伝説のイベントJava Night安藤幸央のランダウン(5)

「Java FAQ(What's New)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします。(編集局)

» 2001年12月26日 10時00分 公開

JavaOne開催

 11月28日から 30日にかけての3日間、パシフィコ横浜にて、Java開発者向けのカンファレンスであるJavaOneが開催されました。米国サンフランシスコにて世界中のJavaデベロッパを集めて開催されていた巨大なイベントが初めて日本へ上陸したのです。

 JavaOneは、以前日本で行われていたJava Developer Conferenceとはさまざまな点で趣の異なるものでした。数々の違いはありますが、その主なものとして夕方から夜にかけて開かれる同好の集まりBOF(Bird of a feather)やNight Activityと呼ばれる一連の夜のイベントがあります。

 Night for Java Technology (通称 Java Night)は、そのようなNight Activityの1つとしてJavaOne会場から少し離れたレストラン、横浜みなとみらいハードロックカフェで開催されました。

 Java Nightは日本独自のイベントとして企画されました。短い時間内で、Java を用いたクールな製品、作品をゴングショー形式で発表していくデモイベントです。元はコンピュータグラフィックスの学会・展示会であるSIGGRAPH会期中の夜に開催されるWeb3D Roundupというイベントを参考に、Javaに特化した面白いイベントを開こうと、有志が集まって始めたものです。

 参加者にはピコピコと音の鳴るハンマーが配られ、素晴らしいデモには惜しみない称賛を、つまらないデモには容赦ないブーイングを贈ります。2時間弱の発表者と会場内の観客が一体となった時間が流れていきました。

Java Nightのキーポイント

 Java Nightの大きな特徴は、各デモンストレータが各5分という短い時間でプレゼンテーションを行うことです。開催前は5分という時間は短すぎると各所で心配されていました。ところがイベントが始まってしまうと、5分でポイントを押さえたデモが行えないのであれば、その後いくら時間をかけても意味がないというのが皆の共通の認識になりましたた。まじめに丁寧にプレゼンテーションする方から、勢いに任せてしゃべりまくる人まで、プレゼンテーションは見ていて飽きない大変有意義なものでした。

 審査は事前にお願いしていた一般審査員約40名の10段階の評価を集計して行いました。審査員の評価によると多くの観客の方々が着目したのは以下のようなポイントでした。

  • 見た目にインパクトがあり、一見して素晴らしいものだと分かるもの
  • 本質的な内容が素晴らしく、いままでになかったようなもの
  • 技術的に素晴らしく、利用価値が感じられるもの

 総勢20組の発表者は前日まで徹夜続きで準備していたり、遠路はるばるやってきたりと、大変心意気の感じられる方々ばかりでした。

 観客として参加してくださったJavaの重鎮Sun MicrosystemsのJames Goslingも“amazing!”という言葉を連発していました。そのうえイスの上に立ち上がり、お気に入りのデジタルカメラで会場の写真を撮りまくっていました。そのほかの米国サンの技術者の方々を含め、大いに日本のJava開発者たちの心意気と技術力の高さ、Javaの普及度を感じ取ってくれたと思います。

ステージに立つJames Gosling ステージに立つJames Gosling

Java Nightに見る効果的なプレゼンテーション

 Java Nightは「プレゼンテーション」という概念に関して深く考えさせられるイベントでもありました。

 普通、製品のデモンストレーションというと、詳細な資料を配り、他社製品と比較したり、長い時間をかけて各機能を説明していくものが思い浮かべられます。

 Java Nightのプレゼンテーション時間はたったの5分しか用意されていません。準備も含めて5分の制限時間ですので、ノートパソコンの準備に手間取れば、それだけデモの時間も刻々と減っていきます。製品や作品の持つすべての機能や特徴を説明せずとも、一番のポイントである部分さえ観客の興味を引けば、その後の商談や交流に結び付いていくのです。

 イベントを通して、発表者、観客の共通の認識としてわき上がってきたのは、以下のような思いでした。

「全機能をプレゼンテーションする必要はない。 本当に伝えたいことを発表するには5分で十分のはずだ」

 5分という短い時間ではありますが、それで観客に伝えられなければ、どれだけ時間を使っても同じだということです。

 「ほらすごいでしょ!」という一方的なプレゼンテーションではなく、何がどうすごいのかを明確に説明することによって、暗にそう感じている観客はその認識を再度確認することができます。その紹介している製品、作品のすごさ、素晴らしさがより印象づけられるのです。

Night for Java Technology 2001発表者一覧

来年に向けて

 Java Nightは当初主催者側では100〜150人と観客数を予想していました。しかし実際ふたを開けてみると予想を大きく上回る、延べ450人の観客を集めた巨大なイベントとなりました。会場全体が満員電車のような混雑の中ながらも、発表者、観客が一体となったイベントとして成功を収めたというのが多くの人の共通の認識でした。今回のイベントによってほんの少しかもしれませんが、「何かやらなきゃ」「何かつくろう」という感じにさせられたことと思います。参加された多くの方々にとって、大いにモチベーション向上のきっかけとなったのではないでしょうか?

 うわさによると、来年もまたJavaOne Japanが開催されるそうです。JavaOne自体もますます充実したものとなることでしょう。今回のJava Nightの観客の方々、参加できなかった方々も、来年はぜひ観客としてではなく、発表者として素晴らしいデモを行ってほしいものです。

次回は1月25日の公開予定です。


プロフィール

安藤幸央(あんどう ゆきお)

安藤幸央

1970年北海道生まれ。現在、株式会社エヌ・ケー・エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。

ホームページ:
http://www.gimlay.org/~andoh/java/

所属団体:
OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)

主な著書

「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
「これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
「The Java3D API仕様」(監修、アスキー)


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