一般的なクラスのJavaScript Docの作り方
この項では、一般的なインスタンスタイプのクラスにおけるJavaScript Docの作成方法について解説する。
一般的なインスタンスタイプのクラスとは、以下のようなクラスである。なお、この動物エンティティクラスは、山田祥寛氏の連載「Ajax時代のJavaScriptプログラミング再入門」の第4回「JavaScriptでオブジェクト指向プログラミング」を参考にさせていただいた。
/** * @fileOverview 動物クラスを記述するファイルです。 * * @author 遠藤 太志郎 * @version 1.0.0 */ /** * 動物の名前と性別をセットします。 * * @class 動物エンティティのクラスです。<br> * 動物の名前と性別の情報を所持し、それらを取り扱う機能を保有します。 * * @param {String} name 動物名 * @param {String} sex 性別 */ var Animal = function(name, sex) { /** * 名前 * @return {String} */ this.name = name; /** * 性別 * @return {String} */ this.sex = sex; /** * 文章化する。<br> * 名前と性別の情報を合わせて文章化する。 * * @param {String} sep 分割表示用マーク * @return {String} 表示用文章 * * @example * tiger.toString(":"); * 出力:「虎太郎:オス」 * */ this.toString = function(sep) { return this.name + sep + this.sex; }; }
JavaScriptはソースコードをJSファイルという形式で保存できる。また、JsDoc ToolkitはJSファイルをJavaScript Docに出力するツールである。従って、HTMLに直接に記述されたJavaScriptを変換することはできない。
画面1がJavaScript Docである。このページはJSファイルの一覧を表示するメニューであるFile Indexだ。開発規模が大きくなるにつれてJSファイルも増えていくので、このような一覧表を利用する機会も多くなっていくだろう。
■ファイルヘッダ
最初にファイルヘッダの説明をする。
/** * @fileOverview 動物クラスを記述するファイルです。 * * @author 遠藤 太志郎 * @version 1.0.0 */
JSファイル自体の説明を記すためのタグが@fileOverviewである。ファイルの作成者を示す@authorや、ファイルのバージョンを示す@versionなども、必要に応じて記述できる。
このように、JavaScript Docソースの基本は@タグ+説明文章である。このあたりはJava Docと何ら変わりはない。また同様に、1つのファイルには1つのクラスを記述し、そのファイル名とクラス名を同期させておくことをお勧めする。
■クラスとコンストラクタ
クラスおよびコンストラクタについては、@classタグを使用し、下記のように記述することで出力が可能となる。
/** * 動物の名前と性別をセットします。 * * @class 動物エンティティのクラスです。<br> * 動物の名前と性別の情報を所持し、それらを取り扱う機能を保有します。 * * @param {String} name 動物名 * @param {String} sex 性別 */
画面3を見れば分かるように、@classの前に書かれている部分がコンストラクタの説明と認識され、コンストラクタの概要部分に出力される。
そして、@class以降がクラスの説明として認識され、ページのヘッダ部分に出力され、さらにClass Index(画面4)にも表示される。Class Indexとは、JavaScriptのクラスの一覧を表示するメニューである。
このように、クラスの説明文を書いておくことで、一覧から目的のクラスを探すことができ、そのクラスのページを開けば具体的な説明も閲覧できるようになる。このあたりはJava Docでいうところのパッケージの選択後に表示されている状態に近いものがある。
なお、Java Docにはパッケージごとに分別して出力する機能があるが、JavaScript Docにはパッケージの概念はない。もしパッケージごとに分別して管理したい場合は、パッケージごとにJavaScript Docを出力することになる。
■フィールド変数
クラスが保有するフィールド変数は下記のように記述する。
/** * 名前 * @return {String} */ this.name = name; /** * 性別 * @return {String} */ this.sex = sex;
@return {String}とあるように、返り値に返却される型を表示できる。画面5でもフィールドの変数名と説明と共に、返り値の型が表示される。
■メソッド
メソッドの説明は下記のように記述する。
/** * 文章化する。<br> * 名前と性別の情報を合わせて文章化する。 * * @param {String} sep 分割表示用マーク * @return {String} 表示用文章 * * @example * tiger.toString(":"); * 出力:「虎太郎:オス」 * */ this.toString = function(sep) { return this.name + sep + this.sex; };
サンプルでは、クラスのフィールド変数として保有している「名前」と「性別」の情報を、引数で設定した分割表示用マークを間に入れて文章化するものである。
画面への出力結果は以下のようになる。メソッドの概要(画面6)には、メソッドの機能説明と返り値の型が表示される。
メソッドの詳細(画面7)にはパラメータの値のほか、@exampleタグを使用することにより、実際に使用する際の使用例を表示できる。
以上で、一般的なクラスのJavaScript Docの作り方の解説は終了である。すでにJavaScript Docの記述方法の要領は理解していただけたのではないだろうか。要領はJava Docとほとんど同じである。タグの意味や記述する場所さえ分かっていれば、誰にでも簡単に記述することができるだろう。
以降は、この項では説明できなかった残りの記述方法について述べる。ただし、@fileOverviewでファイルの説明が記述できたり、@returnタグで返り値が指定できたりするなど、重複する部分も非常に多いので、そういった部分は割愛する。
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