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なぜ日本航空のパイロットは、ローコードでアプリを開発したのか:財政的な余裕はないが、時間と情熱があった(2/3 ページ)
2011年、1人のパイロットがローコード開発ツールでアプリの開発を始めた。客室乗務員もその後に続き、現在はさまざまなアプリが内製されているという。彼らはなぜ、アプリを自ら作ろうと思ったのか。その根底には、航空業界の人間の責任と誇りがあった。
膨大なコストを何とかしたい
数年後、コンピテンシーベースの訓練と評価システムに興味を持つ人間が新たに現れた。客室乗務員を訓練する客室教育訓練部のインストラクターだ。
客室教育訓練部はそのころ、訓練にかかる時間とコストに課題を抱えていた。客室教育訓練部の有村美祐紀氏は、当時の状況を説明する。
「客室教育訓練部は、訓練にかかる膨大なマンニングや時間を課題として捉えていました。客室乗務員は資格を維持するための訓練と審査を定期的に行います。以前は紙でその審査を行っていたので、7000人ほどの客室乗務員全員の審査記録用紙、そしてそれを保管する場所が必要でした。
審査記録は正式な書類です。チェックミスがあると審査内容が変わり、客室乗務員の乗務資格にも関わりますので、記入ミスは許されません。そのため、審査する人、それをチェックする人、それをさらにチェックする人、それらを管理する人、と何度も工程を重ねなければなりませんでした。
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