お手軽が一番、ExcelをOracleクライアントに:Excel‐Oracle連携(2)(2/3 ページ)
Excelでは、VBAマクロのコードの中にOracleデータベースへの接続や、検索処理の命令を記述できます。コーディングが発生するため、誰でも簡単にできるわけではありませんが、その分柔軟な処理が可能です。
この方法では、VBAでOracleデータベースに接続するためのインターフェイスに何を使うかによって、開発手法も異なります。非常に多くのパターンがありますが、主要なものは、
- ActiveXData Objects(以下ADO)からODBCドライバを使用する方法
- ADOからOLE DBドライバを使用する方法
- Oracle Objectsfor OLE(以下oo4o)を使用する方法
の3つです。どれを使ってもExcelのマクロからOracleデータベースのデータを検索できますが、それぞれに特性があるので、違いを理解したうえでどれを使用するか決定することになります。以下に違いをまとめてみました。
連携パターン |
メリット |
デメリット |
ADO+ODBC |
・汎用的なADOのAPIを使用して開発できる |
・Oracleデータベース固有のデータ型やパラメータなどが使用できない ・ODBCデータソースの設定が必要 ・ODBCブリッジを介すため、ADO+OLE DBよりパフォーマンスが劣る |
ADO+OLE DB |
・汎用的なADOのAPIを使用して開発できる |
・Oracleデータベース固有のデータ型やパラメータなどが使用できない ・oo4oよりはパフォーマンスが劣る |
oo4o |
・追加的に必要なミドルウェアがないため、バージョン間での整合性などを意識する必要がない ・Oracleで実装されているすべての機能を利用可能 ・PL/SQLを記述可能 ・DAOに類似したインターフェイスを利用し、プロパティ、メソッドを用いることでプログラミングが容易 ・oo4oのパラメータを変更することで、oo4o自体のチューニングが可能、高パフォーマンス |
・Oracle以外のRDBMSには接続できない ・コーディングに使用するメソッドなどはoo4o固有 |
表2 VBAのマクロで使用するミドルウェアごとの違い |
それぞれの開発手法での実際のマクロは以下のようになります。このマクロでは、SIDまたはDSN名がorclであるデータベースに対して接続し、「商品情報」「商品分類」という表から検索した結果をExcelシートの4行2列目に出力します。リスト1?3に掲載しているのは、そのマクロの主要部分を抜粋したものです。赤字部分はそれぞれデータベースユーザー名、パスワード、接続記述子(ADO+ODBCではDSN名)で、環境により異なります。SQL文に日本語の列名や表名などが含まれる場合は、二重引用符「"」で囲むことに注意してください。
Private Sub CommandButton1_Click()
On Error GoTo Err_Han
If oraconn.State = 0 Then
Call Conn
End If
' データ取得メイン処理を呼び出す
getProductInfo
Exit Sub
Err_Han:
' エラー処理
MsgBox (Err.Description)
End Sub
'データベース接続処理
Private oraconn As New ADODB.Connection
Private Sub Conn()
ConnectionString = "DSN=orcl;UID=scott;PWD=tiger"
oraconn.ConnectionString = ConnectionString
oraconn.Open
End Sub
'データ取得メイン処理
Private Sub getProductInfo()
' 変数定義
Dim rs As ADODB.Recordset ' レコードセット(商品情報)
' データ取得処理
Set rs = selectProducts
' データが取得されなかったら何もしない
If rs Is Nothing Then
Exit Sub
End If
' 商品情報データをシートに格納
Call setDataView(rs, theSheet.Cells(4, 2))
' レコードセットクローズ
rs.Close
End Sub
'データ取得処理
Private Function selectProducts() As ADODB.Recordset
Dim strSql As String
Dim strSql As String
strSql = " select ""商品ID"",""商品名"",""分類名"", " & _
" ""内容量"",""内容量単位"",""原材料""," & _
" ""保存方法"",""賞味期限"",""価格"" " & _
" from ""商品情報"",""商品分類"" " & _
" where ""商品情報"".""分類ID"" = ""商品分類"".""分類ID""
Set selectProducts = oraconn.Execute(strSql)
End Function |
リスト1 ADO+ODBCの場合のデータベースへの接続(表示の都合で改行されています。コードはlist01から確認できます) |
'〜 ボタンクリックのプロシージャはADO+ODBCと同一なので省略 〜
Private oraconn As New ADODB.Connection
Private Sub Conn()
' データベースに接続する
ConnectionString = "Provider=OraOLEDB.Oracle;Data
Source=orcl;User ID=scott;Password=tiger;"
oraconn.ConnectionString = ConnectionString
oraconn.Open
End Sub
'〜 データ取得処理はADO+ODBCの場合と同一なので省略 〜 |
リスト2 ADO+OLE DBの場合のデータベースへの接続(表示の都合で改行されています。コードはlist02から確認できます) |
Private Sub CommandButton1_Click()
On Error GoTo Err_Han
If OraDB Is Nothing Then
Call Conn
End If
If OraDB.ConnectionOK = False Then
Call Conn
End If
' データ取得メイン処理を呼び出す
getProductInfo
Exit Sub
Err_Han:
' エラー処理
MsgBox (Err.Description)
End Sub
Private OraSess As OraSession
Private OraDB As OraDatabase
' データベース接続処理
Private Sub Conn()
Set OraSess = CreateObject("OracleInProcServer.XOraSession")
Set OraDB = OraSess.OpenDatabase("orcl", "scott" & "/" & "tiger",
0&)
End Sub
'データ取得メイン処理
Private Sub getProductInfo()
' 変数定義
Dim oraDS As OraDynaset ' レコードセット(商品情報)
' データ取得処理
Set oraDS = selectProducts()
' データが取得されなかったら何もしない
If oraDS Is Nothing Then
Exit Sub
End If
' 商品情報データをシートに格納する
Call setDataView(oraDS, theSheet.Cells(4, 2))
' レコードセットクローズ
oraDS.Close
End Sub
'データ取得処理
Private Function selectProducts() As OraDynaset
Dim strSql As String
strSql = " select ""商品ID"",""商品名"",""分類名"", " & _
" ""内容量"",""内容量単位"",""原材料""," & _
" ""保存方法"",""賞味期限"",""価格"" " & _
" from ""商品情報"",""商品分類"" " & _
" where ""商品情報"".""分類ID"" = ""商品分類"".""分類ID""
Set selectProducts = OraDB.CreateDynaset(strSql, 0&)
End Function |
リスト3 oo4oの場合のデータベースへの接続(表示の都合で改行されています。コードはlist03から確認できます) |
上記を一部編集したマクロを含むExcelシートと、表作成用のSQLスクリプトを以下からダウンロードできます。
・サンプルのダウンロード(demo.zip)
マクロを使用する方法では、MS Queryよりも柔軟な検索処理が可能です。あらかじめ帳票のようなExcelシートを作成しておき、その中で特定のセルにデータベースからの検索結果を出力することも可能ですし、検索のみならず更新処理を行うことも可能です。クライアントにOracleClientは必要になりますが、マクロを含んだExcelファイルを配布すれば、受け取った人はそのファイルを開いてマクロを実行するだけで、データベースからの検索を行うことが可能です。
ただ、マクロをコーディングするのは手間がかかります。次に説明するKeySQLを使用すると、同等の処理をもっと簡単に行うことが可能です。(次ページに続く)
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