主要サーバ仮想化ソフトウェアであるVMware Infrastructure 3の後継バージョン、「VMware vSphere 4」が登場した。「クラウドOS」をうたい、基本機能を大幅に強化するとともに、重要な機能追加を行った。本連載では、このvSphere 4の主要機能を解剖する。
2009年5月21日にVMware vSphere 4の出荷が正式に開始された。VMware vSphere 4はVMware Infrastructure 3の後継となる製品である。VMware vSphere 4はVMware Infrastructure 3で提供していた機能の強化に加え、さまざまな新機能を追加した、正常進化型の製品といえる。このため、VMware Infrastructure 3における管理ノウハウの多くの部分がVMware vSphere 4においても適用できる。本連載では新機能の紹介を中心に、VMware vSphere 4の全体像について解説する。初回では vSphere 4 のハイパーバイザとしての基本機能部分にフォーカスし、強化・拡張された内容について紹介する。
VMware vSphere 4においても、その核となるソフトウェアコンポーネントはVMware ESXとVMware vCenter Serverであることに変わりはない。それぞれ「VMware ESX 4.0」、「VMware vCenter Server 4.0」という名称で出荷されることになった。バージョン番号はどちらも4.0で統一された。
VMware ESX 4.0は個々の物理マシン上で動作するハイパーバイザ・ソフトウェアである。VMware vCenter Server 4.0は複数のESXを管理するための管理ソフトウェア製品である。管理者はvSphere Clientと呼ばれるクライアント・アプリケーションを用いてvCenterに接続し、仮想化インフラ全体を管理する。
VMware ESX 4.0が動作する物理マシンのキャパシティが一部拡大された。表1は単一物理マシンあたりに搭載・構成することが可能な各種最大値の比較表である。
ESX 3.5 | ESX 4.0 | |
---|---|---|
物理コア数 | 32 | 64 |
論理CPU数(*1) | 32 | 64 |
並列実行仮想CPU数(*2) | 192 | 512 |
並列実行仮想CPU数(*3) | 170 | 320 |
単一コア当たり並列実行可能な仮想CPU数(*3) | 20 | 20 |
物理メモリ容量 | 256GB | 1TB |
物理NIC数(*4) | 32 | 32 |
単一LUNサイズ(*5) | 約2TB | 約2TB |
エクステント数(*6) | 32 | 32 |
LUN数 | 256 | 256 |
表1 ホスト最大値の比較
*1 : インテル ハイパースレッディングテクノロジー有効化時に認識される論理CPU数
*2 : パワーオン、並列実行可能な最大値
*3 : 仮想マシンの用途によっては実用的な上限値は下がる場合がある
*4 : 利用する物理NICのタイプによっては異なる上限値が設定されている場合がある
*5 : 厳密には2,199,023,254,528バイト
*6 : 複数のLUNを結合して単一VMFSボリュームを構成する際のLUN数
CPU資源は2倍、メモリ資源は4倍まで拡張されており、より大規模な物理マシンへの対応を可能としている。
また、仮想マシン側の仮想ハードウェアの仕様も大幅に拡張された。表2は仮想マシンの仕様ならびに各種最大値の比較表である。
ESX 3.5 | ESX 4.0 | |
---|---|---|
仮想CPU数 | 4 | 8 |
仮想メモリ容量 | 64GB | 255GB |
仮想NIC数 | 4(*1) | 10 |
仮想SCSIコントローラ数 | 4(*1) | 4 |
仮想IDEドライブの構成 | × | ○ |
仮想SASアダプタの構成 | × | ○ |
準仮想化SCSIアダプタの構成 | × | ○ |
デバイスパススルー機能 | × | ○ |
表2 仮想マシンの仕様・最大値の比較
*1 : ESX 3.5 では、構成する仮想NICと仮想SCSIコントローラの合計を単一仮想マシンあたり5以下とする必要がある
仮想マシン単体としてのスケーラビリティも、CPU資源において2倍、メモリ資源において4倍に拡張されている。なお、ESX 3.5では、構成する仮想CPUの数を1、2もしくは4のうちのいずれかにする必要があったが、ESX 4.0では1〜8の任意の数で構成することが可能となっている(ただし物理マシン側にそれ以上の個数の物理コアを有している必要がある)。
このようにVMware vSphere 4では、物理マシン、仮想マシンの両面において対応可能な計算資源のキャパシティを強化し、仮想マシンの適用可能範囲を拡大している。
VMware ESX 4.0は大規模な構成への対応を強化する一方で、同時に小規模なシステムへの対応も積極的に進めている。特に1CPU構成のサポートとSATA内蔵ディスクのサポートは、導入の敷居を大幅に下げることになるだろう。
まずライセンスの購入形態が変更された。以前は「VMware ESXのあるエディションのライセンスを1式購入すると、該当エディションの使用権が2 CPU分提供される」という形態になっていた。つまり2 CPU単位でしか購入することができなかった。新しい方式では「ライセンスを1式購入すると使用権が1 CPU分提供される」となっている。このためそのとき必要なCPU個数に応じた数量のライセンスを発注できるようになった。
次に、「1CPU構成のサーバ」を正式にサポートすることとした。以前は、サーバベンダからの申請があり、かつ一定の技術的条件を満たしている場合に限り1CPU構成もサポート対象としていたが、現在はポリシーが大幅に変更となり「デュアルコア以上のCPUである場合は基本的に1CPU構成であってもサポート対象とする」という取り扱いとなった。ただし、サーバの機種によってはサーバの製造ベンダ側の意向でESX利用時における搭載CPU数のポリシーを設定している場合がある。その場合はサーバベンダ側のサポートポリシーが優先される。1CPU構成のサポートに関する変更は2009年6月5日より有効となっており、VMware ESX 4.0に加え、VMware ESX 3.xにおいても同様の扱いとすることとなった。
ただし、VMware ESX 4.0ではVMkernelやサービスコンソールが64 bit化されているため、64 bitに対応するCPUが必須となっている。本稿執筆時点でサポート対象となっているCPUは以下となる。
なお、これはあくまでもCPU単体としてのサポート情報であり、サーバ本体としてサポート対象となるかどうかは従来通りハードウェアコンパチビリティガイドの記述が正となる。以前はハードウェアコンパチビリティガイドをPDFファイルで提供していたが、現在はオンライン化され、Webブラウザを用いて閲覧することができるようになっている。
▼VMware Compatibility Guide
http://www.vmware.com/resources/compatibility
ストレージアレイ装置や各種I/Oアダプタカードなどに関しても、VMware ESXにおけるサポート対象デバイスをこのコンパチビリティガイドより確認することができるようになっている。ハードウェア装置の選定の際には、ぜひ活用していただきたい 。
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