【特集】T1導入のススメ
〜1.5Mbps常時接続市場の現状とサービス選択のポイント〜
網仙人(ねっと・せんにん)
2000/10/18
第4章 T1常時接続サービスの選択基準 |
本章では、格安T1インターネット接続選択のポイントを説明する。実例として挙げるのは、IIJ、ユーユーネット、Jensの3社。この3社のパターンを理解すれば、他社サービスについても、商品規定のロジックを理解できるようになるはずだ。まずは、比較表をご覧いただきたい。
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それでは、上記の表のうち、ポイントとなる部分を解説しよう。
■各社の価格設定を比較
帯域保証型の常時接続サービスは、全般的にはT1のみが突出して安い形となっているが、価格設定の基本方針は、プロバイダによって多少の違いがある。
まず、IIJ。IIJの場合、T1だけでなく、64kbpsと128kbpsにも、格安サービスを定義しており、小人数でミッション・クリティカルな使い方をするユーザーには、メリットがある。256kbpsからT1までの間は、T1より高いという逆転現象が発生しているが、この中間に位置する品目を値引きすることは、なさそうである。
Jensは、T1に加え、256kbpsや512kbpsも値引きしているのが面白い。512 kbpsでちょうどよいというユーザーには、価格メリットがある。IIJとは正反対の考え方だ。
ユーユーネットは、T1以上を安くすることを標榜している。その実例が、3Mbpsをトータルで安くする、「ダブルT1」。名前の通り、T1を2本引き、あわせて3Mbpsにする。DA1500を2本買うのはHSDの3Mbpsを1本より安いとか、ATMでつなぐ場合と比べて低廉なルータでつながるといった、細かなバランスを考慮して定義したサービスである。
これら3社は、価格政策の面で、顕著な特徴がある例。基本的には、T1だけを安くするとか、T1以下だけを値下げするというのが、昨今の潮流であると言える。
■オプション制限比較
IIJやユーユーネットは、従来型T1とは別に、格安型のT1を定義する形をとっている。格安T1には多少のオプション制限があるのが普通であるが、Jensのように、格安サービスを作らず、従来型サービスをそのまま値引きした会社なら、一切のオプション制限がない。Jensは、BGP4を利用して安価なT1常時接続を利用したいといった要望にこたてくれる、数少ないプロバイダと言える。ニュースサービスや、IPアドレス取得の扱いも、Jensなら従来型サービスと同等であるが、値段が少々張るのは仕方ない。
IIJの「T1スタンダード」は、格安T1の標準型のようなサービスだ。サービス品質保証(SLA)のグレードが通常型サービスとは差があり、割り当てられるIPアドレス数に制限がある。BGP4は利用不可。多くのほかのプロバイダは、IIJと同等のサービス規定をしているため、IIJを基準に考えればよいだろう。IPアドレス取得制限は、特に要注意で、多くのプロバイダの格安T1で、この制限事項が設定されている。アドレス制限の厳しいプロバイダの場合、NAT背後のLANに加え、Webサーバを1つ設置するという使い方しかできないものと割り切った方が安全だ。グローバル・アドレスをふんだんに使って、アクティブにインターネットを利用することは難しく、どうしてもグローバル・アドレスが多数必要な場合は、アドレス取得制限のない会社のサービスを選ぶしかない。
ユーユーネットの「ユーユーダイレクト プレミアム スマート」は、格安型には珍しくIPアドレス取得数に制限がないのが最大のメリット。利用する通信機器はユーユーネット指定機種になるため、安心してダブルT1(格安3Mbps)やISDNバックアップといった独自の付加価値サービスを利用できるが、自分でルータを用意したいユーザーは、機種選定で要注意だ。
■品質基準比較
帯域保証型の接続サービスにおいては、プロバイダのバックボーン性能が、直接ユーザー宅に届くことになる。光ファイバ接続を選択するにあたっては、各プロバイダのバックボーン性能を見極めることが、特に重要なのだ。このような中で、多くのプロバイダが提供しているサービス品質保証(SLA:Service Level Agreement)は、選択ポイントの1つになる。格安T1に標準的なSLAは、プロバイダのバックボーン・ネットワーク内で、月次平均の遅延時間を一定以下に抑え込むことを保証する「遅延時間保証」。
IIJのSLAは、格安T1には遅延時間保証のみ。日本国内での月次平均遅延時間が、往復で40ミリ秒以内であることを保証している。一方で、IIJは従来型・フルスペック型の接続サービスには、可用性保証、障害通知保証という別アイテムも提供している。
ユーユーネットは、IIJと同じで、格安T1には、遅延時間保証のみ。従来型・フルスペック型サービスには、可用性保証、障害通知保証も提供されるのと差をつけている。面白いのは、海外で遅延時間やパケットデリバリ率の保証を達成できなかったときも、日本のユーザーに利用料金を返金するという点だ。どこまで意味があるのかは、さて置くとして。プロ バイダ側の自己満足といってしまえば、それまでのサービス設定だ。
Jensは、格安T1を定義するのではなく、従来型サービスをそのまま値引きした形。当然、SLAについても、全アイテムが提供される。全アイテムとは、遅延時間保証と、「バックボーンの」可用性保証の2つ。Jensの可用性保証は、プロバイダ側のバックボーン性能を保証するものであって、IIJやユーユーネットの可用性保証が、個々のユーザーサービスの可用性を保証するのとは異なっている。
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上記の3社を念頭に置けば、どの会社のサービスを見ても、格安T1の考え方が理解できるはず。自分の環境にあったT1を選ぶ際の指針にされたい。
Index | |
【特集】 T1導入のススメ | |
第1章 インターネット接続の形態 ダイヤルアップ接続と常時接続 常時接続のバリエーションと光ファイバの実力 常時接続方式の吟味 光ファイバのメリット:新時代の企業の基礎インフラ |
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第2章 T1常時接続サービス市場の現状 「T1」という語が口にされる意味 格安T1インターネットの解説 |
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第3章 T1常時接続サービスの導入手順 LANの準備 アクセスポイントの場所の確認 光ファイバが最大の関門 通信機器の手配 |
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第4章 T1常時接続サービスの選択基準 各社の価格設定を比較 オプション制限比較 品質基準比較 |
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第5章 SLAの本音と裏 余命3年、SLA? SLAのアイテム 【コラム】遅延時間の測定方法 |
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「Master of IP Network総合インデックス」 |
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