「高度ICT人材の不足は、産業構造と人材育成環境、人材育成機会の3つに問題があるから」――総務省 情報流通行政局 情報通信利用促進課長の平林正吉氏は8月29日、「CompTIA Breakaway Japan 2008」の基調講演でそう語った。
講演のテーマは「高度ICT人材の育成に向けて」。平林氏はまず日本の情報化戦略に触れ、「IT基盤の整備の1つとして、世界に通用する高度ICT人材の育成が重要」とした。ICT人材の現状は「50万人ほど不足している。特に、高度ICT人材の不足数は約35万人」だという。高度ICT人材は技術系(プロジェクトマネージャ、上級システム設計・開発など)とマネジメント系(CIO、CTO、システム企画など)に分かれるとし、特にマネジメント系の不足が著しいと平林氏は強調した。
プロジェクトマネージャやITアーキテクト、CIOなどは特に産学官が連携して育成に取り組む必要があると平林氏は説明。一方でICT人材の裾野を広げるために、初等・中等教育における情報リテラシー教育も重要であるとした。
現在の人材の不足の原因として平林氏は、「産業構造」「人材の活躍の場(人材育成環境)」「人材の育成の場(人材育成機会)」の3点に問題があると指摘した。それぞれの具体的な課題点は下記の通り。
産業構造 | 人材の活躍の場 (人材育成環境) |
人材の育成の場 (人材育成機会) |
---|---|---|
●ICT企業 ・国内企業からのオーダーメイド型の受託開発中心 ・人月単価主義 ・分化・分業が不十分 ・多重下請け構造 ・オフショア化の進展 ●ICT利用企業など ・新たな付加価値を創造するようなICT利活用が不十分 ・人材の質的な不足による、ICT投資の高コスト化 |
●ICT企業 ・長時間労働の慢性化などにより、人材育成のための時間確保が不十分 ・OJT、OFF-JT機会の減少 ・能力に応じた適正な処遇が不十分 ・キャリアパスが不明確 ●ICT利用企業など ・マネジメント層のICT部門、ICT人材への理解・評価が不十分 ・ICT部門の子会社化などにより、企業内人材の不足および質の維持が困難 |
●中等教育まで ・ICTの社会的意義・魅力・ICTリテラシーの習得が不十分 ・ソフトスキル(コミュニケーション能力など)の不足 ●高等教育機関 ・産業界側のニーズとのミスマッチ(実務上必要なICTに関する基礎知識・スキルなどの習得が不十分) ・研究重視の風潮 ・産業界出身の人材受け入れ体制が不十分 ●研修事業者 ・地方・中小事業者における講師の不足 |
平林氏はこうした問題があることで高度ICT人材が自立的に輩出されないために、人材不足に陥ると説明。高度ICT人材が自立的に輩出されるメカニズムの構築が必要であるとした。
これらのうち、平林氏は特に「人材育成機会の充実」についてフォーカス。PBL(Problem Based Learning:問題解決型学習)教材の作成や、高度ICT人材育成について研究と議論を行う「ナショナルセンター的機能」を持った場の創出を行っていくと説明した。
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