたらすためのサポートをしていく」と述べている。

 実際、2015年12月に開始したK5の商談のうち、7割がSoR領域、5割は既存システムからの移行案件とのことだ。移行しにくい独自開発の基幹システムなどを抱えるために、簡単にクラウドに移行できない課題を、どう解決し、クラウド化していけばよいかと悩む企業からの需要が多いという。また、日本企業の情報システムで使われるデータベースの半分はOracle Databaseであるとされ、富士通はそれを含めたシステム開発をSIとして請け負い、管理してきた経緯、そして顧客からの信頼感がある。「これまで委託してきたところならば、信頼/安心できる。これまで通り依頼したい」。ここは日本企業ならではの需要の1つかもしれない。

photo オラクルが考える、協業メリット

 Oracle HCM Cloudの連携は、オラクルがグローバルでのクラウドビジネスで急成長させている、ERP(Enterprise Resource Planning:受注・販売管理システム)やSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理システム)なども含めたSaaS領域の、日本向け戦略の一環と想定される。HCMを活用した人事戦略は「日本企業ではまだ一般的ではないが、北米企業には既に受け入れられている」とエリソン氏。エリソン氏は、2015年4月に行われたOracle CloudWorld Tokyo 2015などでも、クラウドを活用した次世代の人材管理プロセスの重要性、そして「それが当たり前になる時代が来る」と説いていた。

 「日本企業も今後、クラウド化が進むにつれて(独自開発するのではなく、あらかじめ最適化された)“パッケージアプリ”を使うように変わってくるはずだ」(エリソン氏)

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