情報処理推進機構(IPA)はIT人材の育成を目的とした予備調査の結果を2月18日に発表した。IT業界の転職についての調査で、40歳代を境にIT関連業務から、ITとは無関係な業務に転職する人が50%を超えるなど、一部でささやかれる「プログラマ35歳定年説」を思い起こさせる結果になっている。
IPAはIT人材育成について5つのテーマで調査した。一般企業やIT企業の人材動向の調査結果は1月29日に公開した(参考記事: IT企業、新卒採用苦戦の理由は「仕事のイメージが悪い」)。今回は教育機関向け調査のほかに、オフショア開発、IT人材の派遣、個人事業主、転職などについての調査結果を発表した。教育機関向けについての記事はこちら(学生の「人気」「質」低落傾向で大丈夫? 大学情報系学部を調査)。
転職についての調査は、IT業界で勤務経験がある約500人の転職経験者を対象に2007年7月にWebアンケートを実施。回答者のうち68.4%が男性で、女性は31.6%。年齢は20歳代、30歳代、40歳代がそれぞれ30%ずつ、50歳代が10%。
回答者の過去5年以内の転職では、転職前にIT業務をしていて、転職後もIT業務を行っている人(IT業務→IT業務)は36.8%。対して、IT業務から転職によってITとは無関係な業務に就いた人(IT業務→その他業務)の割合は45%で、IT業務→IT業務の人を上回った。ITとは無関係な業務からIT業務に就いた人(その他業務→IT業務)は18.2%。
転職による業務の変化を年代別で見ると興味深い。年代が高くなるほど、IT業務→その他業務の割合が増加。40歳代では回答者の50%がIT業務→その他業務となる。50歳代ではこの割合は62%。
では、転職した人は転職前にどのようなIT業務を行っていたのだろうか。調査結果によると最も多い回答は、「プログラマ」で22.3%。次いで「運用・サポート」(10.7%)、社内システム企画・管理(8.9%)、プロジェクトリーダー・マネージャー(8.6%)、オープン・Web系SE(8.3%)などが続く。対して、IT業務からその他業務に就いた人の転職先では、「商社・流通・小売業」が17.2%で最多。「建築・土木・不動産」が10.6%、「教育・研究」(7.3%)、「電子・電気機器」(6.6%)などとなっている。
絶対数が多いとはいえ、プログラマから転職した人が最も多く、しかも、40歳代になるとIT業務からその他業務への転職が半数になる。また、IT業務→IT業務の転職者でも、転職後の業務の割合ではプログラマは8.9%に過ぎず、転職前の22.3%には遠く及ばない。転職を機にプログラマから別のIT業務に就いた人が多いことを示す。これらの結果を「プログラマ35歳定年説」と関連付ける人もいるだろう。さらに転職前にプログラマに就いていた人の、転職前の仕事の満足度は高くない。「やや不満」「非常に不満」と答えた人は63%。「満足」は35.6%だった。
IT業務からその他業務に転職した「IT業界流出組」の転職理由を見ると、IT業界の課題が分かる。IT業務→その他業務の人の転職理由は、トップが「給与・待遇がよくない」。この理由はIT業務→IT業務の人と同じだが、IT業務→その他業務の人の2位は「労働時間が長い」だった。「労働時間が長い」はIT業務→IT業務の転職者では6位には入っているだけ。IT業務→その他業務の人が転職先を選んだ理由の3位にも「労働時間が適正である」が入っていて、IT業界の労働時間の長さや不規則さが人材の流出を生んでいる面もあるようだ。
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