インターネットの流行なのか、かなりの人のところに毎日たくさんの迷惑メールが送られてきます。そして、律子さんのところにも同様に、知らない人からたくさんのメールが送られてきます。
しかも、律子さんの場合は管理者ですので、自分のアカウント以外だけでなく数種類のアカウントを持っていたり、エラーメールのあて先になっていたりもします。だから、そんな嫌なメールが会社のほかの人の数倍は届いているようで、本当に困っています。
以前のspamはほとんどが英語で、英語のメールはやりとりすることのない律子さんは黙って英語メールはゴミ箱に放り込んでおけばよかったのですが、敵も最近では腕を上げてきたのか、興味を引くような日本語のタイトルを付けたメールがいろいろ届けられます。それにだまされて律子さんはメールをつい読んでしまったりして、ひどく時間の無駄遣いをしてしまうこともあります。とはいえ送ってくる側は送られる側の性別のことは考えてくれていないようで、「美人妻極秘モニター」のようなとんちんかんなメールも届けられるのですが、それすら読んでしまうのは律子さんの悪いところです。
ある日のこと、律子さんは思いました。このままではいけない。こんな無駄なことに時間を使っていると、ただでさえ遅い仕事がどんどん遅れて、ついにはどのプロジェクトのメンバーにも入れてもらえなくなるかもしれません。
そんなことを思っていると、不安げな顔をして、同僚の健一君がやって来ました。何か土産物のお菓子でもいただけるのかと思いましたが、相変わらずそうではなく、相談事のようです。
健一君 :「ちょっとええ? 律子さん、変なメールがたくさん届いて困ってるんやけど」
律子 「なんかしたんですか?」
健一君 「出会い系に登録したからかもしれへんね。これ、偉い人には秘密やで」
律子 「会社のアドレス使ってなにやってんですか、会社の恥じゃないですか」
健一君 「まあそうなんやけど、俺も忙しくて出会いとかないんだよね」
律子 「そんなこと知りませんよ。せめて会社のメールアドレスじゃなくて、携帯とかフリーメールとか使ってくださいよ」
健一君 「フリーメールか、そういう手もあったか」
律子 「はぁ」
健一君の話に思わず律子さんはため息をついてしまいましたが、話はまだ続くようです。
健一君 「それでやな、メールに書いてるリンクをクリックしたら、アクセス代金払えっていってきてん。画面に俺のマシンの情報が表示されて、個人情報も保存してるから逃げられへんって……」
律子 「それ、自分のマシンの情報が表示されてるだけですよ」
健一君 「向こうから送ってきてるんとちゃうの?」
律子 「そうですよ」
健一君 「なんや、ビビって、金振り込んでまうところやったわ。さすが律子さんはインターネットに詳しいなあ、ほかのやつらにもいうとくわ」
律子 「いや、まあ」褒められてちょっと照れてしまう律子さんです。
健一君 「で、相談やねんけどな、俺のアドレスに出会い系とかのメールが届けへんようにしてもらいたいねんけど、何とかならへんかな」
律子 「……ちょっと、考えときますよ」
律子さんはそんなアホの相手はできるだけしたくありませんので、考えるだけで放置しておこうかと思いましたが、ちょうど自分も同じようなことを考えていたので、前向きに対策を考えてみることにします。
とはいえspamが届かないようにするには、どうすればいいのでしょう。メールを受ける間に入ってspamとそうでないものを分ければいいと思うのですが、さすがに自分で作るわけにもいきませんし、ツールに関してはちっとも詳しくありません。博君に聞いてみますが、「いや……、そんなの……、知りませんよ」とちっとも頼りになりません。
こいつ、サーバセンターに左遷させて、毎日手動で迷惑メールの仕分けでもさせてやろうかと思いましたが、そんなこともいってられませんし、そんな権力もありません。
「あっ、そう、ありがとう」律子さんは、そっけなくお礼をいうだけいって、またまた考え込みます。すると、お礼をいったときの顔が相当怖かったのか、律子さんの怒りが伝わったのか博君がおどおどと話し掛けてきます。
博君 「あ、あの、POPFileというのがあるみたいなんですけど……」
律子 「使ったことあるの?」
博君 「いや、インストールしたことがあるんですけど、ちっともspamを仕分けしてくれないからアンインストールしちゃいました」
律子 「そんな使えないもの教えてくれてどうするつもりなの?」
博君 「うまくやれば、使えるみたいなんですけど……」
早速教えてもらってPOPFileを使ってみることにします。
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