老若男女が爆発物を持ち歩く、そんな時代になりました。
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先日、首都圏のJRがたった1つのガジェットで麻痺(まひ)しました。モバイルバッテリーです。山手線車内でモバイルバッテリーが発火し、山手線が全線、1〜2時間止まりました。
モバイルバッテリー、みんな持っていますよね。私も3台ぐらい持っていますが、扱いを一歩間違えると、社会インフラ破壊兵器になるという事実に震えました。
山手線事故の原因となったモバイルバッテリーは、過去に何件も火災事故を起こし、2023年からリコール対象品だったと言われています。
消費者庁の「リコール情報サイト」を見ると、過去にリコールされたモバイルバッテリーは20機種以上。今回のように、回収できていない端末も多いでしょうし、事故があってもその件数が少ないためリコールに至っていないモデルもあるでしょう。
加えて、海外などの無名のメーカーが粗悪品を販売し、事故が起きてもリコールしないケースもあるかもしれません。“爆弾”は身近に潜んでいます。
灼熱(しゃくねつ)の夏は、リコール対象品や粗悪品だけでなく、正常なリチウムイオン電池すら狂わせます。リチウムイオン電池は高温になると、膨張、発火、爆発リスクが増すからです。
特に怖いのは夏のクルマ。炎天下に駐車したクルマの車内は70度近くにもなるといわれます。リチウムイオン電池の安全動作温度は60度ぐらいですから、真夏の車内は地獄の釜。爆発へのカウントダウンです。
実際、NITE(製品評価技術基盤機構)によると、モバイルバッテリー事故の月別発生件数は8月が最多。「リチウムイオン電池が高温環境にさらされることで電池内部の温度が上昇し、異常発熱や発火などのリスクが高まるため」とみています。
危険なのはモバイルバッテリーに限りません。スマートフォンやハンディファンなど、リチウムイオン電池が使われた端末には、発熱、発火リスクがあり、全国危険物安全協会などが注意を呼び掛けています。
筆者は夏休みに入ってすぐ、自動車で旅行しましたが、休憩でサービスエリアに寄るたび、モバイルバッテリーやタブレットなど、爆発物候補を全て持ち出しました。重かった。でも万が一爆発したら、重いどころの騒ぎじゃありません。
航空業界もモバイルバッテリーの規制を強化しています。これまでも、手荷物として預けることはできませんでしたが、2025年7月からは機内の収納棚に置くこともNGになりました。
2025年1月に韓国で起きた航空機炎上事故の原因が、モバイルバッテリーである可能性が浮上したことが背景にあるようです。
こんなに身近にあり、誰でも持っているしどこでも売っているのに、ここまで危険とされているモノは他にないのではないでしょうか。
それでもわれわれは、モバイルバッテリーを持ち続けます。扱いを間違えれば爆発リスクがあると知っていても、スマホの電池切れのストレスの方が大きいから。
夏場は社内に放置しない、飛行機では手元に置く。そんな“爆弾処理技術”を身に付けながら、私はきょうも、スマホにモバイルバッテリーをつなげるのです。
爆発リスクのない充電池、早く普及しないかなあ。
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