Linux Square
第11回 読者調査結果発表
〜 オープンソースのシステム採用/活用状況は? 〜
小柴豊
アットマーク・アイティ
マーケティングサービス担当
2003/12/16
Linuxをはじめとするオープンソース・ソフトウェア(以下OSS)の企業利用が、本格化し始めたといわれている。確かに最近のニュースを振り返ると、「楽天のWebアプリケーション構築」や「UFJ銀行の情報統合システム」など、OSSの一歩進んだ活用事例を見聞きする機会が増えている。これらはまだ特殊な事例なのだろうか? あるいはOSSの業務利用は、ついに飛躍の時を迎えたのだろうか? @IT Linux Squareフォーラムに集う、ITエキスパートの意見を聞いてみよう。
システムへのオープンソース採用状況は?
読者のかかわる情報システムで、OSSをどの程度採用しているのか聞いた結果が図1だ。「ほぼ全面的にOSSを採用している」読者は少数派だが、より現実的な「OSSと商用(プロプライエタリな)ソフトを使い分けている」と合わせると、現在のOSS採用率は全体の6割近くに達する。また「現在は商用ソフトのみだが、今後OSSを採用する予定/検討中」との回答も24%に上っており、“OSSを採用していないシステムの方が珍しい”時代が来るのも、そう遠くはないようだ。
図1 情報システムへのOSS採用状況(N=446) |
OSSシステムの段階的発展論:Web→J2EE→統合管理
情報システムにOSSを採用することが一般的になった現在、その用途がどう変化しているかが気になるところだ。いかにOSSの採用率が高まろうと、それが特定用途への適用にとどまっているならば、IT市場全体に与える影響力は限定的なものとなるからだ。
そこで読者のかかわるシステムの中で、現在Linuxプラットフォームを採用している用途を尋ねたところ、「Webサーバ」がトップとなり、「データベースサーバ」がそれに続く結果となった(図2青色)。Webサーバは従来からLinuxが強みを発揮してきた分野であるが、データベース・プラットフォームとしてのLinux採用率が30%に達していることからは、OSSがシステムのバックエンド分野に浸透しつつある状況がうかがえる。
図2 用途別Linux採用状況(複数回答 N=446) |
Linuxの用途拡大は、これからどのような方向に進むのだろうか? 読者に今後の採用予定/検討状況を聞いた結果、「Webサーバ」「J2EE Webアプリケーションサーバ」「データベースサーバ」といったJ2EEシステムの主要な構成要素が、そろって上位に挙げられた(図2オレンジ)。また現在の採用率は低いものの、「システム運用管理」「バックアップ/ストレージ管理」「セキュリティ管理」など、運用管理分野におけるLinux採用予定率もそれぞれ20%程度に上っている。
オープンソース技術を用いたシステム構築の方向性については、米Red Hatが2003年9月に“Open Source Architecture”を発表し、現在以降のロードマップとして、
第2段階 | : | J2EE実装/Webアプリケーション・フレームワーク | |
最終段階 | : | システムリソースの仮想化/管理 |
を想定している。上記図2の採用予定が順当に進めば、OSSに基づくシステム・アーキテクチャの段階的確立も、実現可能なものとなりそうだ。
Linux上のソフトウェア使用状況は?
続いて、Linuxプラットフォームにおけるソフトウェア製品の使用状況を分野別に確認していこう。まず【開発言語/開発ツール】分野では、現在「Java/JDK」の利用率がほかを大きく引き離して、トップに挙げられた(図3緑色)。一方で今後の使用予定では、Javaを中心としたオープンソースの統合開発環境「Eclipse」への期待が高く、Linux上でのJava開発に弾みがつきそうな模様だ(図3オレンジ)。
図3 Linux用ソフトウェア使用状況【開発言語/開発ツール】(複数回答 N=446) |
次に【アプリケーションサーバ】分野では、現在オープンソースのJSP/Servletコンテナ「Tomcat」の使用率がダントツであった(図4緑色)。今後の使用予定でも、Tomcatがトップをキープしているほか、同じくオープンソースのEJBサーバ「JBoss」の人気も上がっており、この分野のOSS活用度は今後とも高水準なものとなりそうだ(図4オレンジ)。
図4 Linux用ソフトウェア使用状況【アプリケーションサーバ】(複数回答 N=446) |
【データベース】分野を見ると、「Oracle Database」の利用率がオープンソースの「PostgreSQL」を僅差でかわしてトップとなった(図5水色)。OracleはLinux用ミドルウェアの中で、現在最も普及している商用製品といえるだろう。
図4 Linux用ソフトウェア使用状況【データベース】(複数回答 N=446) |
このパートの最後に、【システム運用管理/バックアップツール】の製品使用状況を聞いたところ、現在は使用率/予定率共にまだ目立った製品は存在しない状況であった(図6)。しかし、上記のようなJ2EEシステムが普及すれば、その次の段階としてオープンな環境を一元管理するニーズも高まるだろう。運用管理ツールには、OSSを含む広範な製品のサポートが望まれそうだ。
図4 Linux用ソフトウェア使用状況【運用管理/バックアップ】(複数回答 N=446) |
オープンソースのビジネス活用状況は?
今後オープンソース市場が成長していくためには、OSSを収益源とするビジネス活動の発展(“OSSで飯が食える”状況)が重要となるだろう。そこで後半では、OSSのビジネス活用の現状と将来性を確認しよう。
読者やその勤務先におけるOSSのビジネス活用状況を尋ねたところ、「現在ビジネスに活用している」のは全体の2割程度となった(図7)。図1で見たシステム採用状況の高さと比べると、まだOSSを収益源として活用できている人は多くないようだ。ただし「今後OSSのビジネス活用を予定・検討している」との回答は、「OSSがビジネスになるとは思わない」を大きく上回っており、OSSビジネス確立に向けた動きが今後活発化するものと思われる。
図4 OSSのビジネス活用状況(N=446) |
これから伸びるオープンソースビジネスの事業形態は?
では、OSSをビジネス活用するに当たって、読者はどのような事業形態を考えているのだろうか? 現在取り組んでいる形態/今後予定している形態に分けて尋ねたところ、現在/今後ともOSSでシステムを構築する「システム・インテグレーション」が主流となった(図8)。また現在と比べると、今後はOSSの導入や保守・運用を支援する「サービス・サポート」やOSS技術者の育成/トレーニングを行う「教育事業」といった“OSS周辺サービス事業”への取り組み意向が高くなっている。
図4 オープンソースビジネスの事業形態(複数回答 N=446) |
OSS自体は無償の製品であるだけに、もともと“モノ売り”形態がなじまない性質がある。リテール版製品の開発を中止し、企業向けサポートを手厚くしたEnterprise版にリソースを集中したRed Hatや、OSS製品を作りながらサポート/コンサルティング事業を中核とするJBoss Groupなどの米国企業の動向は、“モノからサービスへ”シフトするOSSビジネス活用の試金石と見ることができそうだ。
調査概要
調査概要 | |
調査方法
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Linux SquareフォーラムからリンクしたWebアンケート |
調査期間
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2003年10月28日〜11月21日 |
有効回答数
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446件 |
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