「ストレージ市場に大きなインパクト」、開発進むBluefinとは

2002/11/6

ストレージネットワーキング・インダストリ・アソシエーション日本支部の会長 吉田浩氏。「ストレージネットワーキングは今後のITの要になる」と述べた

 ストレージベンダの業界団体「ストレージネットワーキング・インダストリ・アソシエーション日本支部」(SNIA-J)の会長 吉田浩氏は、11月1日に開催されたイベント「ストレージ・ソリューション フォーラム2002」(主催:日経BP製品技術研究センター)で基調講演を行い、SANの利用がIPネットワークに移行し、将来的にはマルチベンダ環境を実現する新技術「Bluefin」(コード名)が広く使われるようになる、との考えを明らかにした。一方で「ネットワークストレージでは、日本は世界から約2年遅れている」と語り、市場への危機感をあらわにした。

 吉田氏はストレージ市場の現状として「DAS(サーバ直結ストレージ)が減少して、SANやNASなどのネットワークストレージが急成長している」と説明。ネットワークストレージの分野でもハード市場の伸び率を、サービス、ソフトウェアの市場の成長率が上回っていて、吉田氏は「ストレージもソリューション中心になってきている」と述べた。

 ネットワークストレージについて吉田氏は「国内でも地位は確立された」という認識で、今後は、IPストレージの増加とマルチベンダ環境での相互接続性の拡大がストレージベンダに求められているとの認識を明らかにした。一方で、日本のネットワークストレージは普及率で世界に比べて「約2年のギャップがある」と述べ、ベンダの着眼点を「ストレージの容量とアクセスから、運用管理へとシフトさせる必要がある」と指摘した。

 吉田氏はネットワークストレージの中でも注目されている技術としてIPストレージを挙げて、「IPストレージの仮想化を利用した広域ストレージのニーズが企業の中で出てきている」と説明。広域ストレージついての企業の主な目的は、災害対策や企業間のデータ共有に利用することだという。IPストレージが注目を集める理由として吉田氏は、IPストレージが“枯れた技術”であるSCSIとイーサネット上に構築されていて、クライアント、サーバ、ストレージが単一のIP技術で接続されていることを説明。インテルなどが推進しているI/Oの高速化技術「InfiniBand」と比較して、「InfiniBandはまったく新しい技術を使うため普及が遅れている。IPストレージは既存の技術を使い、普及は早く進むだろう」と述べた。

 吉田氏はまた、ストレージ製品の価格が値下がりしているにもかかわらず、企業のストレージ管理コストが増大しているとして「運用管理のギャップが問題になっている」と指摘。「これを解決するためにはマルチベンダ環境での相互接続性を確立して、統合的にストレージを管理する必要がある」と述べた。

 このギャップを解決するためSNIA-Jの親団体であるSNIAは、マルチベンダ環境で機器の相互接続を可能にして、SANを統合管理するための共通インターフェイス「Bluefin」の標準化を進めている。BluefinはCIM(Common Information Model)とWBEM(Web-Based Enterprise Management)の技術を基にした共通インターフェイスで、吉田氏はBluefinによって「ストレージ・インテグレータはストレージの統合管理ソリューションを提供できるようになる」と述べた。現在、米IBMや日立製作所、米サン・マイクロシステムズなどストレージベンダはBluefinを基にしたストレージ管理の仕様「SMI」(Storage Management Initiative)に対応したストレージ管理ソフトウェアの開発を進めている。

 Bluefinを使うことで、ストレージベンダの企業囲い込みは意味がなくなり、企業の運用コストが低下するという。吉田氏はBluefinがストレージ市場に「相当大きなインパクトを与える」と述べ、SNIA-Jとしても強く推奨する考えを示した。

(垣内郁栄)

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ストレージネットワーキング・インダストリ・アソシエーション日本支部(SNIA-J)

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