正規表現をうまく使いこなせば、数十行のコードにも匹敵するテキスト処理をたった数行で実現することも可能だ。今回はまず、正規表現の基礎について解説する。
検索キーワードを指定するとき、スペースの有無や長音の有無などで面倒な思いをしたことはないだろうか。目的のキーワードが明確に分かっていればいいのだが、「サーバサイド」か「サーバーサイド」か、「WindowsXP」か「Windows XP」か(“XP”の直前に半角スペースを含むかどうか)が分からなければ、両方検索するはめになってしまう。この種の悩みは、テキスト・エディタで文章を編集しているときや、大量のファイルから目的のキーワードを含むファイルを検索するときなど、何かしらテキスト検索を行うときには常について回る問題だ。
ちょっと気の利いたツールであれば、そんなニーズに応えて「あいまい検索」と呼ばれる機能を備えた製品が少なくないが、これは平仮名とカタカナ(「あ」と「ア」)、全角文字と半角文字(「A」と「A」)の違いを吸収するなど、柔軟ながらも固定的な検索ルールが追加されるにすぎないので、前述した例のようなケースまで解決する手段にはならない。
そこで「正規表現」である。正規表現とは、指定した文字列そのものを検索するのではなく、ある種の記号を組み合わせて、目的のキーワードをパターンとして表現する手段である。例えば、先の例ならば「サーバー?サイド」と「Windows\s*XP」を検索すれば長音の有無やスペースの有無を無視して、両方の文字列を発見できる。
この検索文字列に含まれる“?”や“*”が、正規表現の「メタ文字」と呼ばれる特殊な記号である。“?”は「直前の要素(文字)はあってもなくても構わない」を意味するので、「サーバー?サイド」とすれば、「サーバーサイド」と「サーバサイド」の両方にマッチさせることができる。また、“\s*”は「0個以上の空白文字」を意味しているので、「Windows\s*XP」は「Windows XP」と「WindowsXP」の両方にマッチする(途中のスペースはいくつあってもいい)。
正規表現では、この種のメタ文字がいくつも用意されていて、柔軟に検索キーワードを表現できるようになっている。が、その柔軟性ゆえに、目的のテキストにマッチするパターンを即座に表現できるようになるには、それなりの修練を必要とする。それに、正規表現を見て、それがどの文字列にマッチするのか判断するのもなかなかに難しい。例えば以下の正規表現を見て、どんな文字列にマッチするか分かるだろうか? (答えは本稿の最後に示す)
^(?:(?<1>"[^"]*"),?|(?<1>[^,]+),?|,)*
しかし、正規表現をうまく使いこなせば、数十行のコードにも匹敵するテキスト処理をたったの数行で実現することも可能になる。ぜひともマスターして、プログラムに生かしたいスキルの1つである。
そして幸運(?)にも、.NET Frameworkのクラス・ライブラリには正規表現のためのライブラリが標準で用意されている。本稿ではまず正規表現の基礎について解説し、次回後編では正規表現を扱う.NETのクラス・ライブラリの活用について解説する。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.