企業向けアプリケーションのさまざまな“常識”をJavaのオープンソース・フレームワーク群である「JBoss」から学んでいきましょう。企業システムを構築するうえでの基礎となる知識をリファレンス感覚で説明していきます。初心者から中堅、ベテランまで大歓迎!
連載第1回の「企業向けアプリの常識を学び、JBossの環境構築」では、企業向けアプリケーションに必要な要素としてフレームワークやアプリケーションサーバ、そしてその一例として、JBossプロジェクトの概要を説明しました。
今回は、企業向けアプリケーションを構築する際に必要な要素として「統合開発環境」を説明し、実際にサンプルアプリケーションを作成します。企業向けアプリケーションの構築における、統合開発環境の機能やその重要性を学んでいきたいと思います。
例えば、Javaのプログラムを作成するには、どのように、何をしていけばよいのでしょうか? 読者の皆さんなら、ご存じだと思いますが、実際に必要な作業工程は、以下のようになります。
このような工程を繰り返すことによって、プログラムは完成していきます。ですが、これらの作業を何のツールもなしに行っていたのでは非常に時間がかかり、効率が良くありません。大規模な企業アプリを開発していくうえでは、生産性や品質が問われます。上記の手順で作業を行っていたのでは、とても要件を満たせません。では、どうすればよいのでしょうか。そこで登場するのが、統合開発環境の存在です。
統合開発環境(以下、IDE(Integrated Development Environment))とは、テキストエディタ、コンパイラ、デバッガなどを1つにまとめたソフトウェアの開発環境のことです。導入すれば、上記の作業工程を、すべてIDE上で行うことができます。そのため、今日の企業アプリケーション開発において必須といえる存在になっています。
では、JavaのIDEには、どのようなものがあるのでしょうか。以下に、各ベンダが提供している主なIDEをいくつか挙げてみます。
これらのIDEには、無償のものと有償のものがあり、それぞれに特徴があります。今日の企業アプリケーションを開発するうえで、IDEは、非常に重要な役割を果たしています。
では、IDEの有効性とは、一体どのようなものでしょうか。具体的なものとして、以下の有効性が挙げられます。
これらの有効性により、アプリケーション開発の生産性が向上し、開発の時間短縮につながります。結果としてプロジェクトのコスト削減にもつながるのです。
IDEの重要性が見えてきたところで、その例として、Eclipse Foundationが提供しているEclipseとNetBeans.orgが提供しているNetBeansに焦点を当てて説明します。
まずEclipseとは、米アイ・ビー・エムによって開発されたIDEで、無償で提供されています。多彩な機能が充実していて、非常に人気があります。現在では、運営者が米アイ・ビー・エムから非営利組織であるEclipse Foundationに変わって、提供されています。
次にNetBeansとは、米サン・マイクロシステムズによって運営されているオープンソースのIDEです。もともとは、チェコのNetBeans Ceska republikaで開発されていましたが、米サン・マイクロシステムズが買収して現在に至っています。
EclipseとNetBeansは、今日のアプリケーション開発で日常的に使用されています。では、EclipseとNetBeansには、どのような違いがあるのでしょうか。
Eclipseは、開発に必要なツール群をプラグインとして提供しています。このプラグインがEclipseのメインともいえる機能です。プラグインは、数多くのものが存在し、開発者は必要となる機能のプラグインを各自で取り入れることで開発環境を構築していきます。
一方のNetBeansでは、インストール時に一通りの開発環境がそろっており、アプリケーションサーバも同梱されています。Eclipseとは違いプラグインの導入の必要はないため簡単に環境構築できることが魅力的です。
開発エディタ | APサーバ | CUIアプリケーション | |
---|---|---|---|
Eclipse | プラグインが必要 | インストール・設定が必要 | プラグインが必要 |
NetBeans | 標準装備 | 標準装備 | 標準装備 |
表 EclipseとNetBeansの違い |
今回の連載では、Eclipseをメインに開発環境を構築していきたいと思います。NetBeansに興味のある方は、NetBeans.orgより自身の環境にインストールして各機能を参照してください。また、NetBeansについては下記記事が参考になると思います。
では、Eclipseを導入するに当たって、それ以外のソフトウェアは、一体何をインストールすればよいのでしょうか。各プラグインを個別にインストールしていく方法もありますが、それ以外の方法としてオールインワンのIDEというものがあります。この「オールインワン」(All in One)とは、開発環境に必要なツール群を1つにまとめたものを指します。
具体的な例を挙げると、前述のEclipseには、All-In-One Projectが提供している「All-In-One-Eclipse」があります。これは、開発時に必要なプラグイン群が内包されているEclipseのインストーラです。Eclipseでの開発時に必要なプラグインがすでにそろった状態でインストールできるので、簡単に環境構築でき、時間短縮や間違いの防止につながります。
All-In-One-Eclipseでは、Eclipseとそのプラグイン群が対象でしたが、実際の開発案件では、前回説明したとおり、アプリケーションサーバやフレームワークなどが必要になります。例えば、実際にJBossを用いてサンプルアプリケーションを作成するには、JDK、Eclipse、JBoss Tools、JBoss Seamをインストールする必要があります。
JDKは個別にインストールする必要がありますが、それ以外を一括してインストールするには、日本JBossユーザーグループ(Japan JBUGプロジェクト)が提供しているJBoss Toolsのオールインワンインストーラである「JBossTools-installer」を使用することで簡単に環境構築ができます。
今回は、この「JBossTools-installer」を使用して開発環境を構築していきます。早速、開発環境の構築といきたいところですが、その前に、この「JBossTools-installer」に同梱されている「JBoss Tools」「JBoss Seam」に注目したいと思います。JBossプロジェクトのツールであり本連載にとって重要な項目なので、次ページでは、まずJBoss ToolsとJBoss Seamについて説明します。
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