見る知る分かる、Linuxレビュー
ワイヤレス接続の共有も可能
「Fedora 10」
北浦 訓行
2009/1/23
Fedora 10の新機能と修正点
先述したように、Fedora 10ではカーネルやデスクトップ環境、コンパイラ、パッケージシステムなどのバージョンが上がっています。これにより、対応するハードウェアの種類が増えています。
例えば今回の試用では、Fedora 9のLiveCDでは認識されないRADEON HD 4850やDELLのWUXGA対応液晶ディスプレイなどが、Fedora 10のLiveCDでは何の問題もなく使用できるようになっていることが確認できました。
以下では、主な新機能について説明します。
■ワイヤレス接続の共有
「NetworkManager」にワイヤレス接続の共有機能が追加されました。ワイヤレス接続の共有とは、無線LANのアドホック(Ad-Hoc)モードを利用したものです。通常の無線LANではアクセスポイントを用いて通信する「インフラストラクチャモード」を使用しますが、アドホックモードでは無線LANカード同士がピア・ツー・ピア通信を行います。そのため、簡単な設定で通信できるのが特徴です。
ワイヤレス接続の共有機能を使用するには、[システム]メニューの[設定]−[インターネットとネットワーク]−[Network Connections]を選択します。そして、[Wireless]タブの[追加]ボタンをクリックして、[Editing Wireless connection 1]ダイアログボックスを開き、[IPv4 Settings]タブの[Method]ボックスで[Shared to other computers]を選択します。
画面4 NetworkManagerでのワイヤレス接続の共有設定(クリックすると拡大します) |
■ソフトウェア管理ツール「PackageKit」の強化
Fedora 9で採用された「PackageKit」が強化されました。GUI画面で使用する「ソフトウェアの追加/削除」ツール(apk-application)では、MP3やDVDビデオの再生などに必要となるコーデックを自動的に検索してインストールする機能が追加されました。ただし、それらのコーデックはライセンスの関係でFedoraの公式リポジトリでは配布されていませんから、後述する非公式リポジトリ「RPM Fusion」を利用可能にしなければなりません。
この機能が実行される流れを紹介します。Nautilusで動画ファイルをダブルクリックすると、通常は「プラグインがないため、そのメディアを再生できません」という内容のエラーメッセージが表示されます。しかし、RPM Fusionの設定をしておくと、「×× requires additional plugins」というダイアログボックスが表示されます。
画面5 プラグインを検索するかどうかを確認するメッセージ(クリックすると拡大します) |
[Search]ボタンをクリックすると、必要なプラグインが自動的に検索されて、インストールするかどうかを確認するダイアログボックスが表示されます。
画面7 プラグインのインストールを確認するメッセージ(クリックすると拡大します) |
[Install]ボタンをクリックするとプラグインがインストールされ(場合によっては依存性のあるパッケージをインストールするかどうかのメッセージが表示される)、動画ファイルの再生が始まります。
画面7 Totemで再生される動画 |
■非公式リポジトリの統合
これはFedora 10とは直接は関係ありませんが、2008年にRPM Fusionという新しいリポジトリが公開されました。RPM Fusion(http://rpmfusion.org/)は、DribbleとFreshrpms、Livnaの3つの非公式リポジトリが統合されてできた新しい非公式リポジトリです。
Fedora Projectは、完全フリーでない(企業などが特許を取得しているとか、ソースファイルが公開されていないなど)ソフトウェアは収録しないという基本方針を堅持しているため、MP3やDVDビデオの再生コーデックやGPUメーカーが開発しているドライバなどは、公式リポジトリでは公開されていません。その不便さを補う役割を果たしているのが、非公式リポジトリです。
しかし複数の非公式リポジトリを利用すると、バージョンが少しだけ異なる同名のライブラリが重複してインストールされるといった問題が発生する可能性があります。また、インストールしたいソフトウェアによってリポジトリを変更しなければならないのは煩雑です。非公式リポジトリを統合したRPM Fusionでは、こうした問題の緩和が期待できます。
RPM Fusionを利用するためには、RPM FusionのWebサイトから設定用のRPMファイルをダウンロードしてインストールします。RPM Fusionの設定が行われているかどうかの確認やRPM Fusionの有効化・無効化は、[システム]メニューの[管理]−[Software Sources]で行うことができます。
画面8 [Software Sources]ウィンドウ(gpk-repo) |
Fedoraは比較的新しいソフトウェアを採用する方針を取っているため、リリース直後にはさまざまなトラブルに遭遇することがあります。例えば、Fedora 10のNetworkManagerには固定IPアドレスを設定することができないという不具合がありますし、Plymouthのカーネルモードセッティングドライバはごく限られたGPUにしか対応していません。また、Plymouth自体も動作が安定しないという問題があります。
しかし、このような問題は、徐々に修正されていきます。Fedora 9の「ソフトウェアの追加/削除」ツール(apk-application)は、当初は1つのパッケージをインストール・アンインストールする機能しか実装されていませんでしたが、現在では複数のパッケージを選択可能になっています。ソフトウェアのアップデートがリリースされたら、それを適用することを心掛けてください。それによって、ソフトウェアの安定性が増したり、機能が増えたりするのです。
@IT関連記事 これまで掲載された記事の中から、Fedora関連のものを紹介します ■Fedora 8のLive CDをUSBメモリから起動するには http://www.atmarkit.co.jp/flinux/rensai/linuxtips/a074usbboot.html ■Fedora 10で日本語LaTeXを使うには http://www.atmarkit.co.jp/flinux/rensai/linuxtips/a111latex.html ■プロダクトレビュー[Fedora 8] http://www.atmarkit.co.jp/flinux/prodreview/fedora8/fedora8a.html |
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