エンジニアにとって、限られた時間でWebサービスやアプリを開発するハッカソンはおなじみだが、それの“スタートアップ(起業)”バージョンをご存じだろうか?
11月18日から20日にかけての3日間、“54時間で起業を体験する”イベント「Startup Weekend Tokyo」が開催される。
Startup Weekendは2007年5月にアメリカから始まり、現在はパリやアテネ、ロンドンにウィーンなど、世界中の200都市以上で行われている。日本では、2011年夏に東京・京都・福岡の3都市で開催された。
本イベントのゴールは、週末の54時間を使ってアイデア出しからプロダクトのデモまでを作ること。ハッカソンと異なり、あくまで「起業すること」が目的だ。
そのため、参加者はエンジニアだけに限らない。エンジニアはもちろんのこと、経営者やマーケッター、デザイナーにアーティスト、企画担当や営業担当など、さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まる。異なる技術やアイデアを持ち寄り、それぞれが得意分野を生かしながらチームを結成するのである。
濃厚な3日間の詳細を見ていこう。金曜日の夜は「フライデーナイトピッチ」として、参加者がそれぞれのバックグラウンドや得意分野、スタートアップのためのアイデアを120秒でプレゼンテーションする。数は問わない。10だろうが100だろうが、まずは全員が持つ、すべてのアイデアを出し尽くす。
その後、投票を行ってアイデアを3分の1程度にまで絞りこむ。残ったアイデアごとに3〜15人のチームを作ったら、金曜日は解散だ。そこから、土日をフルに使ってプロジェクトを立ち上げ、日曜日の発表に臨む。
3日間が終わった後、参加者の歩む道はさまざまだ。発表後、実際に起業した人たちもいれば、チームのメンバーと一緒に新しい仕事を始める人たちもいるという。
「僕は、“起業の練習をしたい”という人の手助けをしたいんだ」
東京を中心に活動するStartup Weekendのオーガナイザー、ジョニー・リー氏はこう語る。彼自身、新しいことへのチャレンジが大好きで、「どうせなら全然知らない土地で挑戦したい」と故郷のイギリスを離れて日本に来たそうだ。「ごはんがなかなか食べられなくて困ってる」らしいが、持ち前の明るさを生かして、Startup Weekendの文化を日本に根付かせるために日本中を飛び回っている。
「電車に乗っている人たちを見ると、疲れたことをしている。皆、一生懸命に働いているけれど、働くこと自体を楽しんでいない。イノベーティブでもない。でも、働いている時間は人生のうち多くを占める。働くことの“質”はとても重要だと思う」
Job Huntingというと、面接やら採用やらを思い浮かべる人がほとんどだと思うが、「企業に勤める」だけが選択肢ではない。「自分の職を作る=起業する」という選択肢だってある。もっと起業する文化が日本でも根付いてほしいというのが、ジョニー氏の思いだ。
「Startup Weekendは、起業の練習をするのには絶好の機会だ。実際の起業にはたくさんのものやお金が必要だけど、Startup Weekendでは54時間とほんの少しのお金(参加費は7500円)だけでいい。挑戦して、失敗できることがメリットだと思う。参加者はこの3日間で“起業のやり方”を学べるし、自分とはまったく異なる考え方やアイデア、スキルを持つ人と出会える。いろいろなスキルセットを持つ人が集まったら、企業を作ることができるんだ」
「エンジニアは、コードは書けます。しかし、そのコードの価値が分かっていない人が多いと思います」
ジョニー氏と一緒に活動するStartup Weekendのオーガナイザー 李東烈(リ ドンヨル)氏は、元エンジニアだ。同じプログラムでも、やり方次第でその価値は100円にも1億円にもなると、李氏は指摘する。
「自分の書いたコードの価値を知るためには、コーディング以外のスキルが必要です。そのスキルを学べるのがStartup Weekendなのです。Startup Weekendは、プログラミングの技術を学ぶハッカソンではありません。自分が知らないスキルを学ぼうという気持ちで、エンジニアには参加してほしい」
ジョニー氏と李氏も、Startup Weekendを通じて出会った。現在は、2人で一緒に起業するプランを練っているという。こうした出会いを生むのがStartup Weekendである。
「Startup Weekendは、ビジネスプランを描く場所ではありません。実際に起業してみる、仲間にめぐり合うための場所なんです」
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