東京編:YOUは何しに奥多摩へ?――山の廃校で語学教育とシステム開発と地域活性化を模索する“くらげ”たち:ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(46)(4/4 ページ)
JELLYFISHは奥多摩の廃校を活用し、高度IT人材育成を目的とした学校を開校した。学校は同時にラボ型開発の拠点でもある。生徒たちは語学やエンジニアとして必要な思考力などを学び、同時にアルバイトとして開発経験も積む。ゆくゆくは自身のアイデアやプロダクトで地域活性化も狙う。
外国人エンジニアたちも奥多摩ビジネスも育ってほしい
開発ラボを仕切っている同社 開発事業部 阿南智明氏は、中学生までインドのニューデリーで育った。大学卒業後は留学やワーキングホリデーで海外暮らしが長く、IT企業ではブリッジSEとして経験を積んだ。生徒たちから見て、上司でありながら教師であり、兄貴でもある存在だ。
阿南氏自身、奥多摩での勤務を始めてまだ数カ月。都心に住んでいたが、八王子に引っ越した。奥多摩にも都内にも、どちらも出勤できるからだ。
現在の生活になってから「エンジニアの働き方」について考えるようになったという。都心に住み、通勤電車に揺られて出社し、コードを書くのが当たり前だと思っていたが、現在は満員電車とは無縁だ。自然豊かで静かな環境で開発に集中できるという。
阿南氏は、生徒たちは「開発のアルバイトとして力を発揮してくれている」とエンジニアとしての実力を認めている。それと同時に、「必死さが少し足りないかな」とはがゆさを感じることもあるようだ。
来日理由にアニメやマンガなどを挙げる彼らが日本のサブカルチャーを愛してくれるのはうれしいが、「それだけでは日本に移住して働く理由にならないでしょう?」と指摘する。海外に定住する決断の難しさを阿南氏は自身の経験から痛感している。
大好きなアニメやマンガがあふれる日本での生活に感激するのは無理もない。若いのだからなおさらだ。しかし、生徒たちはいずれ卒業する。楽しかったという「思い出」だけでは、もったいない。
生徒たちの卒業後の進路はさまざまだ。日本で起業を目指す生徒もいれば、帰国して母国に貢献したい生徒や、日本のIT企業へ就職したい生徒もいる。阿南氏は生徒たちが今後、エンジニアとして活躍できるのか気に掛けているようだ。
肥田氏は学生たちに、プロフェッショナルとしての意識を高め、ビジネスのセンスを磨き、開発スキルを磨き、ゆくゆくは出身国に影響を与えるような存在に育ってほしいと願っている。
語学学校としての教育ビジネスと人材育成、開発ラボとしての人材確保と生産性向上、OKUTAMA+としてのコミュニティー創造と地域活性化――くらげ(JELLYFISH)たちの山奥での挑戦。まだ始まったたばかりだが、いろいろな人の願いが交錯し、支え合い、育っていこうとしている。
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